All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 341 - Chapter 350

552 Chapters

第341話

神崎玲凰は妹の顔が蒼白になったのを見て、彼女自らあのような言葉を出すのは非常に辛いことなのだとわかった。彼も恋愛経験はある。今の結婚はとても幸せだが、そこに至るまでの過程ではやはり心が傷つき、絶望したこともある。感情というものは厄介なもので、最も人の心を傷つけるものだとよく知っている。しかし、彼はしっかりと状況を見つめなければならなかった。なぜなら、結城理仁は妹を愛することは決してないからだ。妹がこのまま彼に執着し続けたら、結局傷つくのは変わらず彼女であるのだから、それなら今のうちに彼女に諦めさせておいたほうがいいのだ。彼はため息をついて言った。「姫華、兄ちゃんはお前のために結城理仁を調べたくないと思ってるわけじゃないんだ。あいつの周りにいる人間は誰か考えてみろ。九条悟だぞ。九条家は一体何をしている家だ?俺が結城理仁を調査し始めたら、それを真っ先に結城理仁本人に知られることになるんだぞ。あの男が俺に大人しく調査させるとでも思うか?しかも、兄ちゃんの調査員たちはみんな母さんの妹さんを探すので手一杯だぞ」神崎姫華は黙ってしまった。彼女は兄が言っていることは本当のことだとわかっていた。結城理仁の傍にいるあの九条悟は九条家の出身だ。九条家がいかにすごいかは星城に暮らす人は誰でも知っている。「姫華、この世にイイ男なんてごまんといるんだ。結城理仁のことは忘れろ、な」神崎姫華は下を向いて何も言わなかった。そしてすぐ彼女の涙が一滴、また一滴と床を濡らしていった。彼女は辛かった。とても辛かったのだ。誰かを愛し、その人と一緒になるのに、どうしてこんなに難しいのだ?神崎玲凰は黙って妹の肩を抱きしめた。「兄さん」神崎姫華は兄の肩に寄りかかって泣きながら言った。「理仁はどうして私のことを好きになってくれないの?私の何が足りないの?彼って、私のことをすっごくわがままな女だって思ってるのかな?私のどこが気に入らないのか教えてくれたら、私は頑張って自分を変えるのに。だけど彼はその機会すら私にくれないわ。私ってそんなに彼に嫌われているのかな?」神崎玲凰は心をぎゅっと締め付けられて言った。「姫華、誰かを嫌いなのに理由なんかないんだよ。嫌いなのは嫌いなんだ。決してお前に何かが足りてないとかそういうんじゃないんだ。俺達は誰からも愛される『金』
Read more

第342話

しかし、まるまる十分間どうするか迷った後、彼はようやく車のドアを開けて外に出て、その花屋へと入って行った。「いらっしゃいませ、何かお探しでしょうか。彼女さんへのプレゼントですか?」結城理仁は花屋の中をぐるりと見渡した後、店長に言った。「妻への贈り物です」店長は笑って言った。「奥様のお誕生日でしょうか?それとも、結婚記念日ですか?」「違います。ただプレゼントしたくて」店長は笑顔のまま言った。「では、バラの花束などいかかでしょうか?それにカスミソウも加えますか?」人生において一度も女性に花束を贈ったことのない結城理仁は店長の意見に間違いないと思い、頷いた。「お任せします」「少々お待ちください」店長はこの男性がはじめて妻へ花束を贈るのだとわかった。少しの時間で、花屋の店長は花束を結城理仁に手渡した。理仁はそれを受け取り、支払いを済ませると、その花束を抱えて店を出て行った。彼はその花束を助手席に置いて、車を運転している間、数分おきにその花束をちらりちらりと見ていた。それと同時にどんな理由をつけてこの花束を内海唯花の前で渡せばいいのか考えていた。そしてすぐ、星城高校の前にある店に到着した。彼は早めに仕事を切り上げて来たから、お昼にはまだ早かった。内海唯花の店には客がたくさん入っていた。結城理仁は花束を抱えて車を降りたが、店にはまだ客がたくさんいたので、その花束を急いで車の中に戻した。そして、何事もなかったかのように本屋に入っていった。本屋の客は、厳格な教頭先生のような人物が入ってきたのを見て、話す声が自然と柔らかくなり、本を買うかどうか迷っていた人は彼を見るとすぐに決断し、気に入った本を手に取ると急いで会計に向かった。結城理仁がこの時間帯に店に現れることは滅多になかった。しかし、彼が以前ここへやって来た時、お客に与える印象がとても強かったので、今買い物に来ている人は彼を見てすぐに逃げ出したくなる。「おいたん」お客は結城理仁を怖がっていたが、佐々木陽は全く彼を怖がらなかった。彼はもともと叔母の後ろをついて行こうとしていたのだが、結城理仁を見るとすぐに叔母の後ろには続かず、嬉しそうに理仁のほうへ向かって来た。まだ理仁の目の前まで走り寄っていないのに、先に両手を広げて抱っこをおねだりする姿勢を見せていた。「
Read more

第343話

結城理仁は少しも面倒がってはいなかった。佐々木陽が理仁に何かを指示したら、彼の言う通りにし、更には彼に新しい遊び方まで教えてくれていた。内海唯花は思わず、彼が将来子供ができたら、絶対に責任感のある父親になるだろうと考えていた。「どうしたの?」牧野明凛は親友がある箇所を見つめているのに気づき、やって来て同じ方向に目をやった。そして、親友が結城理仁を見つめているのに気がつくと、彼女は瞬時に曖昧な笑みを浮かべ、内海唯花の肩をぽんぽんと叩いた。「もしかして、お宅の結城さんがめっちゃカッコイイとか思ってる?」「考えるまでもなく、彼は最初からずっとイケメンよ」「さっさと彼を押し倒しちゃいなさいよ。彼って陽ちゃんにすごくよくしてくれてるよね。辛抱強いしさ。こういう男性って見た目では氷のように冷たいけど、実際中身はとっても優しいのよね。彼って絶対子供好きな男性よ。彼を押し倒してさっさと事を済ませたら、彼に似た子供が産めるのよ。めっちゃ最高じゃん」内海唯花は失笑した。「まるでそんなことするのは子供を産むためみたいじゃないの」少し黙ってから、彼女は小声で言った。「彼のあの氷のように冷たくて難しそうな顔を前にして、押し倒しても、服を脱がせる勇気すら失うわ」結城理仁のような性格の男性をからかうのは至難の業だ。からかいすぎたとしても、一番良くて彼からキスをされる程度だ。牧野明凛はぷっと笑い出し、すぐに口元を押さえて笑いながら小声で言った。「結城さんは生まれつきあんな冷たい顔をしてるものね。だったらさ、彼をでれんでれんに酔わせちゃえばいいんじゃないの」内海唯花は彼を酔わせたその続きのシーンを想像し、我に返って正直に言った。「彼の部屋は立ち入り禁止なの。もういいわ。夢なんか見ずに一日一日過ごしていくだけよ」そう言うと、彼女は結城理仁と佐々木陽の方へ近づいて行った。「おばたん」楽しそうに遊んでいた佐々木陽は顔を上げて内海唯花を呼んだ。内海唯花は手を伸ばして甥っ子の頭を撫でてから結城理仁に話しかけた。「結城さん、もう少しの間だけ陽ちゃんと遊んでてもらえるかな、私ご飯を作りに行ってくるから」結城理仁は立ち上がった。「どうしてさっき言ってくれなかったの。俺も料理くらい作れるよ」「さっきは思いつかなかったの。次来た時は私が忙しかったら、遠
Read more

第344話

「お姉ちゃん、来ないって。外で食事をするには会社からここまで来るのにちょっと遠くて面倒だからって。昼もそんなに長く休憩時間がないしさ、会社の食堂で食べるんだって」結城理仁は一言うんと短く返事した。「夜、義姉さんが仕事から戻ってきたら、会社でやっていけそうか聞いてみて。誰か彼女をいじめるような人はいないかって。俺は東社長に直接少しくらいなら言えるからさ。もし義姉さんをいじめるような人間がいたら、社長にどうにかしてもらうよ」内海唯花は彼の方をちらりと見た。「お姉ちゃんがあなたのことを大事にしなさいって言うわけね。いっつも私にあなたにはよくするようにって釘を刺されるんだから」結城理仁の整った顔が少し赤くなった。彼は義姉の前ではいつも自分をよく見せようとしていた。時間があまりなかったので、内海唯花は簡単な昼食を作った。それでも結城理仁は美味しそうに食べてくれて、全く嫌そうにしなかった。内海唯花は彼が安い肉と一部の薬味を食べないだけで、実際はそこまで好き嫌いが激しい面倒くさい人じゃないと思っていた。食後、結城理仁はすぐには会社に戻らなかった。内海唯花は食器を洗ってキッチンから出てきて、彼がまだいるのを見ると、携帯を取り出して時間を確認し、彼のほうに向かいながら尋ねた。「結城さん、午後は仕事に行かなくていいの?もう一時過ぎだよ。確か以前は一時くらいになったら急いで会社に戻ってなかったっけ」明凛と甥がいないのを見て、内海唯花はまた尋ねた。「陽ちゃんと、明凛は?」「牧野さんなら、スーパーに買い物に行って来るとか言って陽君を連れて行ってしまったけど」結城理仁は牧野明凛がわざとこの場にいるのを避け、夫婦が二人きりになる時間を作ってくれたのだと思った。どうやら牧野明凛は金城琉生と内海唯花の仲を取り持とうとする気は全くないようだ。結城理仁は牧野明凛に対する見方がとても良くなっていた。「そうなの」内海唯花はレジのほうへ行った。「内海さん」結城理仁は迷って口を開いた。内海唯花が彼のほうに目を向けた時、彼が言いたい言葉がまた喉につっかかってしまい、どうしても出てこなかった。彼が続きの言葉を吐き出さないので、内海唯花は彼を気にかけて尋ねた。「結城さん、何か困ったことでもあった?なんだか迷ってるみたいだし、何かあるなら言
Read more

第345話

結城理仁は黙ったまま暫くの間内海唯花を見つめ、本当に何も言わずに後ろを向いて去っていった。内海唯花は口を開けて、彼を呼び止めようとしたが、それを止めてしまった。彼が話したくないなら、たとえ彼のその口をこじ開けたとしても、絶対に何も言わないだろう。「何か言おうとして止めてしまうのが一番嫌いなのよね。はっきりと口にできないのかしら?」内海唯花は結城理仁の煮え切らない様子に愚痴をこぼした。人というものはみんな好奇心を持っている。彼のあの言おうとして止めてしまうその態度のせいで、彼女の好奇心が更に増してしまった。彼は一体彼女に何を言いたかったのか気になって仕方がない。すると、二分も経たずに、あの言いたいことをはっきりと言えない男が花束を抱えて戻って来た。内海唯花は驚いて彼を見つめた。結城理仁が花束を抱えてやって来るなんて信じられなかった。彼女は目をこすってもう一度彼のほうを見た。確かに彼女の夫である結城理仁だ。彼はつまりこの花を彼女に贈るつもりなのか?なぜだか急に内海唯花の鼓動が速くなり、全身が突然こわばった。なんと、彼女が緊張している!彼はその花束を直接彼女に手渡すことはせず、両手に抱えられたその花束はレジの上に置かれた。そして彼女は重たい口の男のセリフを聞いた。「ここへ来る途中の花屋にきれいな花があったから、君にこれを買ってきたんだ。別に何か意味があったわけじゃない」そう言い終わると、彼は彼女の反応を待たずにガチガチにこわばった身体の向きを変え、大きな一歩を踏み出し、歩いて行った。彼のその一連の動作はあっという間だった。それはまるで、数秒でもそこに長く留まってしまうと、彼女が花束を持って彼を殴りにかかるとでも言わんばかりだった。「結城さん」内海唯花は我に返ると、瞬時に外に飛び出して彼を呼んだ。そして、彼女は結城理仁がまるで鬼に追いかけられているかのように、急いで車に乗り込み、急いでエンジンをかけて瞬く間に遠ざかって行くのを見ていた。内海唯花「……」少ししてから、彼女は感心して言った。「あの動き、まさに電光石火。彼には敵わないわ」さっきの様子を思い出し、彼女はまたおかしくなった。そして、笑いを抑えられず、はははと大きく笑った。結城理仁という人物は、たまに本当に面白くなる。彼女は存分に笑
Read more

第346話

「旦那からもらったのよ、綺麗でしょ?私はすごく綺麗だと思うの、気に入っちゃった」内海唯花はその花束の写真をたくさん撮った後、携帯を置いて花束を抱き上げ鼻を近づけ匂いを嗅いでみた。「すっごくいい香り!」このシーンは金城琉生の目にはかなりの衝撃だった。「唯花さんの旦那さんからだったんですね。今日って何かの記念日ですか?今まで旦那さんが唯花さんに花を贈ったところなんて見たことがありませんから」金城琉生の笑顔はすこしこわばっていて、その口調にも少し嫉妬の色がうかがえた。それに少し皮肉っぽさがあった。内海唯花は顔を上げて彼を見て言った。「夫婦なんだもの、別に何かの日じゃないと花束を贈っちゃいけないなんてこともないでしょう?私が好きなら、夫は毎日でも花束を贈ってくれるのよ。以前は、私がお金を無駄に使うのを気にしていたからね。花束って安いものでもないし、食べられもしないし。私が花束をくれるくらいならそのお金でお肉を食べさせてくれたほうがいいって言ってたから、彼も花束をプレゼントすることはなかったのよ」金城琉生「……それもそうですよね」「琉生君、何か明凛に用事でもあるの?電話してみたらどう?たぶんもうすぐ帰ってくるとは思うんだけど」「いえ、なんでもないんです。ただ通りがかりにここにちょっと会いに来ただけですから。唯花さん、俺会社に戻りますね」「わかったわ」内海唯花はそう一言答えると、すぐにまた結城理仁が彼女にプレゼントしてくれた花束を満喫した。金城琉生は彼女の意識が花束に注がれているのを見て、とても胸が苦しくなった。しかし、それ以上は何も言い出せず、後ろを向いて店を出ていった。この間、内海唯花にビジネスパーティーに一緒に参加してほしいとお願いして、それを断られてからというもの、内海唯花は彼に対して冷たい態度を取るようになっていた。内海唯花はいつも彼に対して無意識に彼女は旦那のいる人妻なのだと強調していた。内海唯花とその夫はスピード結婚したのではなかったのか?従姉の明凛も内海唯花は姉である唯月を安心させたいがためにこのようなことをしたのだと言っていた。二人は半年の契約を交わしていて、その契約期間が過ぎれば離婚するのだとも。まさか、内海唯花はスピード結婚した夫のことを愛してしまったのか?金城琉生はかなり落ち込んでいた。「琉
Read more

第347話

「彼が何の意味もないって言うのを信じるつもり?唯花、今きっとお互いに気持ちがあるのよ。このチャンスをしっかり掴まなくちゃ。私あなた達の本当の結婚式に参加してブライズメイドをしてあげるからね」牧野明凛は親友をからかって言った。「そう考えるにはちょっと早すぎると思うけど」「私はそんなことないと思ってるけどね、ははは。唯花、琉生を呼び止めてあるの。あの子と一緒にコーヒーを飲んでくるわ。あなた、何が飲みたい?帰って来る時にテイクアウトしてくるわ」内海唯花は少し考えてから言った。「キャラメルラテでいいわ」「わかった」牧野明凛はこころよくそれに応えた。「店番頼んだわよ。私コーヒー飲んでくるね」「いってらっしゃい」どのみち今は店にお客は少ない。普段、この時間帯には彼女はレジの奥で休憩しているか、ハンドメイドを作っているのだ。牧野明凛は出かけて行った。金城琉生は外で待っていた。牧野明凛は店から出てくる時、笑顔を消して真面目な顔つきになった。「行きましょ」彼女は直接金城琉生の車に乗った。金城琉生は従姉の表情が厳しくなったのを見て、なぜだか心細さを感じていた。ちょうどこれと同時刻の結城グループにて。結城理仁は気分上々でエレベーターに入って行った。アシスタントの木村がある封筒を持ってやって来た。「社長、この手紙なんですが、九条さんが必ず社長に直接渡すようにと言付かってきたものです。なんでも社長の奥様に関係があるとかで」会社の中で社長が結婚していると知っているのは、数人程度しかいない。木村はラッキーなことにその中の一人だ。結城理仁はその封筒を受け取り、何も言わず、直接彼の社長オフィスへと入って行った。黒の社長椅子に座り、結城理仁はその封筒を開けて、中から一枚の手紙を取り出した。それを開いて見てみると、それは匿名の者からで、内容は非常に簡潔だった。彼に神崎姫華がしつこく彼に付き纏っているのは、裏で内海唯花が手を引いているからだというものだ。結城理仁はすぐに九条悟に電話をかけた。人の噂話が大好物である九条悟は上司からの電話をまだかまだかと待っていたのだった。「これは誰が書いた手紙だ?」九条悟が内海唯花と関係あるものだと言っていたのだから、彼は絶対にこの手紙を誰が書いたのか知っているはずだ。「
Read more

第348話

彼は内海家のクズな人間達を乞食にさせようとしても難しいと言っていた。九条悟は笑って言った。「一度に決着付けちゃったらさ、面白いもんが見られなくなるじゃんか」結城理仁の顔が暗くなった。「こういう人間にはさ、焦らずゆっくりじわじわと迫っていかないとダメなんだよ。すこーしずつ彼らが持っているものの全て奪っていくんだ。どうにかしてそれを取り戻そうと足掻くのに、それが消えていくのを指をくわえて見ているだけしかできないあの苦しみを与えてこそ、ああいう奴らにでかいダメージを与えられるんだから」九条悟は自分が確かに手を緩めていると認めていた。あの内海家のクズどもをすぐには地獄に叩き落さなかったのだ。「だけど、安心してくれよボス。最終的には君の満足いく結果になるだろうからさ。今や内海智文はすでに会社から解雇されている。あの時ネットで大炎上してたからな、あいつのビジネス界での評判はだだ下がりなんだ。これから良い仕事を見つけようったってなかなか簡単にはいかないぞ」内海智文が完全に職を失ったと聞いて、結城理仁の顔はようやく少し和らいだ。「この件に関しては、神崎さんに感謝しないといけないぞ。神崎さんが彼女の兄さんに頼んで内海智文をクビにさせたんだから。神崎さんが君の奥さんのために色々やってくれてると言わざるを得ないだろう」結城理仁は冷たく二度鼻を鳴らした。内海唯花は事情が複雑であることなどまったく知らない。神崎姫華に彼を落とすテクニックを教えているのだから、彼女が唯花に良くしてくれているのは当然のことだ。内海唯花はそれを聞けば、神崎さんが追いかけているのは結城家のあの御曹司であって、あなたではないでしょ?と言うことだろう。結城理仁「……」神崎姫華が彼こそ内海唯花の夫であることを知っても、彼女が内海唯花に依然として良くしてくれて、守ってくれるのであれば、彼は神崎姫華が本当に唯花を友達だと思っていると信じるだろう。結城理仁はあのゴールドの指輪をまた取り出し、左手の薬指にはめた。内海唯花の店に行った時は、彼はその指輪を外していたのだ。「あ、そうだった。内海智文の野郎、俺ら結城グループに入ろうとしているらしく、うちの面接官に連絡してきたみたいだぞ。彼はアーロン基板株式会社で長年働いていて、平社員から管理職になり、仕事の経験が豊富であ
Read more

第349話

カフェにて。牧野明凛は店の目立たないところの席を選んで座った。金城琉生は彼女の向かいに座っている。「琉生、あなた何飲む?」「なんでもいいよ。明凛姉さんが頼むのと同じのでいいから」牧野明凛は店員に言った。「ブラックコーヒーを二つください」「明凛姉さん、ブラックは美味しくないよ」牧野明凛が横目で彼を睨むと、金城琉生は身を縮こませて言った。「やっぱブラックでもいい」二人が頼んだブラックコーヒーが来てから、牧野明凛はストレートに尋ねた。「琉生、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、あんたってもしかして唯花のこと好きなの?」金城琉生は驚いた。彼は驚いた眼で牧野明凛を見つめた。「明凛姉さん……」「正直に答えなさい!」牧野明凛は命令口調で言った。金城琉生の顔はだんだん赤く染まっていった。バレてしまったのか?「姉さん、お……俺、俺は唯花さんのことが好きです」「いつからなの?」金城琉生は小声で答えた。「いつからだったかは、はっきりわからないよ。たぶん14、5歳の恋愛に興味を持ち始めた頃じゃないかな。もしかしたら17、8歳くらいだったかもしれないけど」牧野明凛の顔色は暗くなった。「唯花にそんなに長く片思いしているのね」長い間よく隠してきたものだ。彼女と内海唯花はこのことを全く知らなった。彼女たちは金城琉生のことを完全に弟としてしか見ていなかったからだ。実際、金城琉生は彼女たちよりも三歳年下であるから、弟でしかない。金城琉生の顔は真っ赤になっていた。「琉生、諦めなさい。唯花はあんたを好きになることはないわ。彼女はずっとあんたを弟として見ているのよ。それに以前、彼女がまだ独身だった頃ならまだしも、今は結婚しているのよ……」「明凛姉さん、この間唯花さんと旦那さんは契約結婚だって言ってたじゃない?半年後に離婚する予定なんだって」牧野明凛は冷ややかな顔つきで言った。「彼らがどんな結婚なのかなんてあんたに関係ないのよ。唯花はもう既婚者なの。人妻なのよ。あんた、他人の妻に幻想を抱いて、浮気相手にでもなろうっての?」金城琉生は不機嫌そうに言った。「俺の方が先に唯花さんと知り合ったんだ」「愛ってのは別に先に知り合ったほうが有利だなんてもんでもないでしょ。この間唯花があんたにご馳走した時、あんたが好き
Read more

第350話

「私があんたの従姉だから、わざわざここまで来て直接あんたに話してるんでしょうが。唯花があんたを好きじゃなくて、もし好きだったとしても、私はあんた達二人が一緒になるのは反対よ」「なんで?」「だって、あんたの家よ。あんたの母親はどんな人?私はよくわかってるんだからね。おばさんがもしあんたが唯花を好きだって知ったら、彼女が喜んで唯花を受け入れるとでも思ってんの?彼女は絶対にどんな手を使ってでも、あんた達が接近するのを邪魔するはずよ。それに唯花に極端な行動に出る可能性だってあるわ。おばさんは上流社会という世界に二十数年間住んでいるのよ。かなり前から目を肥やしてるわ。あんたは彼女のたった一人の息子で、彼女の希望だし、金城家の後継者よ。彼女のあなたに対する期待は相当なものに決まってるでしょう。あなたには絶対に名門のどこかのお嬢様と結婚させたいと思ってるはず。唯花はとっても優秀な女性よ。だけど、彼女の出身を考えるとそれが大きな足枷になってあんたの相手としては考えられないのよ。おばさんは私のことを考慮してくれて、唯花のことを自分の姪っ子のように喜んで可愛がってくれているけど、あんたのこととなると話は別。手のひらを返したかのように唯花に冷たくなるわ。だから、おばさんの目には唯花はあんたのお嫁さん候補に映っていないのよ」牧野明凛のこの話は急所をずばりと言い当てていて、情け一つなかった。「琉生、あんたの唯花に対する気持ちは、彼女に幸せじゃなく、ただ災いをもたらすだけよ。私はあんたの従姉のお姉さんだから、愛のために傷ついてほしくないの。私は唯花の親友だから、私の家族のせいで彼女に傷ついてほしくないのよ。琉生、諦めて。唯花はあんたには合わないの。彼女だって絶対にあんたを好きになることはないんだから。あんた達が知り合って十数年、彼女は私と一緒にあんたが大きくなるのを見守ってきたわ。彼女がもしあんたを好きになるんだったら、十数年のこの時間でどうして心を動かさなかったの?十数年もの時間、彼女はずっとあんたを弟としてしか見てこなかった。お姉さんが自分の弟に恋愛感情を抱くようなことはないでしょ。ここで諦めず、このまま唯花を好きでい続けたら、苦しむのはあんた自身なのよ」金城琉生の顔色が更に青ざめていった。彼は唯花のことが好きで、自分の母親も唯花をとても気に入ってい
Read more
PREV
1
...
3334353637
...
56
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status