All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 321 - Chapter 330

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第321話

佐々木英子は声をさらに抑えて言った。「ちょっとお金使って何か彼女にプレゼントを買ってさ、ご機嫌取りをすればすぐに解決するわよ。どう言ったって、彼女は陽君の母親よ。その陽君のこともあるし、あんたの甥と姪の世話が必要なんだってことも考慮して、あんたから先に頭下げて、あいつをなだめるのよ。大の男は臨機応変な対応をしていかないと」佐々木母もやって来て娘の話に続いて小声で息子を説得した。「俊介、陽ちゃんのためにもあんた達二人は一緒に暮らしていったほうがいいわ。お姉ちゃんの言うことを聞いて、唯月に何か買ってやって、機嫌でも取ってきなさいよ。以前彼女があんたのことをしっかり世話してくれていたでしょ。それなのに今あんたはどう変わったかしっかり考えてみなさい。ちょっとくらい頭を下げたって、損ないでしょ」佐々木母は今日息子の家に来てみて、息子が一家の大黒柱としての威厳で嫁を制御できないことにとても心を痛めていた。しかし、こうなってしまったのも彼女と娘が俊介を唆した結果なのだ。もし彼女たち二人が息子に唯月と割り勘制にしたほうが良いと唆したりしなければ、唯月だって彼らと本気になって細かいところまでケチになったりしなかったのだ。「それか、お母さんとお父さんが一緒にここに住んで、子供の送り迎えをしてあげようか?」佐々木母は「陽ちゃんが幼稚園に上がったら、私も英子の子供たちと一緒に送り迎えできるし、唯月は仕事に行けばいいじゃない」と言った。佐々木英子は口を尖らせて言った。「あいつがどんな仕事するっての?陽君が幼稚園に上がったら、第二子を産むべきよ。佐々木家には男が少ないんだからさ。私には弟の俊介しかいなくて、もう一人多く弟が欲しくたってそれも叶わないんだから。今陽君には弟も妹もいないのよ。今国の出生率も落ちてるし、俊介、あんた達も二人目を考えないとだめよ。早めに唯月と二人目産みなさい。今ちょうどいいわ、来年には陽君は幼稚園に上がるから、次を産むのにはタイミングが良いのよ」佐々木英子は唯月に仕事をさせたくなかった。あの女は結婚する前はなかなか能力があった。もし唯月が仕事に復帰したら、すぐに結婚前のあの自信を取り戻し、高給取りとなり勢いに乗るはずだ。そんなことになれば、彼らは彼女をコントロールすることなどできなくなってしまう。だから佐々木唯月に二人
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第322話

俊介は母親に言った。「母さん、姉さんと一緒にショッピングして来なよ。何か好きな物があったら買えばいい」そう言うと、彼は携帯を取り出してペイペイを開き母親にショッピング用に十万円送金した。「わかったわ、後でお姉ちゃんと買い物に行って新しい服でも買って来る。あなたは早く仕事に戻って、仕事が終わったら早めに帰ってくるのよ」佐々木母は息子を玄関まで行って見送り、仕事が終わったら唯月にプレゼントを買うのを忘れないように目配せした。佐々木唯月はベビーカーを押してきて、息子を抱きかかえてその上に乗せ、淡々と言った。「私は陽を連れて散歩してきます」「いってらっしゃい」佐々木母は慈愛に満ちた笑顔を見せた。佐々木唯月はその時、瞬時に警戒心を持った。義母がこのような様子の時は絶対に彼女をはめようとしているのだ。はっきり言うと、義母と義姉が何か彼女に迷惑をかけようとしているのだろう。彼女たちがどんな要求をしてこようとも、唯月は絶対にそれに応えることはしない。そう考えながら、佐々木唯月はそれ以上彼女たちに構うのも面倒で、ベビーカーを押して出て行った。一方、内海唯花のほうは夜の店の忙しさが終わり、夕食を済ませていた。牧野明凛は先に家に帰っていて、彼女はハンドメイドの商品をきれいに包み、宅急便に電話をかけて荷物の回収をしてもらおうとしているところだった。今日発送ができるハンドメイド商品をお客に送った後、内海唯花は十一時になる前に店を閉めた。結城理仁がこの日の昼、佐々木俊介の不倫の証拠を持って来てくれた。また姉妹を助けてくれたから、内海唯花は理仁にお礼をしようと思い、理仁にまた新しい服を二着買いに行こうと決めたのだ。今度は彼にブランドのスーツを二着買おうと決めた。彼はカッコイイから、ブランドの良いスーツを着ればそのカッコよさに更に磨きがかかるだろう。夫がカッコイイと皆に褒められると、妻である彼女も鼻が高い。内海唯花は店を閉めた後、車を運転して行った。某ブランド服の店に着いた後、内海唯花は駐車場に車をとめ、携帯を片手に結城理仁にLINEをしながら車を降りた。結城理仁はこの時、まだスカイロイヤルホテルで顧客と食事をしながら商談をしていた。内海唯花からLINEが来ても彼の表情は変わらなかった。細かく見てみると、彼がLINEを見た後、
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第323話

結城麗華も後ろを振り返り、彼女たちとは反対方向に進んでいく内海唯花を見た。「あの子が私たちに微笑んでた?知らない子よ」「じゃあ、私の勘違いね。てっきり彼女が私たちに笑いかけてるものだと思ったのよ」結城麗華の友人も多くは考えなかった。彼女はまた後ろを向いてちらちら見た。内海唯花がすでに遠くに行ってしまったのを見ると笑って言った。「私ったら、本当に勘違いしたのね。あのお嬢さんとっても綺麗な子だったわ。気品もあるし、ちょっと見ただけでも、どこかの家のご令嬢かと思うくらいよ。あなたのお知り合いだと思ったわ」友人は結城麗華をからかって言った。「私たち星城の名家の娘だったら、あなたを見かけたらすぐに微笑みかけるでしょ」結城麗華には三人の息子がいる。一番有名なのはもちろん長男だ。その長男は結城グループの当主であり、結城家の地位で言えば結城おばあさんを除いて一番重要な位置にいる人間だ。結城家の男たちはまだ若者の二人を除いて、みんな才能のずば抜けた人達だ。一人はまだ高校生で、もう一人は成人したばかりだから結婚は早い。この二人以外の結城家の七人の坊ちゃんは結婚適齢期になっている。結城家なのだ。星城のトップクラスの富豪で、正真正銘の名家だ。だから、この結城家にお嫁に来て「若奥様」という身分を手に入れたい女性がどれほどいるだろうか?それで結城麗華と彼女の二人の相嫁は社交界で最も注目される貴婦人なのだった。結婚適齢期の娘がいる家は必死に結城麗華とその相嫁たち三人とコネを作りご機嫌取りをしていた。彼女たち結城家の親戚になろうと夢を見ているのだ。結城麗華は淡々と笑って言った。「私に笑いかけたって無駄よ。我が結城家は古臭い考え方なんて持っていないもの。子供たちの結婚に関しては私たち年長者はアドバイスはするけど、子供に代わって結婚相手を決めたりなんかしないわ。息子たちが好きになった女性が、品行方正であれば同意するつもりよ」彼女は長男の嫁である内海唯花をあまり気に入っていなかった。しかし、唯花の人柄は良いことを知っていた。長男が内海唯花を妻として迎え入れると決めたからには、母親として唯花のことが嫌いでも息子の前で文句を言ったりはしなかった。さらにこの結婚を強制的に決めた義母である結城おばあさんに対しても不満は持たなかった。彼女は内海唯花の悪口も言わなかっ
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第324話

義母から知り合いではないふりをされても、内海唯花はそれが理解できた。それにあまり気にしなかった。歩いて車を止めているところまで戻り、鍵を開けて助手席に結城理仁に買った服を置くと、彼女は運転してそこを離れていった。少ししてトキワ・フラワーガーデンに帰ってきた。結城理仁はまだ帰ってきておらず、彼女はベランダに行き彼女の小さな花壇をきれいに整えた。バラがたくさん咲いていたので、彼女はハサミを持ってきて何本か切り取り、捨てるのはもったいないのでリビングに持って来ると必要ない枝を切り落とし花瓶に挿した。「プルプルプル……」内海唯花の携帯が鳴った。彼女がその電話に取ると、それは彼女の店のお隣さんからだった。彼女はさっき結城理仁に服を買いにショッピングに出かけ、ペットを連れていくのは不便だったので隣の店に世話をお願いしていたのだ。「高橋さん、私すっかり忘れていました。すみません、今すぐペットを迎えに行きます」内海唯花はもしこの電話がかかってこなかったら、完全にペットのことを忘れていただろう。悪いけど、彼女はかなり忙しかったのだ。それに今日ペットが来たばかりだったから、慣れておらず、犬と猫のことなどすっかり頭になかったのだ。「内海さん、ワンちゃんたちはマンションの入り口まで送って行くよ。下に降りてきてくれればいいから」高橋おじさんは電話で言った。「あなたが暫く経っても迎えに来ないもんだから、たぶん忘れちゃってるんだろうと思ってね。ちょうど私もやることがないし、ワンちゃんたち連れてきたよ」高橋おじさんとはあの占いの本を見て、自分でも運命占いができると思っているあのお隣さんのことだ。彼はいつも内海唯花には金持ちの相が見えていて、最初は苦労するが、後々成功して幸せになれると思い込んでいた。だから将来は彼らと彼女は全く違う世界の人間になると思っている。彼ら夫婦が星城高校の前に小さなお店を始めてから、彼は内海唯花たちと衝突したことは一度もなかった。牧野明凛のことも高橋おじさんの目には高い地位と財産を手に入れる運命の女性に映っていた。もちろん、牧野家という家柄があるのだから、牧野明凛はすでにそうではあるのだが。「高橋さん、すぐに出ますね」内海唯花は高橋おじさんに感謝しながらも、申し訳なく思った。急いでそう言うと、すぐに電話を切
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第325話

高橋おじさんもこう言っているので、内海唯花も「おじさん、お気をつけて」と言うしかなかった。おじさんは三輪のバイクに乗って来ていた。おじさんは笑って内海唯花に手を振り、三輪バイクに跨って去って行った。彼が帰った後、内海唯花は結城理仁に電話をかけた。「どうしたの?」結城理仁の低く落ちついた声が聞こえてきた。「結城さん、もうすぐ仕事終わる?」結城理仁は少し沈黙し、ドキドキしていた。彼女は恋しくなったのか?しかしすぐに結城理仁はそれを否定した。内海唯花が彼を恋しいと思うわけがない。彼は最近、多くのことを考え過ぎだ。「何か用かな?」結城理仁は彼女に直接答えなかった。彼女が彼にいつ仕事が終わるのか聞いてきたその理由を聞いてから答えを出そうと思ったのだ。「その、私急いで外に出ちゃったものだから、鍵を持って出るのを忘れたのよ。玄関のドアはもう閉めちゃって、うちってオートロックにしてるでしょ、だから今家に入れないの。もし残業があるなら、今からタクシーであなたの会社に鍵を取りに行くわ。もうすぐ仕事が終わるなら私玄関の前で待ってる」結城理仁は少し考えてから言った。「今から帰るよ。タクシーで来なくていいから」「わかったわ。家の前で待ってるね」結城理仁は一言うんと返事し、電話を切った。九条悟は結城理仁の話を聞いた後、自分がまた上司の代わりに引き続き顧客とビジネスの提携について話さなければならないとわかった。彼は結城理仁が口を開く前に、物分かり良く言った。「急いで行きな。ここは俺が対処するから」結城理仁は親友の肩をポンポンと叩くと、トイレに行っている顧客が戻って来てから、申し訳なさそうに急用ができたので先に失礼すると顧客に言い、理解をもらってからボディーガードを引き連れてスカイロイヤルホテルを後にした。九条悟は思った。家族から今後結婚の催促をされ、お見合いの場を設けられたら、絶対に行ってみよう。そうすればもしかしたらお見合い相手を気に入り、上司のようにスピード結婚できるかもしれないから。妻ができたら、彼は上司と同じように妻から電話が来るとすぐに仕事を全て放り投げて家に帰り奥さんと一緒にいられるのだ。この世で一番大事なのは妻なのだ!内海唯花はあまり待たずに結城理仁が帰ってきた。「ペットを連れて散歩に行って
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第326話

「あなたへのサプライズよ」結城理仁はその袋を受け取って見た後「また服か?」と言った。彼は服を取り出して見た。今回彼女はとても気前が良く、彼にブランドの服を買ったのだった。「私男の人に何かプレゼントしたことないから、すごく喜ばせることできなくて、こういうささやかなものだけどね。この間あなたにあげた服は高いものじゃないの。ひとセットで二万円ちょっとくらい。今回のはブランドのものを買ったから、ひとセットで二十万以上するものよ。つまりたくさんのお金を身にまとっているようなものよ。これでもサプライズにならない?私、この年になってもこんな高い服はお金がもったいなくて着られないよ」結城理仁は笑った。「君の性格とお財布事情からみれば、こんな高い服を俺に買ってくれるのは、確かにサプライズだな」以前彼にプレゼントした服と比べれば、何倍も良いものだ。うん、確かにサプライズだ。「お姉ちゃんのために佐々木俊介の不倫の証拠を集めてくれてありがとう」「大したことじゃないよ。君のお姉さんは俺のお姉さんと同義だ。自分の姉の手伝いをするんだから、それは当然のことだろう。それなのにわざわざ俺に服を買ってお礼をするなんて水臭いよ」突然彼に服を買ってきたと思ったら、なるほど彼が手伝ってくれたことに対する感謝だったわけだ。彼女は彼にとても気を使っていて、家族として見ていないのだ。彼が彼女を助けたら、彼女はいつもこのような方法でお返しをし、彼に貸しを作ろうとしなかった。そう気づいて、結城理仁は自分が悲しめばいいのか、喜べばいいのかよくわからなかった。結婚したばかりの頃、彼女がこのようにしてきたら、彼は彼女が常識を持っている人だと感じていたことだろう。今は、彼は彼女がかなり他人行儀だと感じてしまう。彼女の世界には彼がいないかのように。でもそれは彼女を責められることではない。一体どこのどいつが彼女に契約させたのだ?「お姉ちゃんがいっつも私にあなたには良くしなさいって言うの。あなたに新しい服を買ったこと、もしお姉ちゃんが次こんなこと言ってきたら、あなたから教えてあげてよね」結城理仁は失笑して言った。「わかったよ。今後君のお姉さんに会ったら、俺から彼女に伝えるよ。俺が着ている服はみんな君が俺にプレゼントしてくれたものだってね。もし君が俺に下着も買っ
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第327話

母と息子が電話を終えると、結城理仁は眉間にしわを寄せて少し考えた後、ベランダのハンモックチェアに腰掛けて子猫を抱いているあの人に尋ねた。「君はもしかして俺が知らないところで母さんに会ったりした?」内海唯花は驚いた。彼女は義母と出会った件を彼には何も話していないのに、どうして知っているのだろう?結城理仁はベランダに出てくると、彼女の目の前に立った。彼の黒光りした瞳が彼女の美しい顔を見つめた。そして「今日もしかして母さんに会ったんじゃないか?」ともう一度真剣に尋ねた。内海唯花は彼が携帯を持っていたので、義母が彼に電話をしてきたのだと思い、彼に白状するかのように急いで説明した。「あなたに服を買いに行った時に偶然あなたのお母様を見かけたの。挨拶しようと思ったんだけど、お母様は私だと気づかなかったみたいで、ご友人の方と笑いながらおしゃべりして行ってしまったのよ。だから挨拶をしに行かなかったの」結城理仁はとても頭が切れる人だ。それに自分の母親である。彼は祖父母に育てられたとはいえ、両親と疎遠になっていたわけでもなく、両親との関係も非常に良かったのだ。だから、自分の母親がどんな人間なのか、とてもわかっていた。彼女の母親は内海唯花が息子の嫁であると誰かに知られたくなかったのだ。まず、社交界で彼が結婚したことを彼のために隠している。次に、母親は内海唯花に少し不満を抱いている。内海唯花自体を嫌っているわけではなく、彼女の出身を気にしているのだ。つまり唯花と息子とでは住む世界が完全に違うと思っているわけだ。母親は彼を可哀そうに思っていた。おばあさんには九人の孫がいるが、おばあさんの恩返しのために内海唯花と結婚することになったのは彼だったから。少し黙ってから、結城理仁は言った。「母さんは少し近視なんだよ。だけど眼鏡をかけるのは好きじゃなくて、外で知り合いに会ったとしても、とても仲の良い人じゃなければ、人違いするかと思って声かける勇気がないんだよ。それで知らない人のふりをして去って行くんだ。内海唯花はハッとして「そういうことだったのね。だから私がお母様を見た時、あちらも私を見ていたのにすぐに知らないふりした様子だったんだ。だから私も挨拶しにくくってさ。気まずいじゃない?」「次母さんが出かける時には眼鏡をかけるように言っておくよ。今夜みたいなこと
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第328話

夫婦二人はどちらもこの前の冷戦状態のことは話さなかった。そして、こうやって静かに仲直りすることになった。内海唯花は本来冷戦状態のまま半年が終ってもいいと考えていたが、彼が彼女を気にかけてくれるのでまた彼に対して心が動いた。あの半年の契約を取り消しにしてほしいくらいに。しかし、それが自分の一方通行の気持ちで、最終的に彼女は彼を愛しても、彼の方が彼女を愛してくれないかもしれない。そして半年の契約期間が過ぎて、二人が離婚したら彼は何もなかったかのように平気な様子で新しい生活を始めるだろう。そうなると彼女のほうは彼を失った苦しみを抱え、彼を忘れるまでにかなりの時間がかかるはずだ。誰かを愛するのは簡単なこと。愛した人を忘れるのは難しいこと。「安心して、私とお姉ちゃんでは解決できないことはきっとあなたに手伝ってもらうから」彼がこころよくそう言ってくれるので、彼女が直接断ると気まずくなるから、そう返事した。「お姉ちゃんが家に帰った後、私電話かけたの。今のところ大丈夫みたいだったわ。お姉ちゃんは我慢強いから、まだそうするべきじゃないと思ったら衝動的に行動したりしないの。今はお姉ちゃんが衝動に駆られて思い切った行動をしてしまえばとても不利になっちゃうし」陽のために彼女の姉は俳優の卵から、あっという間にハリウッド女優並みに演じられるようになったのだ。ガラスの仮面の主人公のように完璧にその役を演じ、佐々木家の人たちは全く彼女が裏で何をしようとしているのか気づいていなかった。「お姉ちゃんの義母と義姉がまた来たの。なんで来たのかその目的はわからないんだ。明日陽ちゃんを迎えに行った時に、お姉ちゃんに聞いてみる」佐々木唯月は明日から東グループで働き始めるので、佐々木陽は内海唯花がお店で面倒を見ることになるのだ。内海唯花は甥が生まれてからというもの、ずっとお世話をしてきた。そのおかげで、叔母と甥っ子の仲は非常に良く、唯花と一緒にいても泣きわめくことも母親を恋しがることもなかった。「ベビーシッターを雇って君の代わりに陽君を見てもらおうか?陽君は何にでも興味があって動き回る年頃だろう。君たちは忙しい時があるし、もし注意していなくて彼が店から出て行ってしまうようなことがあれば、どうなるかは想像したくないだろ」結城理仁は非常に気が利く人だ。内海唯花は
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第329話

内海唯花は立ち止まった。結城理仁もそれに合わせて立ち止り、静かに彼女を見つめ、優しく尋ねた。「どうしたの?」「ベビーシッターのお金は私が出すわ。陽ちゃんのお世話のために雇うんだもの、陽ちゃんは私の甥っ子でしょ、私がお金を出して当然よ。あなたに出してもらう義理はないわ」今ベビーシッターを雇うのもお金が結構かかる。家にかかる出費は全部彼が出してくれているのだ。だから内海唯花は彼から甘い汁を吸い過ぎていると感じていた。結城理仁は耐えきれず、手を伸ばして彼女のほっぺたをつねって言った。「君はいつも細かいところを気にして、はっきりと分けて考えるよな。俺達は今家族だろう、家族なのにそんなに細かく気にしてどうするんだ?君と結婚手続きをしたあの日、君に言ったよね、結婚するからには君を養うつもりだって」「陽君も俺を『伯父さん』って呼んでるじゃないか。俺もあの子がとても好きなんだ。あの子の世話をするためになら、喜んでベビーシッター代を出すよ」少し話を途切らせてから、結城理仁は小声で付け加えた。「一番は、俺が妻である君を疲れさせたくないだけだ」「なんて?」「だから、お金は、俺が出すよ」結城理仁はどうしても譲らなかった。内海唯花は口では彼に敵わず、少し考えてから言った。「わかった、このお金はあなたに出してもらう。結城さん、今週末って何か予定ある?」「何か用事?」内海唯花は犬のリードを引きながら、前に歩きながら話した。「私たちが結婚してから結構時間も経ったし、あなたの実家にはまだ行ったことがないじゃない?だから、週末時間があるなら、あなたの実家に連れて行ってもらえないかなぁって」彼の家族たちは家に来たことがあるが、彼の嫁である唯花はまだ正式に彼の実家に行ったことがない。今でも彼の実家が一体どこにあるのかわからないのだ。「あと半月も経たずにばあちゃんの誕生日が来るんだ。その日、うちの家族がみんな揃うから君を実家に連れて行くよ。一度で俺の家族、親戚、友人たちにも会えてちょうど良いと思うよ」「おばあちゃんは傘寿のお祝い?」「いや、違うよ。ただ特に仲の良い親戚たちが集まって一緒に食事するだけだ」もし傘寿のお祝いであれば、彼ら結城家はおばあさんの誕生日パーティーを開く。星城の上流階級たち名家を招いた盛大なパーティだ。それで
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第330話

佐々木俊介はドアノブを捻って開けようとしたが、ドアは開かなかった。佐々木唯月が内鍵をかけているのだろう。彼はドアをノックした。「唯月、開けてくれ」佐々木唯月はドアのところまで来たが、その場に立って彼を部屋に入れようとせず尋ねた。「何か用?」「唯月、ちょっと相談したいことがあるから、部屋に入れてくれないか」ここは本来夫婦二人の主寝室なのだが、今は佐々木唯月が占拠している。佐々木俊介は良い気がしなかった。しかし、唯月に頼んで姉の子供の世話をしてもらうために機嫌を取らねばならず、俊介は我慢して怒らなかった。「明日じゃだめなの?もう遅いじゃない」「まだ十一時だろ。俺は普段会食があればこれくらいにやっと帰って来られるんだ」佐々木唯月は佐々木俊介が義母と義姉に関係のある相談をしようとしていると考えた。彼女も知りたいと思い、体を部屋のドアから離して「言い終わったら、自分の部屋に戻って寝てよ」と言った。佐々木俊介は心の中で悪態をついた。あの夜は酒を飲んでいたから、我慢できずにあんなことしたんだ……。この俺がお前に触りたいと思ってるとでも?しかし表向きには「ちょっと待ってて、取って来るものがあるから」と言った。そう言うと、彼は後ろを向き、急いで彼が今寝ている部屋に戻り、小さなプレゼントボックスを手に取った。それは彼が仕事終わりにわざわざ佐々木唯月に買いに行ったパールのネックレスだった。高価なものではなく、数千円の淡水パールだ。彼はすぐにその箱を持って主寝室に入った。佐々木唯月は部屋にある二人用ソファに腰掛けて彼を待っていた。佐々木俊介は部屋に入った後、まず息子を見た。息子がぐっすりと寝ているのを見て、気持ちが和らぎ、腰をかがめて息子の小さな顔にキスをして顔を撫でた。そして、また体を起こして振り返り唯月の隣に座った。「ハニー」「名前で呼んで」佐々木唯月は淡々と彼の自分に対する呼び方を訂正した。彼からそんな呼び方をされると気持ち悪かったのだ。佐々木俊介は恥ずかしくなってはにかみ、あのプレゼントの箱を佐々木唯月に渡して言った。「唯月、お前に謝るよ。この間は俺が殴って悪かった。何があってもお前に手をあげるべきじゃなかった。俺の間違いだって認めるから、許してもらえないか?これ、お前のために買ってきたんだ。開けて見て
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