交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています のすべてのチャプター: チャプター 291 - チャプター 300

314 チャプター

第291話

佐々木唯月はそれを聞いて感激して言った。「唯花、結城さんって良い人ね。あなたの目は確かだわ。毎回私たちが困った時、彼はいつもあなたの傍にいて、離れず諦めないよね。お金や労力も惜しまないし。彼と仲良く過ごしていくのよ」内海唯花は「お姉ちゃん、わかったわ」と言った。彼女がもし結城理仁とは半年という期限付きの結婚で、ただ法律上の夫婦であるだけなのだと姉に教えたら、きっと悲しむだろう。このことは、今は姉には教えないでおこう。「唯花、お姉ちゃんの結婚生活を見て結城さんも俊介と同じようになるだなんて思わないでね。彼は口数は少ないけど、誠実な人だと思うわ」「お姉ちゃん、そんなふうに考えないから安心して」佐々木唯月は自分のこの結婚生活が妹の心理や結婚に影響しないか心配していた。佐々木唯月の目には、結城理仁はとても良い男性として映っていた。妹にも本当に良くしてくれている。でも、これからどうなるのかもしっかり見ておかなければならない。以前、佐々木俊介も彼女に同じように良くしてくれていただろう?結城理仁は自分のオフィスに着くと、アシスタントを通して九条悟に来るように連絡しようと思っていたが、ちょうどその九条悟がドアをノックして入ってきた。「社長、これが君が欲しがってた証拠だ」九条悟は彼のもとへやって来ると、大きな封筒を結城理仁の目の前に置いて、そこに座り言った。「証拠は全てこの中に入っているよ。佐々木俊介の浮気相手は彼の秘書である成瀬莉奈という女だ」結城理仁はその大きな封筒を持ち上げ、中に入っている証拠を取り出した。成瀬莉奈はまだ佐々木俊介をじらし続けていて、二人はまだホテルで一夜を過ごしたことはない。全て一緒にショッピングしたり、食事をしたりしている写真ばかりだ。あとは抱き合っている写真だ。それから、成瀬莉奈の情報と佐々木俊介が彼女に今までいくら使ったかという証拠だった。九条家の情報網は流石だと言わざるを得ない。佐々木俊介が成瀬莉奈に贈った物、毎回プレゼントしているものは何なのか、いくら使ったのか、いつ彼女に買ってあげたのかなど、全ての証拠が揃っていた。結城理仁はそれを見た後、その整った顔が暗く沈み言った。「佐々木俊介が奥さんに渡している生活費は月六万だ。これは奴が割り勘にすると言い始める前の金額だぞ。割り勘にした後、たっ
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第292話

彼は佐々木唯月が以前から仕事を探しているが、まだ見つかっていないのを知っていた。なぜなら、佐々木唯月は結婚前にやっていたのと同じ仕事を探していたからだ。これは少し難しい。だから、今になっても仕事が見つかっていないのだった。そんな時に佐々木俊介が浮気していることを知り、唯月は仕事を選んではいられなくなっただろう。だから、きっとすぐに何か仕事を見つけるはずだ。「そんなの簡単だろ。君が何か仕事を見つけてあげればいいだけの話じゃないか」「内海さんは俺に聞いてきたよ。うちの会社は財務部長は必要ないだろ。そもそも財務部に人手は十分足りている。それに俺は自分の正体を隠しているんだ。彼女の姉さんをうちに入れるわけにはいかない。だから、その時俺は何もせず、彼女自身に仕事を見つけてもらおうと思ったんだ」結城理仁は自分のことを優先し、佐々木唯月の仕事を見つけてあげなかったので、気が咎めていた。彼は人材を重視するし、ルールに則った社長である。佐々木唯月は仕事を辞めてから三年以上経っている。今復帰したら、仕事において必ずわからないことが出てくるはずだ。彼ら結城グループに入るのは非常に難しい。佐々木唯月が今仕事に戻るのは一からスタートするのと同じことで、結城グループに合格するのは難しい。彼のルールというのは、コネを使って裏口就職させないというルールだ。普段の生活において、内海唯花と一緒に暮らすようになってから、彼は前例を破る行動が多くみられる。しかし、仕事においては話が別で、内海唯花のために彼のルールを変えてコネを使って彼女の姉を会社に入れるようなことはしない。もしいつか佐々木唯月が自分の力で結城グループの条件に合い、会社に入ることができるのなら、彼はもちろん喜んで迎え入れる。しかし、彼が佐々木唯月のために特別ルートを設けるようなことは絶対にありえないのだ。九条悟も少し黙った後、言った。「彼女、他の仕事をする気はないのかな?大企業の財務部なんて普通募集は出ないだろう」「きっと他の仕事も視野に入れるさ」結城理仁は証拠の写真を封筒に入れ直し、引き出しになおした。昼に内海唯花に持って行ってあげるつもりだ。「君たち夫婦のほうは、仲直りしたか?」九条悟はまた他人のことが気になって尋ねた。結城理仁は彼を一瞥し、何も言わなかった。彼自身
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第293話

「なに考えてるんだ?」九条悟は興味津々で彼に尋ねた。結城理仁は我に返ると、淡々と言った。「お前のことを考えているのではないことは確かだ」九条悟はケラケラと笑った。「君が俺のことを思ってくれるってんなら、さっさと仕事なんか辞めて結婚して子供産むよ」結城理仁は彼を睨みつけた。「俺はちょっと仕事に戻るよ。ここ数日君の仕事の効率はかなり高かったから、俺もへとへとになるまで仕事をこなさないと」九条悟はお茶を飲み終わると立ち上がった。「君はもう仲直りしてまた穏やかな日々が返ってきたし」結城理仁は内海唯花と金城琉生の関係を勝手に勘違いしてヤキモチを焼いていただけだった。それで彼らはギクシャクしてしまった。もしいつか、夫婦二人が今回よりももっと大きな誤解をしたら、更に散々なことになってしまうかもしれない。それを考え、九条悟は心の中でこの夫婦二人が永遠に仲睦まじくいてくれと祈ることしかできなかった。ああ、今はまだ仲睦まじいとは言えないが、それは時間の問題だろう。結城理仁はもう内海唯花のことが気になり始めている。ただ彼が強情でなかなか認めようとしないだけで、彼女のことをもっと好きになれば、誰かに指摘される前に、自分から唯花のもとに駆けて行き、自分の殻を破ることだろう。何が半年の契約だ。ははは、九条悟は親友兼上司が自らその契約を破棄するのを黙って見ていればいいのだ。九条悟が去った後、結城理仁はすぐに執事の吉田に電話をかけ、犬一匹、猫二匹を買ってトキワ・フラワーガーデンに送ってくるように頼んだ。彼は七瀬にそのペットを受け取りに行かせ、理仁が仕事が終わってから、七瀬にそれを届けさせるつもりだ。そのペットで妻のご機嫌を取ろう。どうなったとしても、妻のLINEはなんとか取り戻さねば。……息子を妹の店に預けて、佐々木唯月はまた仕事探しに出かけていった。今日、彼女はどんな仕事でも会社が彼女を雇ってくれるというのなら、何だってやるつもりだ。「唯月姉さん、私の電動バイクを使ってください。歩かないで済むから、疲れないですし」牧野明凛はバイクの鍵を持って彼女を追いかけて来た。佐々木唯月に自分の電動バイクを貸して、仕事を探すのに使ってほしいと思ったのだ。どうせ彼女の家は店からとても近い。歩いてもそんなに時間はかからない。バイクを佐々木
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第294話

数台の車がやって来て、内海唯花が経営する店の前で止まった。さっき店に戻ったばかりの二人はその数台の車を見た。内海唯花の目はよく利き、その数台の車が彼女のあのいとこたちのだと気づいた。その瞬間、彼女の顔は曇った。こいつらまだ懲りてないのか!内海智明を筆頭に内海家の若い世代が店へと入ってきた。彼らは手には果物が入った籠をぶら下げていた。「唯花」内海智明は笑顔で手に持ったその果物の籠をレジ台の上に置くと、内海唯花に言った。「新鮮なフルーツを買ってきたんだ。お姉さんと一緒に食べてくれ」佐々木陽を見て彼は尋ねた。「その子は君の姉さんの息子さんだろ。お姉さんに似ているな」そう言いながら、彼は佐々木陽の頭を撫でようとしたが、佐々木陽はその手を避けて触らせなかった。内海智明は笑いながら「ボク、怖くないよ。俺は君のおじさんなんだ」と言った。他の人たちも手に持っていた果物の籠をレジ台に置き、そこに収まりきれなかった籠は地面に置いた。内海唯花は冷たく尋ねた。「あんた達、ここに何の用?お金なら、諦めたほうがいいわよ」「唯花、座って話さないか?」内海智文はその傲慢な態度に笑顔の仮面をつけていた。彼はこの世代では一番能力が高く、年収は二千万ある。それ故、彼は最もプライドが高いのだ。はじめて内海唯花に会いに来た時は、彼はほとんどちゃんと内海唯花の顔を見て話をしなかった。今、彼は停職処分にされて久しい。いつになったら会社に戻れるのかまだわからない。そのまま会社をクビになる可能性も否定できない状態だった。それから彼の兄弟たち、そして父親の世代も仕事や自分たちの商売もうまくいっていない。もし彼らにある程度の蓄えがなかったら、もう今頃破産しているだろう。なんとか今もっているが、彼らももう長くはもたないようだ。もしこれ以上内海唯花姉妹と和解できなければ、彼らが親子二代に渡って築き上げてきた家業は、もう終わりかもしれない。それから、一番下の従弟である内海陸が勾留されている件で、彼らが従弟を解放してあげたいと思ってもだめで、お金を出しても許されなかった。これは絶対に内海唯花の後ろ盾になっている人物の仕業だ。兄弟数人と父親世代たちが相談した後、まずは内海唯花姉妹と和解し、それから唯花の後ろにいるその人物は誰なのか探ろうということになった
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第295話

内海智文は少し黙ってから彼女に尋ねた。「だったら、俺らにどうしてほしいんだ?」「唯花」内海智明は年上の従兄であることを笠に着て内海唯花に説教を始めた。「以前、俺たちがどれだけ仲違いしていたとしても、家族だろう。三番目のおじさんはこの世にはいないが、それでも実のおじである事実は変わらないじゃないか。確かに以前は俺たちが間違っていた。今は自分たちの過ちに気付いているんだ。君は心が広く寛大な人だからきっと俺達を許してくれるだろ?今後は君たちにあんなことはしないって約束するからさ」ネットの力を借りるのは手っ取り早い。しかし、簡単に立場が逆転して損をしてしまう。今日、彼らがネットを利用して従姉妹をネット暴力に遭わせても、明日は彼らがその目に遭ってしまうのだ。自分も同じような目に遭わなければその気持ちがわからない。ネット暴力が如何なるものなのか、ネット民たちに罵らせ、責められるのがどんな苦しみなのかを。内海唯花がツイッターにあげたあの反撃以降、彼ら一族たちはもっとひどい目に遭ってしまった。仕事を失った者も、商売がうまくいかなくなった者もいる。契約済だった仕事は全て破棄され、それ以外にも、評判はガタ落ちだった。彼ら一族の者たちは最近、ほとんど寝られなくなっていた。もちろん、その多くの理由は怒り狂っていたからだ。どうやって内海唯花姉妹に損をさせるかを常に考えているおかげで眠れなくなっている。内海唯花は、はははと冷たく笑って言った。「私は心が狭くて、度量の小さい人間だし、ずっと恨み続ける性格なのよね。当初あんた達は私とお姉ちゃんにあんなことして、死ぬまで追い詰めようとしたくせに、立場が逆転してから自分たちが優勢に立てないとわかったとたんに、腰を低くし始めたよね。ううん、腰を低くはしてないわ。あんた達が今日謝りに来たのも、ネット民にすごく罵られたからでしょ。そのせいで自分たちが不利になったから、こうやって来たはずよ。あんた達はただ自分たちの利益のために腰を低くして見せているだけ。過去の過ちを認めて後悔したから謝りに来たんじゃないわ」彼女をバカだと思っているのか?彼女にそれがわからないとでも?最初にいとこ達数人が和解するためにやって来て、おばあさんのお見舞いに来てほしいと言ってきたのも、それを動画に撮ってネットにアップし、ネット民た
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第296話

「本当に俺らがやり合うことになれば、共倒れになるまで続くぞ。お前が有利な立場に立てるとでも思ってんのか?こんな店、経営できなくなるだけじゃなく、ネットショップもやばいことになるぞ。ネットショップの評価を下げて、クレームつけりゃあ、閉店に追い込むことだってできるんだからな。「唯花、一体どこのどなたがあなたの店を潰してネットショップにクレームつけるですって?」神崎姫華が内海唯花に会いに来た。車を降りると店に入る前に内海智文のあの偉そうな声で脅迫する言葉が聞こえてきた。神崎家のお嬢様は短気なお方だから、それを聞いた瞬間に怒りを爆発させた。内海唯花が彼女の愛の策士だということを知らないのか?よくも彼女の策士を脅迫するような度胸があったものだ。そんなことをすれば、神崎姫華があっという間に彼らのような恥知らずの偉そうな奴らを叩きのめしてくれよう。神崎姫華はカフェ・ルナカルドに行って買って来たお菓子を持って、車の鍵を指でぶらぶらさせながら、あごを上げ店に入ってきた。他の者は神崎姫華のことを知らなかったが、内海智文は神崎グループ傘下である子会社で働いているし、彼は管理職だから、会社の年会で遠くから神崎姫華を見かけたことがあり、彼女のことを覚えていた。この時、神崎姫華が入って来て、内海智文の顔色が一瞬で変わった。彼は停職処分にされてから今に至るまで会社に戻れない理由がわかっていた。多くのネット民から裏切られた後、こんな恥知らずの人間を会社に留めておけば遅かれ早かれ大きな災いになるから、さっさと本社は彼を解雇するべきだとリプライされたのだった。しかし、その主な理由は神崎姫華と結城理仁のゴシップ記事の注目を彼のツイートが奪い、彼女の怒りを買ったせいだった。今、結城グループ及び神崎グループで働く人は、神崎姫華が結城理仁に片思いをしていて、熱烈に彼を追いかけているのを知っている。「か、神崎さん」「内海智文は笑顔を作り、彼女のほうへと向かっていき、まるで飼いならされた犬のようにへこへこしていた。「神崎さんがどうしてこちらに?」神崎姫華は彼を一瞥し「あんた誰よ?犬みたいに邪魔しないで、さっさとどきなさいよ!」と言った。内海智文は急いでそこを退いて、神崎姫華の邪魔にならないようにすると、依然として満面の笑みを作り自己紹介した。「神崎さん、私は
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第297話

電話の向こうの神崎玲凰は、この可愛い妹をどうすることもできなかった。彼はどうしようもなく尋ねた。「内海智文がどうお前を怒らせたんだ?」「唯花は私のお友達で、愛の策士よ。あいつがその彼女にお店を潰すだの、徒党を組んで唯花のネットショップにクレーム入れて潰すだの言ってきたの。つまりこいつはこの私に喧嘩売ってるってことでしょ?あいつら一族がやってることって、人間がやることなの?私たち神崎グループにこのようなクソ管理職がいたら、世間から非難されちゃうわよ。ホント、人って見かけによらないわね。まともそうに見えて、実は腹黒なのよね」「……」神崎玲凰は妹の横暴さに言葉を詰まらせて何も言えなかった。アーロン基板株式会社の社長が本社に報告していた。内海智文は確かに有能な人間で、彼はアーロン基板で平社員から今の副社長の座までのし上がったのだ。一歩ずつ一歩ずつ努力してきた。社長は内海智文の親戚内での騒動で有能なやり手を失いたくなかった。だから、ネットでまだ炎上している時は彼に対して停職処分という形をとって、内海智文を解雇しなかったのだ。内海智文は神崎姫華の話を聞いて、顔が真っ青になっていた。彼はこの時理解した。内海唯花の後ろ盾は牧野明凛ではなく、神崎姫華だったのだと。彼は牧野明凛の家はただの成金で金持ちになっただけで、そんなに権力を持っていないから、彼ら一族にそこまで大きな影響を及ぼすことはできないと思っていた。その後ろ盾が神崎姫華であるのなら、納得がいく。神崎姫華の身分と神崎グループでの地位があれば、彼ら一族をどん底まで落とすことなど余裕でできるだろう。「神崎さん……」「だまりなさい。私はあんたみたいな陰険な奴の話なんか聞きたくないの!あんた達一族は唯花のご両親が亡くなった時の賠償金を使ってここまでやって来られたのでしょう。それなのに、唯花姉妹にヒドイことしてさ。あんた達、唯花のご両親が化けて出てこないか怖くないわけ?」神崎姫華は星城の社交界において、評判はあまり良くなかった。彼女はいつも理不尽な態度を取るからだ。しかし、彼女は根っから悪い人間であるわけではない。内海唯花と知り合いになっていなくても、彼女も内海智文一族がやったことに反吐が出る。「兄さん、何か言ってよ!」神崎玲凰は仕方なく言った。「わかったよ。兄ちゃんが浜野
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第298話

神崎姫華が放り投げたあの果物と籠も内海智明は拾って去っていった。ひと籠五千円ほどするのだ。持って帰って自分たちで食べよう。内海唯花なんかにあげてたまるものか。それを聞いたら内海唯花は果物くらい自分で買えると不満を言うだろう。内海智文は智明の車に乗って来ていた。車に乗ると、彼は急いで自分の上司であるあの浜野社長に電話をかけて、さっき起こったことを説明した。ただ、浜野社長はその時すでに本社から連絡を受けていて、内海智文が説明し終わる前に残念な様子で言った。「智文、お前と二人の従姉妹とのわだかまりはそんなに難しい話じゃないだろう。解決しようと思えば簡単にできたはずだ。お前たちが姉妹に謝って、しっかり誠意を見せて、それからネット上で謝罪文を公開すればよかったんだ。そうすれば姉妹から許してもらえるだけでなく、世間のみんなもお前たちがしっかり過ちを認めて反省しているとわかり、これ以上は騒がなかっただろう。だが、お前たちは何をした?お前を停職処分に留めてから結構時間が経ったというのに、まだ今回のことを解決できていないばかりでなく、逆に悪化する一方じゃないか。神崎さんを怒らせて、本社もお前に失望したぞ。時間を作って会社に行って仕事の引継ぎをしてくれ。暫くは仕事探しはするなよ。神崎さんが怒っているから、ここ星城で良い仕事を見つけようと思ったって、難しいはずだ。「社長、浜野社長、私は……」浜野社長は電話を切ってしまった。内海智文はあまりの怒りで携帯を投げてしまいそうだった。内海唯花と神崎姫華が仲が良いなどと彼が知るはずないだろう?それから彼が二言三言彼女を脅した言葉を神崎姫華にちょうどタイミング良く聞かれるなんて思ってもいなかったのだし。内海智明は車を運転しながら従弟に尋ねた。「弁解の余地はないのか?」「会社に戻って引継ぎをしろって言われたよ。浜野社長が神崎さんに手を回されたら良い仕事が見つからないから暫くの間は新しい仕事を探さないほうがいいって」内海智文は憤慨していた。内海智明も非常に腹を立てていた。神崎お嬢様はまるで理屈が通じない人だと思っていた。彼らを恥知らずな人間だと責めていたが、そういう彼女のほうも人のことが言えないだろう?ただ自分の身分を頼りに、彼らを見下しているだけだ。暫くして、内海智文は怒りのこもった声
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第299話

内海智文は何も言えなかった。内海唯花の話を借りて言えば、今回の件が彼ら全員の利益に悪影響を及ばしていなければ彼らは絶対に頭を下げることはないのだ。頭を下げたとしても、それは本心からではない。毎回内海唯花のところに来るたびに簡単に唯花を怒らせてしまう。結果、浜野社長が言ったように、本来とても簡単な事が意外にも彼らを複雑にさせていた。今になっても、解決ができていない。「唯花は神崎さんとどう知り合ったんだ?何が愛の策士だよ?」内海智文は嘲笑するような顔で言った。「神崎さんは結城家の坊ちゃんに熱を上げているだろう。たぶん唯花が彼女にどうやって結城社長を落とせばいいか教えてやったんだろ。神崎さんの背後で策を練って結城社長に付き纏わせているのが内海唯花だと知れば、あの女はもう終わりだ」「俺はあの二人がどうやって知り合ったのかって聞いたんだ。神崎さんの身分を考えてみろ、あの二人は先祖子孫の代々まで共通点なんかありっこないだろ」内海智明は唯花が神崎姫華と知り合いであることを羨ましく思った。しかも神崎姫華から守られているんだぞ。神崎姫華が神崎グループで何の役職にも就いていないことを甘く見てはいけない。彼女は神崎家の令嬢なのだから、それだけで十分だ。彼女の実の兄は星城で最も優秀な大物社長の一人なのだから。「あの二人がどうやって知り合ったかなんてわかるわけないだろ。急に唯花に対抗できる方法を思いついたぞ。しかも、あの女と神崎さんの関係もぶち壊せる方法をな」内海智明もバカではない。「お前、結城社長のとこに言って、全てをばらすってか?だけど、お前が彼に会えるのか?彼に会うためには、どんな奴でもアポを取ってないと無理らしいぞ。しかもそもそもアポが取れるかどうかも怪しいってのに。アポ取るのにかなりの手続きが必要で、しかもある人物からの審査が通ってはじめて彼に会うことができるんだぞ。聞いたところによると、結城グループで長年働いている社員ですら、結城社長に会えないらしい」トップクラスの富豪である結城家の御曹司は彼ら普通のビジネスマンたちからすると、まるで神様のような存在だった。彼の噂を聞くことはできても、結城御曹司本人に会うことはできないのだ。内海智明は彼がもし結城御曹司に出会う機会があれば、土下座してまでも彼に取り入りたいと思った。「俺は結城社長
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第300話

「神崎さん、唯花、あなた達はお話してて。私は陽ちゃんを連れてスーパーに買い物に行ってくるから」冷蔵庫の中にはまだたくさん神崎姫華が持って来た魚介類が入っていた。今日もまた海鮮料理を味わうことができるが、野菜が足りない。牧野明凛は佐々木陽を抱っこして買い物に出かけた。佐々木陽は抱っこされて店から出る時に後ろを振り向いて神崎姫華を見た。神崎姫華は笑って言った。「唯花、あなたの甥っ子ちゃん、ほんとにカワイイわね」「やんちゃだけどね」「今の子ってみんなやんちゃでしょ。次に来る時は甥っ子ちゃんにおもちゃ買ってきてあげるわね」「神崎さん、いいの、陽はたくさんおもちゃがあるから。うちの旦那もたくさん買ってくれたし」神崎姫華は「あなたたちが買ったものはあなたたちのでしょ。私は自分で買ったものをあげたいの。あの子のこと気に入っちゃったから、たっくさん買ってあげたいのよ。もし私の甥っ子だったら、この世界すらも彼のおもちゃにしてあげるんだから」と言った。これは子供を溺愛するタイプだ。諦めよう。牧野明凛が佐々木陽を連れて出かけた後、内海唯花はキッチンへと行き、炊飯器でご飯を炊き始めた。そして神崎姫華に尋ねた。「神崎さん、お昼はここでご飯を食べていく?ただの家庭料理だから、あなたの口に合うかどうかわからないし、どうするかあなたが決めてね」内海唯花は自分の料理の腕には自信があった。しかし、神崎姫華が彼女が作る家庭料理に食べ慣れているかはわからなかったのだ。神崎姫華は少し考えてから言った。「またの機会にするわ。私、朝また結城社長を待っていたんだけど、会えなかったの。だから、後でスカイロイヤルホテルに行って、彼を待ってみることにする。彼は毎日あそこでご飯を食べているから」内海唯花は笑って言った。「わかった。頑張ってね。早く結城社長に振り向いてもらえたらいいね」「うん、私頑張る」結城理仁の話題になり、女性二人はまた話し始めた。そして、この時、外には一台の車がやって来ていた。それは結城おばあさんの車だ。もちろん、結城理仁が金持ちであることを隠しているから、新しく買った中古車でやって来た。しかし、おばあさんは車を降りた時に店の前に止めてある神崎姫華の車を見て、すぐにまた車の中に戻り、運転手を急かした。「早く車を出して、出して」あの神崎家
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