All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 271 - Chapter 280

318 Chapters

第271話

成瀬莉奈は「息子さんはあなた達夫婦二人の子供だから、そもそもそれぞれが半分ずつ負担するものだし、あなたは間違ってないわ」と言った。佐々木俊介はもちろん自分が間違っているとは思っていない。彼は一口ワインを飲み言った。「スカイロイヤルって本当最高級のホテルだな。ここのワインは普段俺たちが飲んでるのよりも高級なやつだ」成瀬莉奈は笑って言った。「それに今日はパーティーでしょ。残念なのは今晩ここに来ているのは中小企業の社長とか、私たちと同じレベルのエリート達だということね。神崎社長や結城社長みたいな大物は一人も来ていないわ」彼女は結城社長のような超大物にもう一度会ってみたいと思っていた。以前偶然見かけたことがあるが、彼女は結城社長の顔を見ることができなかった。だから結城社長が噂で聞くように高貴で冷たいだけでなく、超絶イケメンであるか気になるのだ。「いつかは俺たちも結城社長や神崎社長のような人物に出会う機会があるさ」佐々木俊介は成瀬莉奈を慰めて言った。彼はそんな彼女よりも残念に思っていた。彼女は彼のただの秘書でしかなく、彼のほうはビジネス界のエリートなのだから大物に知り合えれば意味がある。もし結城社長のような人と話ができる機会があれば、今後彼が転職しようと思ったら今よりももっと良い会社に行けるだろう。それにもしかしたら結城グループにも入れるかもしれない。「俊介、あなたもいつか社長になれるといいわね」成瀬莉奈は佐々木俊介が自分で大企業を作り、社長になることを妄想していた。そして彼女は佐々木唯月を蹴落として、佐々木俊介の妻となり、大企業の社長夫人として君臨するのだ。佐々木俊介は笑って言った。「幅広く人脈づくりして、資金も貯まったら自分の会社を作るよ」二人はおしゃべりして笑い合った後、知り合いに挨拶をしてビジネスの話をした。成瀬莉奈はずっと佐々木俊介の傍にいて、彼が誰かとビジネスの話をする時には彼女もその話に加わった。もし今夜佐々木唯月が来ていれば、彼女の今の容姿を見て参加者はみんな嫌悪感を持ち、そのせいで佐々木俊介の評判を落としていたことだろうと彼女は思っていた。佐々木俊介が太った醜い妻を連れていると笑い者になっていたはずだ。しかも佐々木唯月は暫く社会から離れていて時代の流れについていけていない。唯月を佐々木俊介のパートナ
Read more

第272話

どの会社もトップの社長が変われば、会社上層部も人員入れ替えが行われる。新たに就任する社長は、自分の腹心を育てるに決まっている。森社長の説明を聞いて、佐々木俊介は金城琉生に対して急に好感を持った。彼は笑って森社長に尋ねた。「森社長、もしかして金城さんとお知り合いですか?私と彼の間をちょっと取り持っていただけませんか?金城グループの子会社にも電子製品を作っている会社があります。我々の会社は提携会社を探していますが、なかなかコネがなくて」スカイ電機株式会社と森社長のいる会社も提携関係にある。そうでなけれな二人は知り合いではない。森社長は笑って言った。「金城坊ちゃんも多くの人に囲まれて、もうすぐうんざりするでしょう。きっと休憩しにやって来て座るはず。彼が来たら、佐々木さんにご紹介しますよ」それを聞いて佐々木俊介は満面の笑みになり、森社長に非常に感謝し、お酒のグラスを持ち上げて言った。「森社長、乾杯しましょう」森社長は佐々木俊介と乾杯し、二口お酒を飲むと成瀬莉奈のほうを曖昧な目つきでちらりと見て、佐々木俊介に言った。「成瀬秘書は今日とてもお綺麗ですね。佐々木部長、あなたは美人に縁があるようだ。若くして会社でも高い地位に就き、給料もいい。それに美しい女性がすぐ隣にいてくれるとは、佐々木部長、本当に羨ましくて嫉妬してしまいますよ」佐々木俊介のように秘書と浮気関係にある人は決して少なくない。みんなわかっていて何も言わないのだ。彼らが接待をする時、妻の能力が高かったり、夫婦関係が非常に良好だったりしない限り、妻を連れて行くことは、まずなかった。それ以外は秘書や愛人を連れて行くのが普通だった。これが結城理仁や神崎玲凰などの本物の名家出身者がこのようなパーティーに参加しない理由なのだ。彼らのような身分の人間がパーティーを開けば、それに出席するのは身分も地位も高い者たちばかりで一緒に来るパートナーは決まって自分の妻だ。名家の妻たちの社交界には、正妻でなければ入ることは難しい。あのような不倫相手の女は、たとえ正妻にのし上がれたとしても、名家の妻たちに疎まれてしまう。佐々木俊介はニヤリとして成瀬莉奈をちらりと見ると笑って言った。「成瀬秘書は私の信頼するアシスタントですからね、彼女がいなくなると困るんです」成瀬莉奈は少し顔を赤く染めたが、おおら
Read more

第273話

「金城さん、はじめまして」佐々木俊介は右手を差し出し、金城琉生と握手をした。金城琉生は彼と握手をしながら言った。「佐々木部長のお名前、どこかで聞いたことがあるような」彼は佐々木俊介の名前に聞き覚えがあった。佐々木俊介はそれを聞いて、身に余る光栄に思った。「金城さん、私の名前をご存じなんですか?」まさか自分がビジネス界で名前を知られるほど有名になっているとは。今まで一度も会ったことのない金城家の御曹司ですら彼の名前を聞いたことがあると言っている。金城琉生は笑って言った。「なんとなく聞いたことがあるような気がして。たぶん誰かが佐々木部長の名前を出した時に耳に入ったんだと思います。以前、佐々木さんご本人にお会いしたことはありませんでしたが、今日こうやってお会いできましたね」佐々木俊介は急いで自分の名刺を取り出し、金城琉生に手渡して微笑み言った。「金城さん、こうやって知り合えたのも何かの縁でしょう。これは私の名刺です。よろしくお願いいたします」金城琉生は佐々木俊介の名刺を受け取り、それを見たあと名刺ケースに入れた。彼はずっとニコニコ笑っている成瀬莉奈を見て、この女性はかなりの美貌の持ち主だと思ったが、ただちらっと見ただけで、彼女から視線を外した。金城琉生の目には、内海唯花こそ、この世で一番素敵な女性なのだ。内海唯花以外の女性は彼はどうでもいい。彼らは金城琉生に席を勧め、一緒にお酒を飲みながらビジネスの話をし、会話が弾んだ。……佐々木唯月は子供用の粉ミルクとおむつを購入した後、ベビー用品店から出てきた。粉ミルクをベビーカーの上に載せると、いくつか買ったおむつの袋を置く場所がなかった。店員がおむつは五袋買ったら一袋おまけでついてくると言ったので、彼女は五袋購入したのだった。それプラス一つおまけだから、合計六袋もあった。ベビーカーは荷車ではないから、そんなに多くのおむつを載せるところなどなかった。仕方なく、佐々木唯月は再び佐々木俊介に電話をかけた。佐々木俊介は電話に出なかった。彼女は何度も電話をかけ、六回目でようやく佐々木俊介が電話に出た。「唯月、なんの用だ?俺が今忙しいってわからないのか?俺が今スーパーにでもいて、いつでも電話に出られるとでも思ってんのかよ。今後は何か大変な用事以外では俺に電話をかけ
Read more

第274話

「陽ちゃん」佐々木唯月はぶつかった衝撃で道に飛び出していった粉ミルクの缶は気にする暇もなく、急いで息子を抱きあげ、怪我がないかよく観察した。そしてひたすら息子に尋ねた。「陽ちゃん、どこか怪我した?どこが痛い?ママに教えて」「ママー」佐々木陽はただ泣くばかりで、両手を佐々木唯月の首にきつく回して放さなかった。彼は怪我はなく、ただ突然倒れて驚いているだけだった。「ドンッ!」そこへとても大きな音が響いた。佐々木唯月はその音がしたほうを見た。一台の車があの粉ミルクの缶にぶつかり、その衝撃で缶が飛んでまた下に落ちてきた。タイミングが良いのか悪いのか、その缶がまたその車のフロントガラスに落ちた。粉ミルク一缶は結構な重さがあり、一度空へ飛びあがって勢いをつけて落ちてきたのでフロントガラスが割れてヒビが入ってしまった。その車は急ブレーキをかけた。佐々木陽は突然のことに驚き泣き止むと、ぎゅっと母親の首をしっかりとつかみ放さなかった。佐々木唯月はその車が何なのか見てみたら、なんとポルシェだった!高級車!これって、まさか彼女に修理代を請求したりしないよね?以前、彼女の不注意でマイバッハを傷つけてしまったことがある。妹の夫がその車の持ち主と知り合いだったので、その縁のおかげで東隼翔は修理代の一部だけを請求し、彼女は大金を出さずに済んだ。もし今回また彼女に修理代を要求してきたら、本当にお金がない。佐々木唯月はかなり焦ってその車の持ち主が降りてくるのを見ていた。その背が高くガタイの良い大きな体にはどうも見覚えがある。あれは東さんじゃないか?どうしてまた彼?本当に偶然すぎる。東隼翔はフロントガラスを確認した。マジか、また修理しないと。そして地面に転がっている粉ミルクの缶を見て、道端に倒れている佐々木唯月のベビーカー、それから地面に散乱したおむつの袋や粉ミルクを見た。それで東隼翔は理解した。佐々木唯月だとわかった後、東隼翔は一生分の運はもうすでに使い果たしてしまったのかと思った。どうして毎度毎度、このふくよかな女性なんだ!彼は後ろを向いて車に乗った。佐々木唯月は彼が車を運転して去るのだと思い、ほっと胸をなでおろした。しかし彼は車をただ路肩に移動させただけだった。そして再び車から降り、あの粉ミルク
Read more

第275話

東隼翔は無言の佐々木唯月を見ていた。彼の親友である結城理仁が内海唯花と結婚したので、このふくよかな女性は親友の義姉にあたるから、東隼翔は佐々木唯月に修理代を請求するつもりはなかった。今回も彼女はわざとやったわけではない。彼にも車のスピードを出し過ぎた責任がある。佐々木唯月は彼に見つめられて、内心とても緊張していた。彼女は息子をきつく抱きしめ、口を開こうとした時、東隼翔のほうが先に口を開いて彼女に尋ねた。「こんなにたくさん買い物をして、旦那さんを呼んで来てもらったらどうですか?それか、あまり買い過ぎないようにするとか」「家からここまで買い物に来るのは少し遠いですから、一度にたくさん買って帰りたくて。夫には電話をしましたが、今忙しくて迎えに来る時間がないと言われたんです。だから、自分で持って帰るしかありません。さっき道にあるブロックに気づかず、それにぶつかってしまって、ベビーカーが倒れたんです。その時、粉ミルクが転がっちゃって、それが東さんの車にぶつかるとは思いもしなくて」佐々木唯月は小声で説明した。「子供が泣いてしまったので、先に抱っこしたんです。だから転がった物を拾う余裕がなかったんです。東さん、今回も本当にわざとではありません」それから少し黙ってから彼女は言った。「もし修理代をご請求されるのであれば、修理代の半分を負担するのでお願いできませんか?私もうっかりしてて、東さんもスピードを出していらっしゃったでしょう。それでこんなことになってしまったから、東さんにも責任はあると思うんです」東隼翔は心の中で不満を言っていた。この間は結城理仁が彼に電話してきたから、彼に免じて彼女には18万円の修理代の請求しかしなかった。実際は彼自身が出した金額は佐々木唯月よりも多く負担していたのだ。あの時、結城理仁は彼が内海唯花と結婚していると言わなかったから、もし言っていたら、彼は佐々木唯月に修理代を請求することはなかっただろう。東隼翔は手を伸ばしておむつの袋を持った。佐々木唯月は訳が分からず彼を見ていた。彼が全てのおむつの袋を車に載せてから、また戻ってきてベビーカーを押し彼女に言った。「車に乗ってください。あなた達二人を家まで送ります」このふくよかな女性の夫は彼女に対してあまりよくしてくれていないのだろう。妻が電話して手伝ってほし
Read more

第276話

佐々木唯月はそう言われてすぐに返事をした。彼女は本当にそのようには考えていなかった。第一に彼女は夢見る乙女な年齢をとっくに過ぎている。第二に彼女は結婚していて妻であり母親でもある。最後に彼女は今や結婚前のような美女ではなく、太っちょの醜い女だ。東隼翔は笑って言った。「では、修理代の件について話しましょうか」佐々木唯月はまた緊張してきた。彼女は今貯金はあまりない。今回彼の車の損傷はこの間よりも明らかに大きい。だから、修理代も以前よりかかるだろう。修理代を請求されれば彼女は破産してしまう。さらには佐々木俊介から彼女はする事なす事ろくでもないことばかりだと罵られるだろう。この間はベビーカーがうっかり車体を少し傷つけただけで、18万円も支払った。「どちらにお住みですか?」「久光崎です」「あそこは周りに学校が多い地区ですよね。あなた達は将来を見越して久光崎にマンションを購入したんですね」今久光崎で家を買おうと思っても、人気がある地区だからなかなか新しく家を買うことができないのだ。「夫が結婚する前に買った家なんです。今毎月ローンを返しているんですよ。東さん、今回修理代はおいくらお支払いすればいいでしょうか?その……私は別に責任逃れしようとか、弁償したくないとかそんなことを思っているわけじゃないんです。私は今専業主婦で、収入がなくて、貯金もあまり多くないんです。たぶん、修理代金を捻出するのが難しいかと。ですから、分割払いでもいいでしょうか?」佐々木唯月は探り探り尋ねた。「今、頑張って仕事を探しているんです。仕事が見つかってお金を稼げるようになったら、きちんと残りをお支払いしますので」東隼翔は車を運転しながら言った。「そんなに硬くならなくて大丈夫ですよ。今回は修理代は払ってもらわなくて結構です。この間修理代をもらったのは、今後あなたに注意してもらいたくて、教訓のためにああしたんです。お子さんがベビーカーに乗ってて、もし交通事故になったら、相手の車はどうなるかわかりませんが、ベビーカーのほうは弱いですから、お子さんが痛い目に遭うことになりますよ」佐々木唯月はもしそうであればどうなっていたか考え、血の気が引いてしまった。「修理代をいただいても、意味がないように思います。あれからまだ一か月ちょっとしか経っていませんよ。それな
Read more

第277話

佐々木唯月は彼を見つめた。東隼翔は彼女がまた変なことを考えているとわかった。この女性の警戒心は非常に強い。彼は説明した。「俺が言いたいのは、あなたの家に誰もいないなら、息子さんを一人で家に放置しないほうがいいということです。あなただけ下に荷物を降りて来るなんて少し危ないですよ」彼女の息子は見た感じ2、3歳くらいだ。この年齢の子供はまさにやんちゃでよく動き回る年頃で、何に対しても興味を持ち触っておもちゃにしてしまう。もし危険なもので遊んで何か起こってしまえば、後悔してももう遅い。「ありがとうございます、東さん、注意してくださって。今すぐ上にあがります」佐々木唯月はたくさんあるおむつの袋を持ち、東隼翔にお礼を言って、急いで上にあがっていった。心の中で東隼翔は威圧的で、顔には恐ろしい傷もあって見た目は良い人そうではないが、とても気配りができて優しい人だと思った。人は見た目によらないとはまさにこのことだ。東隼翔は佐々木唯月がいなくなってから車に戻り運転して去っていった。道の途中で彼は結城理仁に電話をかけた。理仁が電話に出ると、彼は言った。「理仁、俺の車、お前の奥さんの姉さんに恨みでもあるみたいだ。あのな、さっきまた彼女のせいでポルシェのフロントガラスが割れたんだぞ」「どういうことだ?お前、彼女にぶつかったのか?それとも彼女がまたお前の車にぶつけたのか?」義姉の話なら、結城理仁は多少は関心を持っている。義姉は彼にずっとよくしてくれていた。「そうじゃないんだ」東隼翔は事の経緯を親友に話した。話した後、彼は言った。「理仁、俺の車ってお前の義姉さんに恨みでも買ったんだろうか?俺、明日ディーラーに行って二百万ちょいの車でも買おうかな。今後自分で運転する時はその安い車で出かけよう。また彼女に出くわして高級車を壊されたら、たまったもんじゃないし」もう二度目だ。一度目はまだよかった。車体に少し傷が入っただけでそこまでひどくなかったから、修理代もそんなにかからなかった。しかし、今回は前回よりも状態がひどい。三度目は今回よりももっとひどい目に遭ってしまうかもしれない。結城理仁「……」彼はそれを聞いた時、どう言っていいのかわからなかった。本当に偶然すぎる。毎度毎度、彼の義姉なのだから。義姉が今結婚して
Read more

第278話

結城おばあさんに気に入られるくらいだから、内海唯花は何か魅力を持っているはずだ。結城理仁は少し黙ってから言った。「別に会ってもしかたないさ。目があって、鼻があって、口があるだけだ」「はははははは」東隼翔はケラケラ笑った。親友は内海唯花に会わせてくれるつもりがないらしい。九条悟のほうはもしかしたらもう会ったことがあり、内海唯花について詳しいかもしれない。九条悟は噂好きだし、ネットワークも広いのだから内海唯花の祖先まで知り尽くしている可能性もある。東隼翔はこの話題はそれ以上続けず、親友が忙しいのがわかっていて、電話を切ってしまった。時間が経つのはとても速い。あっという間に夜になった。結城理仁はロールスロイスに座り、眉間を押さえた。彼は少し疲れていた。おそらくここ数日、少しおかしくなっていたからだろう。一日で二日や三日分の仕事をこなしていたのだから、疲れないほうがおかしい。「若旦那様、今日も屋見沢のほうに戻られますか?」運転手は尋ねた。結城理仁は座席にもたれかかり、目を閉じてしばらく運転手に返事をしなかった。二分ほど経ってから、彼は低い声で言った。「トキワ・フラワーガーデンに送ってくれ」「かしこまりました」七瀬は主人の話を聞いて、ほっと胸をなでおろした。主人はようやく奥さんのもとに戻ってくれるようだ。これで彼らも安心して日々過ごすことできる。主人は彼らボディーガードに対して何か八つ当たりのようなことをするわけではなかったが、ここ数日明らかに不機嫌そうで、ボディーガードたちは気を引き締め緊張状態が続いていたのだ。何か小さなヘマをしたらクビにされてしまう。結城理仁は会社から家に帰るのではなく、接待を終えてから帰っているので、家に帰る道のりはいつもより遠かった。それで二十分ほどかかって、ようやくトキワ・フラワーガーデンに到着した。結城理仁が玄関のドアを開けて部屋へと入った時、中は真っ暗だった。内海唯花はまだ帰ってきていないのだろうか?彼は部屋の電気をつけた後、時間を見てみると十一時だった。あのお嬢さんはもうすぐ帰って来るだろう。幸い彼があがってくるのが早かったので、ロールスロイスから降りる所を見られて正体がばれるようなことにならずに済んだ。二、三日ここには帰っていなかった。結城理
Read more

第279話

結城理仁はまたあの鶴を手に取り、妻の話を聞いた。「あなたが持ってるその鶴は神崎さんにあげたのより一回り大きいのよ。もっときっちり作ったんだから、どう?きれいでしょう?」自分のが神崎姫華が持っているものよりも大きいと聞いて、結城理仁はわけもわからず嬉しくなった。しかしそれを表情には出さず、淡々とうんと一言答えた。「きれいだ」内海唯花は笑って「あなたが気に入ってくれたならそれでいいわ」と言った。彼女は車の鍵をロ―テーブルの上に置くと、キッチンのほうへと歩いて行った。「ちょっと夜食を作るけど、あなたも食べる?」と彼に尋ねたが、理仁の返事を待たずに独り言をつぶやいた。「あ、忘れてた。あなたって夜食は太るから食べないんだった」結城理仁は彼女が勝手に判断してそう言ったので、もう何も言えなかった。しかし、結局彼はお腹は空いていなかった。内海唯花はキッチンでまたうどんを作っていた。結城理仁は暫くそこに立っていて、キッチンの入り口へと歩いて行った。キッチンの中には入らず、その入り口に立ち止り、内海唯花がネギとミツバを洗っているのを見ていた。彼女はうどんを作る時にこの二種類の薬味を入れるのが好きだった。そして、たまごと焼いた餅も入れた。彼女は以前、焼き餅を入れると歯ごたえがよくなってもっと美味しいと言っていた。「プルプルプル……」内海唯花の携帯が鳴った。彼女はうどんを作る手を止め、ぶつくさと言った。「こんな遅くに一体誰が電話かけてきたのよ」彼女が携帯に表示されているのが金城琉生であるのを見た時、眉間にしわを寄せた。しかし、やはり金城琉生からの電話に出て、結城理仁は彼女が「琉生君、どうしたの?」と尋ねるのを聞いた。金城琉生め、また電話かけてきやがった!結城坊ちゃんはすぐにウサギのように、ぴんと聞き耳を立てた。「唯花姉さん、唯月さんの旦那さんって佐々木俊介って言いますか?」金城琉生は家に帰った後、聞いたことがあるような気がしていた佐々木俊介という名前をどこで聞いたのか思い出したのだ。内海唯花の義兄の名前が確かこの名前だった気がしたのだ。それで彼はすぐに内海唯花に電話をして確かめようと思った。もちろん、彼には内海唯花から感謝されたいという下心があった。「ええ、義兄さんの名前は佐々木俊介って名前だけど、どうしたの?彼と知り
Read more

第280話

九条悟はすぐにそれが金城琉生だと当てた。今夜、金城琉生はホテルのビジネスパーティーに参加していたのだ。彼は金城グループでは、まだまだただの社員に過ぎないが、会社の継承者に内定している。金城家の御曹司という身分だから、パーティーではまるで水を得た魚のように、周りの人間からチヤホヤされ、ご機嫌取りをされていた。結城理仁は何も言わず、それを黙認したと同然だった。「だったら、証拠を今すぐ君に持って行ってあげようか?今トキワ・フラワーガーデンにいるのか?」彼は親友が社長夫人の人柄を探るために、自分の正体を隠して結婚し、わざわざトキワ・フラワーガーデンに家を買ったのを知っていた。「いや、いい。明日俺にくれ。今日はもう遅い、早めに休んでくれ。俺も風呂に入って寝る」九条悟はずっと結城理仁と内海唯花のことを見てきたが、結城理仁は九条悟に多くのことを話したくなかったので、すぐに電話を切ってしまった。九条悟はぶつくさと言った。「今夜寝られるか?ライバルに手柄を横取りされようとしてるってのに」結城理仁が寝られるかどうか、それは彼自身だけが知っている。内海唯花は金城琉生の話を聞いた後、全く驚いた様子はなく、腹を立てていた。「琉生君、教えてくれてありがとう」内海唯花は腹を立てていたが、すぐには爆発させず、金城琉生にお礼をしてまた尋ねた。「彼らの写真はある?」証拠が必要だ。それがあれば金城琉生が出会ったのが佐々木俊介というゲス男であると証明できる。「写真はないんです。パーティーで彼の名前をどこかで聞いたことがあるような気はしたんだけど、すぐには彼の名前をどこで聞いたのか思い出せなくて。家に帰った後にようやく唯花姉さんのお義兄さんがそんな名前だったなって思い出したんです。だから、電話して確かめようと思って。唯花姉さん、お姉さんに夫の浮気の証拠をこっそりと集めるように伝えてください。あの男が財産を他の誰かに渡してしまわないように」「ええ、そうするわ、ありがとう」金城琉生は笑って言った。「唯花姉さん、ただ教えただけですから、お礼なんていりませんよ。じゃあ、お休みのところお邪魔してすみません。唯花姉さん、おやすみなさい。明日の朝、明凛姉さんが好きな朝食を持って行きますから、唯花さんも一緒に食べてください」金城琉生はよく従姉の好きな食べ物や飲み物
Read more
PREV
1
...
2627282930
...
32
Scan code to read on App
DMCA.com Protection Status