玄武とさくらは城門から程近い酒楼にいた。二階の個室からの眺めは絶好で、窓を開けると城門付近の様子が手に取るように見渡せた。佐藤大将の行程は事前に把握されていたため、玄武は早々にこの個室を予約し、さくらが佐藤大将と対面できるよう手配していた。さくらは佐藤大将の姿から目を離すことができず、貪るように見つめていた。今にも駆け出して祖父の胸に飛び込み、幼い頃のように思う存分泣きたかった。あの頃のように、全ての辛い思いを祖父に打ち明け、すると祖父は優しく頭を撫でながら「誰がさくらを苛めたのか、このじいが懲らしめてやろう」と言ってくれたものだった。しかし今は、二階に立ったまま、祖父の馬が群衆に囲まれる様子を見守ることしかできない。耳を震わせんばかりの支持の声が響く中、涙が溢れ出た。祖父は本当に老いていた。以前は、こめかみに白髪が交じり始めていても矍鑠として意気軒昂で、都に戻れば父上と拳を交え、息一つ乱すことはなかった。今では、漆黑の髪はほとんど見当たらず、白髪に覆われていた。連日の道中で疲れが滲み出ており、大将としての威厳は保っているものの、疲労の色は隠せなかった。全体的に痩せこけ、かつては精悍で張りのあった頬も、今では同じ褐色ながら肉が垂れ下がっていた。それは紛れもない老いの兆しだった。さくらの最愛の祖父は、確かに老いていたのだ。佐藤大将は群衆の中を苦労しながら進んでいた。時には会釈で謝意を示し、時には御前侍衛が人々を押し返すのを心配そうに見つめ、民衆が怪我をしないかと気を配っていた。およそ半時間が過ぎてようやく、一行は酒楼の前にたどり着いた。本来なら御城番と禁衛府が道を開くはずだったのだが、あまりにも多くの民衆が押し寄せ、まるで人の壁のようになっていた。最初こそ人々の間を縫うように動けたものの、今や民衆は鉄壁となって佐藤大将を守るかのように取り囲んでいた。民衆の中には御前侍衛に手を出そうとする者もいたが、すぐさま誰かが「御前侍衛と衝突すれば佐藤大将のご迷惑になる」と声を張り上げて制止した。次第に、皆が「陛下はきっと辺境を長年守り続けたこの老将を公平にお取り扱いになる」と声を上げ始めた。最後には「天皇陛下の英明なるご判断」「天皇陛下の御仁徳」と称える声まで上がるようになった。この変化は極めて自然なものだった。わざとら
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