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第3話

十年前の夏、私は高校三年生の最後の模擬テストを終えたばかりの時だった。

私は太りやすい体質で、さらに両親が私をとても可愛がってくれるから、高校時代には体重が百五十キロに達していた。

身体が重くても、頭の回転は速いから、毎回の試験で学年トップだった。

満点の試験用紙を手に、私は意気揚々と家に帰ったら、母が地面に座り込んでいるのを見た。

叔父と叔母はリビングの椅子に座っていた。

口を開く前に、母がぎゃーと泣き出し、私に飛びついてきて抱き締めた。

「亜紗美、やっと帰ってきた」

母は泣き崩れ、嗚咽しながら、何かを言おうとしたが言葉にならなかった。

「あなたのお父さん、お父さんは……」

いとこの佳純が母を一瞥し、小声でぶつぶつ言った。

「ぐずぐずして、この演技は誰に見せるつもりなんだよ」

私は叔母と叔父に一体何が起こったのか尋ねた。

「君の父親は鉱山で押しつぶされて亡くなった。今でも遺体は掘り出されておらず、おそらく肉片になっているだろうな」

父は地元の金鉱の調査員で、毎日鉱脈を見に坑道に入る必要がある。

「まだ人が見つかっていないのだから、もしかしたらお父さんはまだ生きているかもしれない。どうしてこんなに早く結論を出せるんですか」

叔母は苛立って手を振り、まるで耳元でうるさく飛び回っていたハエを追い払うかのようだった。

「何を馬鹿なことを言っているんだ、一日も経ったんだよ。君の父が神様でもなんでもないわ」

叔父は叔母の不満を阻止し、直接彼らの今回来た目的を話した。

「この家は君のおじいさんが君のお父さんに残したものね。今彼がいなくなったなら、この家を俺たちが取り戻したい」

お父さんの生死もまだわからないままなのに、彼らは我が家を奪いに来た。

母は叔父の襟を掴んで、どうしてこんなに非人道的な話ができるのかと問い詰めた。

いとこの佳純が一気に駆け寄り、母を地面に突き倒した。

「私の母さんが長女だから、この家は元々私たちのものだぞ」

「おじいちゃんはお前の父を贔屓してるからこの家をあげただけ。今叔父さんは鉱山の地下に埋められた、それは因果応報だ」

当初、祖父は重病で寝たきりだった。

叔母一家は全く顧みなく、全部私の両親が祖父の看病をしていた。

だから祖父はこの家を私たちに残してくれた。叔母たちはずっとこの家が欲しくて、奪う口実がなかったから大人しくしていた。

「元といえばおじいさんを気にかけなかったのはあなたたちです。おじいさんの心を傷つかせたから、この家を私たちに残した」

パーンと、一発の平手打ちが私の顔に当たった。

鋭い爪が私の肌を擦り裂け、鮮やかな赤い血がゆっくりと滲み出てきた。

叔母は手を振りながら不満を言った。

「百五十キロの肉は無駄に育ったわけじゃなかったわ、殴ったらこっちの方手が痛いわ」

こんなに大きくなるまで誰にも殴られたことがなかったから、どう反応すればいいのかわからず、呆然とその場に立ち尽くしていた。

母は私を心配して、飛びかかってきて叔母の髪をグッと掴み、引っ張り合いになったが、叔父に一蹴りされて倒された。

痛そうにお腹を抱えている母を目の前にして、やっと我に返って叔父にやり返す。

しかし私が150キロもあっても、長い間農作業をしてきた叔父に敵わず押さえつけられ、抵抗できなかった。

彼は手近にあった茶碗を取って、何度も私の頭に叩きつけた。

母は驚いてし、叔父の手から私を救い出そうとしたが、ダメだった。

仕方なくひざまずいて許しを請うことしか出来ない母。

叔母は私たちの惨めな姿を見て嘲笑った。

「命が軽い人は他人に頼ることを学ばなければいけないわ。お前はちゃんとあたしに頭を下げて謝れ。そうすれば、気が向いたら許してやれるかもよ」

母は地面にひざまずいて、叔母に何度も頭を下げていた。

額が何回もタイルにぶつかった。ドン、ドン、ドン、ドン……

母の頭に青あざができ、長時間の衝突で額の皮膚と肉が潰されてしまっている。

傷口から滲み出る組織液が血と混ざり、額から目に流れ落ち、青白い顔に広がって、とても悲惨な様子だった。

叔母は母の顎を掴み、顔に唾を吐きかけた。

「チッ、その偉そうな態度がずっと気にいらなかった。今誰見てもあんたの方があたしより劣っているに見えるだろう」

私たちは地面にひざまずき、何時間も彼らから与えられた暴力と侮辱を耐えた。

私は完全に呆然として何も考えられなかった。母は体力が尽きて気を失った。

叔父は一枚の紙を取り出し、母の指を地面に滴った血につけ、紙に拇印させた。

そのキレイで折れ跡ひとつもない紙が、私たちを押しつぶす最後の一撃となった。

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