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第0393話

綿が自宅でスキンケアをしていると、下の階から天河の怒りの声が響いてきた。「あの高杉輝明がまたやらかした!夜中に森川真一の貨物を差し押さえやがった!」

綿は部屋のドアを開けて、二階の手すり越しに下で怒っている天河を見つめた。

「森川真一の貨物とパパに何の関係があるの?」綿は天河に尋ねた。

天河は顔を上げて、不満げに答えた。「今は関係ないが、俺たちはもうすぐ真一と協力するんだ。森川グループに問題が起きれば、桜井グループにも影響が出るかもしれないだろう?

「普段は海のことには関与しない高杉輝明が、どうして今回は動いたんだ?」天河はイライラしながら言った。

綿は唇を引き結び、手すりに手をついて考え込んだ。

「それにもう一つ、俺はまだ文句を言いたいんだが、どうやら高杉輝明はルイスを怒らせたらしい。それでルイスが俺たちとの取引を断っただけでなく、ルイスに接触することさえ禁じられている」

この話を聞いた綿の目が一瞬鋭くなった。「パパ、ルイスは危険な人間よ」

「ビジネスの世界に善良な人間なんていない。お前はルイスに会ったこともないのに、どうしてそんなことが分かるんだ?」天河は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

だが、言い終えた後、天河も冷静さを取り戻し、ため息をついてソファに腰を下ろし、お茶を一口飲んだ。

確かに、輝明がそうしたのには彼なりの理由があるんだろう。

「森川真一が来るなり高杉輝明と衝突しているような人間と、本当に協力する価値があるの?」綿は天河に問いかけた。

天河は眉をひそめ、娘をじっと見つめた。

綿は続けた。「パパ、テニスをしている時に高杉輝明に会ったの。彼は森川真一から距離を置けと言っていたわ」

天河は困惑した表情を浮かべた。

「二人はそんなに親しいのか?」

「分からないわ」綿は首を振った。「でも輝明の顔は真剣だった」

「確かに、森川真一という人物は怪しい。今までほとんど耳にしなかった名前だ」天河はさらに眉をひそめ、表情が一層厳しくなった。

「気をつけておくよ。ありがとう、娘よ」天河は手を振り、綿に休むよう促した。

綿は微笑んで言った。「パパ、もし何かあったら、ママを心配させたくないから、私に話してくれればいいのよ。私が手伝うわ」

「お前こそ、自分のことをしっかりやれ」天河は苦笑いを浮かべた。

綿は軽く笑って部屋に戻った。

……

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