第331話 身分反転

「彼女の話を聞かないで、全部嘘だよ」

部下はすぐに弁解した。

すると、悠生が駆けつけて、三井鈴の前に立って心配そうに言った。「女神、君は大丈夫？」

三井鈴は肩をすくめて、平然と「大丈夫だよ」と答えた。

でも悠生は録音を聞いてしまったから、みんなの前で「三井さんは俺が招待したVIPなんだから、好き勝手に侮辱するな！」と言った。

この言葉を聞いて、周りの人たちは黙って立ち去った。

美和は呆然としていた。

悠生が三井鈴に対してこんなに丁寧に接するなんて、心の中でちょっと驚いていた。

彼女は目をぱちぱちさせて、すぐに笑顔に変えて近づいた。「鈴木さん、私は清水電器の清水美和です。お会いできて嬉しいです......」

美和は媚びるような態度で積極的にアプローチしたが、悠生はまったく無視して、部下の方を見た。

「お前がさっき三井鈴を侮辱したのか？」

部下は驚いて、何が起こったのか理解できず、悠生はそのまま警備員を呼んだ。「こいつを追い出せ！」

警備員はすぐに前に出て、ためらうことなく部下を追い出した。

それが終わると、悠生は三井鈴を連れて会場に入った。美和は呆然とその場に立っていた。

彼女は三井鈴の正体がますます気になってきた。

三井鈴が会場に入ると、たくさんの人の目を引きつけた。周りの人たちは進んで彼女に好意を示し、三井鈴は礼儀正しく一人一人に応えた。

美和はその光景を見て、心の中が複雑な気持ちになった。

ちょうどその時、陽翔が入場した。美和の目はすぐに彼に引き寄せられ、彼女は急いで服やメイクをチェックした。問題がなさそうだったので、陽翔の方に歩いていった。

「三井様、私は清水電器の清水美和でございます。まさか今日ここでお会いできるとは、誠に光栄に存じます。」

そう言いながら、美和は陽翔に手を差し出した。

彼女の笑顔を見た陽翔は、まったく表情を変えなかった。

何の反応もなかった。

自分の手が空中で固まっているのを見て、美和は少し気まずくなった。

彼女は続けて言った。「三井様、今日はご友人をお連れではないのですか？ご一緒に回りませんか？」

この言葉を聞いて、陽翔は冷たく拒否した。「いいえ、清水様」

彼の視線は遠くの三井鈴に向かって、「清水様、失礼いたします」と言って、そのまま三井鈴の方に歩いていった。

みんなバカじゃない。

陽