第162章 心の奥底にひそむ不安

田中仁は、菅原麗の意図を一瞬で理解し、三井鈴が彼に対して微妙な距離感を持っていることを感じ取った。

そう考えると、道は遠く険しいな。

「そういえば、鈴ちゃん。君がデザインにとても興味を持っていることは知っているよ。浜白大学デザイン学院の教授、熊谷湊斗は僕の同級生なんだ。数日後、浜白でデザイン展を開催するから、僕の代わりに君と田中仁で行ってみてくれないかな」

三井鈴は口元に浅い梨のようなえくぼを浮かべ、興味津々で答えた。

「いいですね！こんな機会に学べるのは素晴らしいです」

菅原麗は心の中で喜び、田中仁に目を向けた。彼も理解し、菅原麗が二人にチャンスを作ってくれていることを感じ取った。

「うん、じゃあ一緒に行こう」

菅原麗は満足そうに頷いた。

「よし、二人が一緒なら安心だ。ただし、田中仁、鈴ちゃんのことをしっかり面倒見てね」

「お義母さん、安心してください。仁兄はこんなに優しい男だから、必ず鈴ちゃんを大切にします」

三井鈴が話を合わせて場を和ませた。菅原麗は二人の親密な様子を見て、笑顔が止まらなかった。

……

熊谷湊斗は浜白大学デザイン学院の服装デザインの著名な教授で、数十年にわたり教鞭を執ってきた。彼の作品は国内外で多くの専門的な賞を受賞しており、地元で非常に高い権威を持っている。そのため、このデザイン展には多くの業界関係者や一般の人々が訪れることになった。

「遥、君のデザイン作品は熊谷教授に提出した？」入口で、小泉由香里が安田遥に尋ねた。「君はもう二年生だから、熊谷教授の大学院を目指すなら、早めに行動しないと、後で後悔することになるよ」

安田遥は小泉由香里のこうしたお節介に不満を感じ、冷たい口調で答えた。「作品はとっくに提出したから、心配しないで！私のデザインには自信があるし、熊谷教授の大学院に合格するのは時間の問題よ」

小泉由香里はやっと安心した。「それなら良かった。一緒に熊谷教授に会ったら、しっかりアピールして、早めに内定をもらえるように頑張りなさい。四年生になったらそのまま大学院に進めるから」

「わかってる」

母娘はそれぞれの思惑を抱えながら、ホールに入っていった。

安田遥は周囲を見回し、熊谷教授の姿を探していたが、何も見つからなかった。その時、彼女の視線が何かに引っかかり、突然止まった。

「三井鈴、彼女がどうしてここに