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第460話

星野は明日入社する。

帰り際、里香は彼をエレベーターの前まで送って行き、笑顔で言った。「おめでとう!」

星野は少し照れたように笑い、「いや、小松さんのおかげだよ。もし小松さんじゃなかったら、好きな仕事を続ける決心なんてつかなかった」と答えた。

里香は言った。「私はただ選択肢を与えただけよ。結果は君が選んだものだから、私に感謝しなくてもいいよ」

星野はスマホを取り出し、「友だち登録してもいいかな?これから同僚になるから、何かあったらすぐ連絡できるし」と言った。

「もちろん!」里香は頷き、スマホを取り出して彼に自分のQRコードを見せた。

二人が友だち登録を終えると、ちょうどエレベーターが到着し、星野は中に入り、手を振って別れを告げた。

里香がオフィスに戻ると、聡が彼女のデスクに寄りかかり、にやにやしながら彼女を見ていた。「どういうこと?」

里香は不思議そうに彼を見返した。「なにがどういうこと?」

聡はあごでエレベーターの方を指し、星野のことを示しながら「彼と......?」と言った。

里香は苦笑しながら、「そんなことないよ。ただの友だちだよ」と答えた。

聡はほっとしたように息をつき、すぐに言った。「彼、才能はなかなかいいと思うよ。君の友だちなら、君が面倒みてあげなよ」

里香は頷いた。「もちろん、そうするつもり」

元々、それは彼女も考えていたことだった。

夜、仕事が終わり。里香はわざと残業して、夜の9時半まで働いた。外に出ると、空はもう真っ暗だった。

彼女が道端でタクシーを拾おうとしていたその時、聞き覚えのある声が響いた。

「里香さん!」

振り返ると、少し離れたところで笑顔の星野が彼女に向かって歩いてきていた。「これ、どうぞ」と星野は小さな箱を彼女に差し出し、明るく笑った。

里香は不思議そうに聞いた。「これ、何?」

星野は少し恥ずかしそうに鼻をこすりながら言った。「こんなに助けてもらって、何を返せばいいか分からなくて。女の子は甘いものが好きでしょ?だから、ケーキを買ったんだ。ちょっと小さいけど、気にしないでね。いつかお金を貯めたら、もっと大きくて美味しいケーキを奢るからさ!」

里香は彼を見て、苦笑した。「だから、お礼なんていいって言ったでしょ。これは君の実力で手に入れたものだよ」

それでも星野は固くケーキを差し出し続け、「里香さん
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