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第20話

last update 최신 업데이트: 2025-03-26 15:56:24

「梶間さん、転校してきて1週間になるけど、学校には慣れた?」

「うん。少しずつだけど」

まだ一度も話せていないクラスメイトもいるけど、柚子ちゃんが一緒にいてくれるおかげでほんと助かってる。

「あのさ、俺らこれから何人かでカラオケに行くんだけど。良かったら、梶間さんも一緒に行かない?」

「カラオケ……」

そういえば、今朝家を出るとき橙子さんに、『なるべく早く帰ってきて』って言われたな。

「えっと、私はちょっと……」

「あたし、梶間さんと話してみたいって思ってたんだよね」

断ろうとした私に、今度は三上(みかみ)さんが声をかけてきた。三上さんは美人で優しくて、いつもクラスの中心にいる女の子。

まさかそんな子に、話してみたいと思われていたなんて……!

「まだ話してないヤツもいるんだろ?円山さんも誘って、梶間さんのために1週間遅れの親睦会やろうよ」

「っ」

『梶間さんのため』なんて言われたら、断るのは悪いかな?クラスメイトにこうして声をかけてもらえると、正直やっぱり嬉しい。

それに、この機会に私も三上さんたちと話してみたいし……少しくらいなら、参加しても良いかな?

「それじゃあ、ちょっとだけ……」

「よし。じゃあ、さっそく行こうぜ」

こうして私は急遽、畑野くんたちとカラオケに行くことになった。︎︎︎︎︎︎

**

柚子ちゃんを含めたクラスの男女何人かで、駅前のカラオケにやって来た。

「それじゃあ、俺から歌いまーす!」

教室で私に最初に声をかけてくれた畑野くんが、一番に曲を入れて歌い始める。彼が歌うのは、カラオケの定番のアップテンポな曲。

カラオケって久しぶりに来たけど、人が歌うのをただ聴いているだけでも楽しいよね。

「よっしゃ!やったぞー!」

歌が上手い畑野くんは見事、96点を叩き出したらしく、ガッツポーズしている。

わあ。畑野くん、すごい……!

「次は、わたしの番ね!」

隣に座る柚子ちゃんが、マイクを手にする。

柚子ちゃんが歌うのは、彼女が小学生の頃から好きな女性アーティストの曲。柚子ちゃん、今もまだあのアーティスト好きだったんだ。

私が柚子ちゃんの歌声を聴きながら、オレンジジュースを啜っていると。

「梶間さん、楽しんでる?」

空いていた私の隣に、ひとりの男子が座った。

無造作にセットされた、金色の髪。ヘーゼル色の目をした、二重のハーフ顔。ネクタイはゆるく結ばれており、ブレ
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    「ねえ。ここに写ってる女の子って……梶間さんでしょ?」 確信したように尋ねる陣内くんに、私は戸惑ってしまう。 「ええっと……」 そもそも、掲示板に貼られていた写真と全く同じものを、どうして陣内くんが持ってるの!? 「ち、違うよ」 私は、どうにか平静を装って答える。 藍との関係は、学校では秘密だから。『はい、そうです』だなんて、さすがに言えない。 「久住くんと私は、知り合いじゃないし。人違いなんじゃ……?」 「またまた〜。嘘ついたってダメだよ。俺、見てたんだから」 見てた? 「ほら。これ、よく撮れてるでしょ?」 恐る恐る、私は陣内くんが見せてきたスマホを覗き込む。直後、心臓が凍りついた。 そこには、ハグをしながら見つめ合う私と藍の横顔が、はっきりと写っていたから。 う、うそ。信じたくはなかったけど、あの掲示板の写真の犯人は……陣内くんだったの?! 「ど、どうしてこんなことを……?」 陣内くんに尋ねる声が震える。 「どうしてって、ムカつくからだよ」 「え?」 「俺が梶間さんを抱き寄せたときは、あんなに嫌がったくせに。久住とは、こんな嬉しそうに抱き合って……っ!」 陣内くんがスマホを思いきり机に叩きつけ、肩がビクッと跳ねた。こ、怖いよ陣内くん……。 「親睦会のカラオケのとき、俺の前で梶間さんのことを連れ去ったのも、久住なんでしょう?女嫌いで有名な久住と、こんなに仲良くしちゃって。君たち、やっぱり付き合ってんの?」 「ち、違う。藍は、私の幼なじみで……」 陣内くんの顔が、こちらにグイッと近づく。 「なあ、梶間さん……この写真、学校のみんなに拡散されたら困るよな?」 どこから出してるんだって思うくらい、普段よりも低い声にゾクリとする。 「じ、陣内くん。もしかして私のこと、脅してる?」 「はははっ。脅しだなんて、そんな人聞きの悪いこと言わないでよ〜」 何がおかしいのか、陣内くんは思いきり手を叩いて大声で笑い出す。 そのせいで、教室にいる複数のクラスメイトが、一斉にこちらを振り向いてしまった。 「ちょっと。陣内くん、声が大きいっ!」 「俺は別に、この話がみんなに聞こえても問題ないけどー?」 ギリッと、奥歯を噛む。 「陣内くん……こんなことをして、一体何が目的なの?」 「やだなぁ。そんな怖い顔で、睨まないでよ。せっ

  • 芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています   第49話

    数日後の朝。 「あっ!萌果ちゃん、おはよう」 「おはよう、柚子ちゃん」 登校すると、昇降口のところで柚子ちゃんとバッタリ会った。 「教室まで、一緒に行こ〜」 「うん」 柚子ちゃんと一緒に廊下を歩いていると、途中にある掲示板の前には人だかりができていた。 みんな集まって、どうしたんだろう? 何となく気になって、掲示板の近くまで行ってみると。 ……え? そこにあるものを見た瞬間、私の背筋が凍った。 う、うそでしょ……。 掲示板には、私が藍と抱きしめ合っている写真が数枚、無造作に貼られていたのだった。 だっ、誰がこんなことを!? 掲示板の写真の私はどれも後ろ姿ばかりだから、かろうじて顔は写っていないけど……藍の顔は、どれもハッキリと写ってしまっている。 「ちょっと、誰よこの女。久住くんに抱きついて」 「芸能科のモデルの子とかならまだしも、もし普通科の一般人だったら許せない!」 「ていうか、この子を見つけてとっ捕まえてやるわ!」 藍のファンの子なのだろうか。掲示板を見ている女の子たちの口から、恐ろしい言葉が飛びかっていて、私は震えあがる。 「あっ、萌果ちゃん!?」 「ごめん、柚子ちゃん。私、ちょっと急ぐから」 怖くなった私は、慌ててその場から走りだす。 まさか、この間の数学の補習のときに教室で藍を抱きしめていたところを、誰かに見られたうえに、盗撮されてたなんて。 どうしよう。あのとき私が、藍を抱きしめたせいで……! 「はぁ、はぁ……っ」 私は廊下の途中で立ち止まり、呼吸を整える。 そして、スクールバッグの内ポケットに入っていたヘアゴムを取り出し、慌てて髪をひとつに束ねた。 別に、悪いことをしたわけじゃないけど。 ファンの子たちのあんな言葉を聞いたら、急に怖くなってしまって。あの写真に写っているのが、自分だとバレたくないと思ってしまった。 「かーじまさん!」 教室に着き、私が自分の席に座っていると、いつものように陣内くんが話しかけてきた。 「おっはよーう」 「お、おはよう……」 陣内くん、今日も朝からテンション高いなぁ。 「……あれ?梶間さん、今日は何か元気なくない?」 「そ、そう?」 「それに、今日は髪ひとつに結んでるんだ?可愛い〜。でも、なんで?」 さっそく陣内くんに尋ねられ、ドキリとする。 「

  • 芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています   第48話

    「芸能人じゃなかったら……とか、そんなこと言わないで」藍の話を聞いていたら、なぜか無性に抱きしめたくなってしまった。︎︎︎︎︎︎「私は福岡に住んでた頃、藍がモデルとして頑張っているのを見て、自分も頑張ろうって思ってた。離れてても藍が活躍してると思うと嬉しかったし、雑誌の藍の笑顔を見てると元気をもらえた」月並みなことしか言えないけど、本当にそうだったから。「福岡の学校でも藍のファンの子は、沢山いたんだよ?友達で、“今日は藍くんの雑誌の発売日だから、学校頑張ろう”って言ってる子もいたし」こんなこと、藍には初めて話したけど。話しだしたら、言葉が次から次へと溢れて止まらない。「藍には多くのファンの子たちがいて、藍の存在がその子たちのことを笑顔にしてる。それって、すごいことだよ。きっと、誰にでもできることじゃない」「萌果ちゃん……」「私も中学生の頃からずっと、モデル・久住藍のファンのひとりだから。もちろん、幼なじみの藍のことも好きだけどね」「……ありがとう」藍が私の背中に腕をまわし、抱きしめ返してくれる。「最初は、モデルとして売れて、九州にいる萌果の目にも入ることがあったら良いなって思って始めた仕事だったけど……今は、この仕事が楽しいって思ってる自分もいるんだ」「うん」「最初のハグの話から、少しそれちゃったけど。俺、萌果にファンだって言ってもらえて嬉しかった。あと、俺のことを好きだって言ってくれたしね?」ニヤニヤ顔の藍に言われ、カッと頬が熱くなった。「あっ、あれは……あくまでも、幼なじみとしてって意味で……っ!」「いいよ。どんな意味でも、萌果に好いてもらえていたら、俺はそれで良い」藍が、こつんと額を当てる。「ありがとう、萌果ちゃん。おかげで元気出た。やっぱり俺の元気の源は、今も昔も変わらず萌果ちゃんだよ」おでこをつけたまま、藍がニコッと笑う。そして、彼に再び力強く抱きしめられた。「俺、これからもモデルの仕事頑張るよ。萌果や、俺のことを応援してくれているファンの子たちのためにも」「……うん。応援してる」ここが学校であることも忘れ、私も藍をめいっぱい抱きしめ返す。「ねぇ、萌果ちゃん。近いうちに、仕事で1日休みがもらえそうなんだけど……良かったら、ふたりでどこか出かけない?」「ふたりで?」「うん。俺、萌果ちゃんとデートがしたい」

  • 芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています   第47話

    「……ていうか、萌果ちゃんって補習になるくらいバカだったっけ?」ふたりきりになった途端、藍が話しかけてきた。開口一番に人のことをバカって!「す、数学は特別苦手で……って。いま補習になってるんだから、藍も一緒じゃない!」「俺は仕事で学校を早退して、テストを受けられなかったから。その代わりに、補習になっただけ。萌果と一緒にしないでよ」ムッ。まるで、バカな萌果と自分は違うって言われたみたいでカチンと来た。「萌果ちゃん、昔は俺によく勉強も教えてくれてたのになぁ」「そ、そんなことより!プリント、早く解こうよ」私はシャーペンを手に、藍より先に問題を解き始めたものの……。「……できた」「えっ、もう!?」私が応用問題を解くのに苦労しているうちに、藍はプリントを早々と終えてしまった。「す、すごいね」藍とは、今は同じ学校でも学科が違うから。再会してからは、一緒に授業を受けることがなくて知らなかったけど。藍ったら、会わない間に勉強もできるようになっていたなんて。普通の高校生と違って、藍はモデルの仕事もあるから。たぶん、見えないところで相当努力してるんだろうなって思った。よし。私も、負けていられない。それから気合いを入れ直して、シャーペンを走らせる私だけど。ダメだ。全然集中できない……。なぜならプリントに取り組む私を、藍が飽きもせずにじっと見てくるから。「ちょっと。藍ってば、見すぎ!おかげで集中できないよ。プリントが終わったら帰っていいって、先生が言ってたから。藍、早く家に帰ったら?」「……帰らないよ」「え、なんで??」「なんでって……そんなの、好きな子と少しでも長く一緒にいたいからに決まってるでしょ?」す、好きな子って!ここは学校なのに、藍ったら恥ずかしげもなくまたそんなことを言って……。「ほら、俺が教えてあげるから。さっさと続きやるよ」それから藍は、すごく丁寧に教えてくれた。教え方まで上手だなんて……。「あ、できたかも」藍に教えてもらったとおりにやったら、できなかった問題がすらすら解けた。「正解。やっぱり萌果ちゃんは、やればできる子だね」藍が、私の頭をぽんぽんと撫でてくる。「ありがとう。藍のおかげだよ」「萌果ちゃん、俺に感謝してる?」「もちろん」「だったら……お礼に何かちょうだい?」え!?「何かちょうだいって

  • 芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています   第46話

    「……っ、お願い。陣内くん、はなしてっ!」 私は藍がこちらに来る前に自分の肩に置かれた陣内くんの手を取ると、その手を力ずくでどうにかおろした。 「何だよ。そんな、あからさまに嫌そうな顔しなくてもいいじゃんか〜」 「ご、ごめん。いきなりで、びっくりしちゃって……」 「ちょっとちょっと!陣内もいい加減、萌果ちゃんをからかうのはよしなさいよ!」 見かねたのか、柚子ちゃんが私たちの間に割って入ってくれた。 「別に俺は、梶間さんのことをからかってるつもりは……」 「嫌がってたでしょう!?萌果ちゃん、陣内のことは放っておいて、早く行こう」 「う、うん」 私は柚子ちゃんに手を引かれ、その場から歩き出す。 はぁ。柚子ちゃんのお陰で助かった……。 ** 「それでは、先週の小テストを返すから。名前を呼ばれたら、取りに来るように」 昼休み後。5限目の数学の授業では、先週実施された小テストの答案が返却された。 「うわ、39点……」 数学が苦手な私は、お世辞にも良いとは言えない点数だった。 「40点以下の人は放課後、補習をするからなー」 「えっ、補習!?」 わずかにあと1点足りなかったことが、悔やまれる。 「萌果ちゃん、頑張って!」 私の声が聞こえたのか、隣の席の柚子ちゃんが声をかけてくれる。 うう。柚子ちゃんに、私の点数が40点以下だとバレてしまった。 頬に熱が集まるのを感じながら、私は柚子ちゃんに頷くのだった。 ** そして放課後。帰りのホームルームが終わると、私は数学の先生に言われていた補習を受けるため、指定された教室に向かった。 ──コンコン。 「失礼します」 ノックをして教室に入ると、そこにはなんと数学の先生の他に藍もいた。 「えっと。あの、先生……どうして藍……久住くんがここに?」 「決まってるだろう。久住も梶間と同じ、補習だよ」 いや、それはもちろん分かっているのですが。 普段、普通科の生徒と芸能科の生徒が、こうして授業や補習が一緒になることはほぼないって柚子ちゃんから聞いていたから……ちょっとびっくり。 「まあ、今回は補習になった者が学年で君たち二人だけだったから。特別に一緒というわけだ」 「特別に……ですか」 「ああ。梶間も早く座りなさい

  • 芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています   第45話

    数日後の昼休み。今日は柚子ちゃんがお弁当を忘れたというので、私は柚子ちゃんと一緒に学食へと向かって歩いていた。「ごめんね、萌果ちゃん。付き合わせちゃって」「ううん。気にしないで」私はいつも通り、橙子さんの手作り弁当。だけど、転校してきてから学食は一度も行ったことがなかったから。どんなところか楽しみ。学校の廊下を歩いていると、1階の窓から中庭で藍と女の子が向かい合って立っているのが見えた。藍、もしかして告白でもされてるのかな?ていうかあの子、最近朝ドラに出てた女優さんだ。そんな子にまで声をかけられるなんて、藍はすごいな。なんとなく気になって、私はつい足を止めてしまう。「あの……私、久住くんのことが好きです」「悪いけど、俺は君のこと好きじゃない」藍に冷たく言われ、目を潤ませる女の子。「どうしても、私じゃダメですか?」「うん。どうしてもダメ。そもそも俺、事務所から恋愛は禁止されてるから」藍は、無表情で言い放つ。「うわあ。久住くん、あんな可愛い子を振るなんて。相変わらずだね」「う、うん」藍、告白断ったんだ。良かった……って、何を安心してるの私!あの子は藍に振られたんだから、ちっとも良くないのに。良かったって思うとか、いくら何でも失礼すぎる。「なになに?めっちゃ真剣な顔で、人の告白現場なんか見ちゃってー」「ひっ」後ろから突然だれかに腰に手を添えられ、背筋に冷たいものが走った。私に、こんなことをする人は……。「梶間さんって、意外と悪趣味なんだね?」振り返ってみると、背後に立っていたのは予想通り陣内くん。「ち、違……」「あんな食い入るように見るなんて。もしかして、梶間さんって……久住藍のことが好きなの?」陣内くんに尋ねられ、私の心臓が跳ねる。「や、やだなあ。私はただ、かっこいいなと思って久住くんを見てただけで……別に好きとかじゃないから」慌てて否定する。「そうなの?この前、彼氏はいないって言ってたけど。それじゃあ梶間さん、今は特に好きな人とかもいないんだ?」「う、うん。いないよ」好きな人がいないっていうのは、本当。何も、嘘をついてることはないのに。どうして、こんな後ろめたさを感じるんだろう。「好きな人がいないのなら、良かった。もしも梶間さんに、あーんなイケメンモデルが好きだなんて言われたら、俺に勝ち目なんてないもん

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