第89話

「伊吹さん、君」

青木麻央は唖然として、相手がこんな大胆な行動を取るとは思わなかった。

伊吹嵐は「シーッ」という動作をして、

「誤解しないでください。私はただ、自分のものを他人に共有されたくないだけだ」

青木麻央はそれを聞いて、すぐに歯を食いしばった。

「やっぱり男なんてろくなものじゃない！ただ犬が噛み合っている」

伊吹嵐は心から笑った。

実際に、彼は以前からこれらの人々と居直りしたかったのだが、戦いを始める合理的な理由が思いつかなかった。

結果として、青木麻央が現れた。

ちょうど彼女をエスコートして、この一団をひっくり返すいい機会だ。

「くそ！好意を無駄にするんだな」

とはいえ、出雲正実もむかっとして、その場でワイングラスを投げつけて、

「こいつの舌を切り取って、ここで犬のように吠えさせろ」

西坂和夫は顔色を変え、速やかに前に立ちふさがって、

「出雲さん、あなたが先輩だと敬っていますが、もしあなたが伊吹さんに手を出すなら、それは私に宣戦布告することになります」

「西坂さん、バカにしすぎじゃないか？」

出雲正実は腕を一抱えにし、その場でシャツが張り裂け、恐ろしいキリン腕を現した。

「もし当時僕が争いに飽きていなかったら、あんたみたいな雑魚がこの地位に上がれるわけがないと思うか？」

「まだ僕を脅かしに来るとは、身の程を知らず」

「それでは今日、誰が函館市の真の地下組織の主宰者か、見てみようじゃないか」と西坂和夫は恐れることなく、両拳を固く握って言った。

それから、両腿を一押し、ロケットのように飛び出し、出雲正実に激突した。

その結果、出雲正実は無事で、嘲笑の笑みを浮かべて言った。

「お前が地下皇帝なら、俺は太上皇だ」

手ぶらで西坂和夫の両腕をこじ開け、胸に向かって強烈なパンチを放った！

プット

西坂和夫はその場で鮮血を吐き出し、胸の肋骨がすべて折れ、その場に跪いて言った。

「外勁の大円満！いつからこんなにレベルが上がったんだ」

「もちろんここに来たおかげだよ。そうでなければ、どうして隠退したくなると思うか」

出雲正実は大笑いした。

「会長」西坂和夫の手下も怒りに燃え、飛びかかって出雲正実を攻撃しようとした。

出雲正実は動じることなく、ワイングラスの破片を拾い上げ、半空に向かって横に振り払い、すぐに三日月形の刃