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完結編・・・第一章3

Penulis: ひなの琴莉
last update Terakhir Diperbarui: 2025-03-21 22:51:20

仕事を終えて外に出ると、とっても寒くて、体を縮こませた。

年は明けているけど、春はまだ遠い気がする。春ってなかなか来ないんだよね。待ち遠しい。

電車に揺られて、自宅に帰る。この普通の日常が私にとってはありがたい。赤坂さんが助けてくれたからこそ、こうして生きていられる。

私は、ふとスマホのカレンダーを見た。

来月は美羽さんと紫藤さんの結婚パーティーがあるんだった。

こぢんまりとやると言っていたけど、その中に招待してもらえたので嬉しい。

美羽さんのこと、大好きだし。

赤ちゃん、順調に育っているのかな……。

過去にいろいろあったみたいだから今度こそは絶対に健康で生まれてきてほしいと私も陰ながら願っていた。

「ただいま」

家に帰ると、お母さんが作ってくれた夕ご飯の美味しい匂いが漂っている。

「お帰り」

早く、赤坂さんとのことを言わなきゃと思うけど、緊張してしまう。

手を洗ってうがいをしていると、お父さんも珍しく早く帰ってきた。

両親が二人揃っているので、赤坂さんに会ってほしいというには、いいチャンスかもしれない。ダイニングテーブルについて、食事をはじめる。

今日は、お母さんお手製のオムライスとサラダとコーンスープが並んでいた。大好物ばかりなのに緊張して落ち着かない。

「今日は仕事どうだった?」

……赤坂さんとのこと、言わなきゃ。言わなきゃ。言わなきゃ。

「久実!」

「あ、な、なに?」

お母さんの問いかけに驚いて顔を弾かれたように上げる。

「なんか、変よ」

「そ、そうかな……」

笑ってごまかすがお父さんも不思議そうに覗き込んでくる。これは、チャンスと受け止めるしかない。

「お父さん、お母さん。わ、私ね、赤坂さんと結婚したいの」

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