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第4話

私は気にも留めずに肩をすくめた。

「もちろん、中絶手術よ」

私があまりにも軽く言うので、健太の目は赤くなり始めた。

彼は必死に感情を抑え、冷静を保とうとしていた。

でも口を開くと、声にはどうしても痛みが滲んでいた。

「美咲、僕たちの子供を堕ろしたのか、なぜだ?」

その時、私は彼をまるでバカを見るような目で見た。

「なぜって?健太、あんたは消防士でしょう。あの煙の中にどれだけ有毒ガスがあるか知らないはずないでしょ」

「私、妊娠してるって言ったのに、あんたは防毒マスクを綾乃に渡した。今さらなぜって聞くなんて、とぼけてるの?」

もう彼の顔を見たくなかった。もう一秒でも吐き気がする。

健太は震える手で私を抱こうとしたが、ずっと黙っていた綾乃が突然額に手を当て、ふらりと倒れた。

まさに健太の腕の中に。

私に伸ばしていた手を急に引っ込めて、彼女を支えた。

綾乃は弱々しく私を見て、少し申し訳なさそうに口を開いた。

「美咲、ごめんなさい。わざとあなたたち家族の再会を邪魔するつもりはなかったの。ただ、ちょっと目眩がして」

「健太も知ってるけど、私、ずっと体が弱いから」

私は彼女の演技を静かに見つめ、微笑んでうなずいて理解を示した。

その後、後ろで健太父子が焦って呼ぶ声を無視して、一郎を連れて振り返らずに去った。

廊下で健太父子に会って以来、彼らは私に関心を示し始めた。

三日に一度は病室に来るし、一郎に対する態度もかなり和らいだ。

離婚前に揉めたくなかったので、私は止めずに、ただ彼らに淡々と接した。

むしろ一郎は、彼らが来るたびに顔を曇らせた。

彼らが去るまで、ずっとそうで、やっと元の可愛い姿に戻る。

その日、彼が私に聞いた。

「ママ、僕、翔太と友達になりたくないんだけど、いい?」

私は少しおかしくなって彼を見た。

「もちろんいいわよ。でもどうしてそんなに彼を嫌うの?」

彼くらいの年齢なら、同年代の子と遊ぶのが好きだと思ってた。

「だって、彼はあなたを傷つけたから!」

彼は拳を握りしめ、悔しそうな顔をしていた。

「もし俺の母さんだったら、絶対に危ない目には遭わせないよ」

「それにさ......」

彼は顔を上げて、痛ましそうな目で私を見た。

「俺、わかるんだ。あなたが彼に会うたびに、全然嬉しくなさそうだって」

「でも、彼
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