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第2話

その穏やかな日々も長くは続かなかった。が険しい表情でやって来たのだ。

「維、君みたいな図々しい奴が、こんな病気にかかるとはな」

彼がなぜ私に対してこんな理不尽な憎悪を抱いているのか、未だにわからない。

けれど、そんなことはもうどうでもよかった。

「世の中、あんたの想像を超えたことなんて山ほどあるのよ。まるで、私が目を曇らせてあんたを好きになったのと同じようにね。何も用がないなら、さっさと出て行ってドアを閉めて」

実際、私は幼い頃から「特別」に康之を甘やかしていた。

彼はそれで自分が何でも私にしていいと思い上がっているのだ。

予想外にも、彼は怒り出さず、ただ長い間私を見つめて、不思議なことを言い出した。

「だから、君は後悔しているのか?」

私は少し詰まってから、乾いた笑いを漏らした。

「そうよ、康之。私は後悔してる。あんたを好きになったことも、一生愛するとか言った馬鹿な約束もね」

「だから今、あなたを自由にしてあげる。そして、私の愛も返してもらうよ。これでお互い様よ」

康之の顔には怒りの色が浮かび、目は鋭く私を睨みつけ、今にも私を突き刺しそうなほどだった。

「ふざけるな、維。好きだと言ったのも、今度は要らないと言うのも全部君だ。俺を召し使いとでも思っているのか?」

私は再び笑ったが、その笑いはどこか空虚で無力かった。

どうしてなのか理解できない。あれほど私を嫌って、できれば消えてほしいと思っていたくせに、今になってこうやって偽善的な態度を取るなんて。

ふと、かつての康之の気持ちが少しだけ理解できた気がした。もし私があれほど憎んでいる人にしつこく付きまとわれたなら、きっと私も同じように冷たい態度をとるだろう。

ため息をつき、私は少し疲れた声で言った。

「お願いだから、私を解放してくれない?」

「嫌だね、維。君が俺を巻き込んだんだから、俺たちは一生繋がっているんだ」

病室に入ってきた時から、彼はどこか様子が違っていた。

以前のように嫌悪を露骨に示すことはなく、代わりに理解しがたい複雑な表情を浮かべていた。

おそらく、私はもう彼に何も期待せず、彼に媚びることもしなくなったので、彼も困惑しているのだろう。

だが、心配する必要はなかった。彼のような気の短い人間なら、何度か私の冷たい態度に遭えば、自然と去っていくだろう。

しかし、予
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