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第0028話

売春。

瑠璃は一度も、自分が体を売るために来たなんて言っていない。だが、蛍はすぐに彼女をそのように決めつけた。

隼人の冷たい瞳に一瞬で氷のような怒りが宿り、まるで地獄からやってきた悪魔のように、今にも彼女を引き裂こうとしていた。

彼女が本当に売春しようとしているとは、想像もしていなかった。

それでいて、彼女は自分が彼だけの女だと主張していた。

本当に下品な女だ。

「瑠璃、私の言うことを聞いて、早く家に帰りなさい。そうでないと、隼人が本気で怒ってしまうわ。そうなったら、私でも止められないわよ」

蛍の柔らかく響く説得は、瑠璃にとってただただ不快でしかなかった。

「家?私にまだ家があると思ってるの?私の家なんて、とっくにあなたみたいな恥知らずの女に奪われたわ」瑠璃は蛍を冷たく見つめ、皮肉な笑みを浮かべた。

蛍の顔が一瞬強ばり、口元が引きつった。しかし、すぐに隼人に悲しげな顔を向けた。

「隼人、瑠璃を責めないで。全ては私のせいなの。あなたを愛してしまったから、これがすべての原因なの」

下手な芝居だったのに、隼人は彼女の言葉を真に受けたようで、優しく彼女を抱きしめた。

「バカ、俺が最初から最後まで好きだったのはお前だけだ。悪いのは、俺にしがみついてきたこの恥知らずな女だ」

「俺が最初から最後まで好きだったのは君だけだ」

この言葉は瑠璃の心をまるで砕くように突き刺さった。

何を言ってるの?

瑠璃の記憶にある男の子は、かつて彼女を背負って夕日の中を歩きながら、「リちゃん、君に会えたことが俺の人生で一番幸せだよ、大好きだ」と言った。

この記憶が心を締め付けると同時に、身体の痛みも一層ひどくなり、彼女の命を蝕んでいる腫瘍が疼き出した。

もうこれ以上、この痛みを耐えたくなかったから、その場を去ろうとしたが、ふらつきながら向きを変えた瞬間、誰かにぶつかってしまった。

その拍子に、彼女の手に持っていた高価なワインボトルが床に落ち、割れる音が響いた。

瑠璃の顔が一瞬で真っ青になった。次の瞬間、誰かが彼女の手首を掴み、無理やり引き寄せた。

「久しぶりだな、瑠璃ちゃん」

男の軽薄な声が響き、瑠璃は体が反射的に硬直した。

顔を上げると、そこにはかつて彼女を不快にさせた陸川辰哉の顔があった。

辰哉は、蛍の昔の男であり、かつて彼女を強引に襲おうとした人物
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