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第0011話

瑠璃は無人の別荘に戻り、隼人から届いた離婚届とメッセージを思い出し、その胸に鋭い痛みが走った。

隼人がここまで自分を嫌悪しているとは、彼女は思いもしなかった。彼があっさりと中絶を求めるなんて、無情すぎるのだ。

瑠璃は恐怖を感じた。もし隼人が本当に中絶を強要してきたら、どうすればいいのだろうか?

その時、玄関から音がして、隼人が帰ってきたのだと気づいた。彼の姿は堂々としていて、冷たく威厳があった。

瑠璃は驚いたが、それ以上に不安と恐怖を感じた。

彼が中絶を強要するのではないかと恐れたが、意外にも隼人は離婚や中絶の話をせず、翌日の母親の50歳の誕生日に妻として同行するようにとだけ言った。

瑠璃はこの知らせに驚きながらも、喜びを感じた。これは、彼が自分を受け入れようとしている兆しなのだろうか?

しかし、その期待はすぐに隼人によって打ち砕かれた。彼の冷たい視線と言葉は、まるで氷の刃のように鋭く、心まで凍らせた。「瑠璃、俺がお前に対して考えを改めることなんてあり得ない。この先、お前のような恥知らずの女を愛することは決してない」

その無情な言葉は、瑠璃の心に深く突き刺さった。

こんな状況が滑稽で仕方なかった。彼女は隼人を見つめ、その清純な顔に少しだけいたずらな笑みを浮かべた。「そうよ、私は恥知らずな女。愛してくれない男を追いかけて、自分を落としているの。でも、隼人様の大切なあの人と比べたら、私の恥知らずなんて大したことないでしょ?」

隼人は、スーツを脱いでいる途中で動きを止め、振り返った。その毅然とした美しい顔には、氷のような怒りが浮かんでいた。「瑠璃、口が過ぎるぞ?」

「私が言っているのは事実よ。隼人、三ヶ月前、どうして私と一緒に寝ていたか分かってる?」

瑠璃は彼の前に歩み寄り、その目に決意を込めて言った。「それは四宮蛍の計画よ!彼女が全てを仕組んだの!」

「彼女は本当はあなたと寝ようとしていたけど、間違えて別の男と寝てしまったの。今、彼女は妊娠しているけど、そのお腹の中の子供があなたの子供かどうかは分からないわ!」

その言葉が落ちると、隼人の表情は一瞬で険しく暗くなった。

彼は手を伸ばし、瑠璃を荒々しく自分の前に引き寄せ、冷たい指で彼女の首を締め上げた。指の関節がじわじわと力を込め、瑠璃は次第に呼吸が困難になっていった。

「本気で俺が信じると思ってるのか?お前みたいな恥知らずの女が、蛍と比べられるなんて思っているのか?」

隼人は冷酷な言葉を吐き捨て、瑠璃を勢いよく突き放した。

自由に呼吸できるようになった瑠璃は、立ち直る間もなく、よろけて腹をベッドの角にぶつけてしまった。

窒息するような痛みが瞬時に襲い、瑠璃はあまりの痛みに冷や汗をかいた。お腹を押さえ、冷酷に背を向けて立ち去ろうとする隼人に助けを求めた。「隼人、痛い……」

隼人は足を止め、冷ややかな目で床に倒れた瑠璃を冷たく見下ろした。「芝居がますます上手くなったな。お前に何かあっても、俺には関係ない」

その言葉ほど、瑠璃の心を深く切り裂くものはなかった。

彼女はそのまま気を失い、目を覚ました時にはすでに翌朝だった。

気絶する前の出来事を思い出し、瑠璃は瞳孔が縮まり、慌ててお腹に手を当てた。

ちょうどその時、女医が病室に入ってきて、瑠璃の様子を見て軽蔑の目を向けた。「四宮さんの子供はしばらく安全ですよ」

瑠璃は身震いし、不安な目で女医を見つめた。「しばらく安全ってどういう意味ですか?」

「つまり、あなたの子宮には腫瘍ができていて、その腫瘍は悪性だということです。だから、子供を堕ろさなければ、命は危ないですよ」

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