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第6話

「申し訳ございません。本日の営業を終わらせていただきます」

観覧車の下、スタッフが訪れた観光客に説明を続けていた。

私は黒崎央河に手を引かれ、個室に座り込んだ。

観覧車はゆっくりと上昇していく。

景色が高くなり、地上の人々が蟻のように小さくなっていく。

「ここを覚えてる?」

突然、彼が沈黙を破った。

いつも冷たい眉と目が、信じられないほど柔らかくなっていた。

ここは私たちが初めてキスをした場所。

五年前、休み時間があるたびに、私は彼をここ近くに散歩に連れて行った。

この観覧車が回るのを見るだけで、心が満たされていた。

黒崎央河は私の目に浮かぶ渇望に気づき、毎回私を乗せようとした。

でも私は、チケットが一枚二千円だと知っていたから、いつも拒否していた。

「手をつないで、ちょっと見上げるだけで満足だよ」

夜空の下、彼はこの観覧車の下で私にキスをし、「必ず一度は連れてくるから」と約束した。

今、またこのドラマチックな瞬間に戻る。

私がずっと黙っていると、黒崎央河の目に失望の色が浮かんだ。

突然、彼は私を引き寄せ、大腿の上に座らせた。

そして低い声でキスをしようとした。

私は抵抗して顔をそむけた。

彼は私の顎を掴み、簡単に私の手を拘束し、優しくキスを重ねてきた。

どれくらいの間キスをしたのかわからない。

私は突然、彼に応えた。

彼は驚き、信じられない目で私を見つめ、喜びの光がその目に宿った。

私の変化を感じて彼は手を緩め、慎重に私の顔を抱きしめ、キスを深めてきた。

私は酔いしれているふりをした。

その時、彼のポケットに車の鍵があることを確認した。

心の中に計画が生まれた。

アパートに帰ると、彼が準備したキャンドルディナーが待っていた。

食事を楽しむ余裕はなく、頭の中は玄関に停まっている高級車でいっぱいだった。

口では時折返事をしながら。

この少しの積極性が、彼を狂喜させるには十分だった。

その晩、私の誘導で彼はたくさんの酒を飲んだ。

彼がベッドで酔い倒れるのを待って、二十分後にこっそりポケットから鍵を取り出し、逃げ出した。

やっと車がスタートした。

前を見ると、そこに無言で立つ影が見えた!

息が止まるほど緊張している。

彼は逆光の中で、表情は見えないが、全身から冷たい雰囲気が漂っているのが感じられた。
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