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第52話

離婚協議書にサインしてから、紗希はまるで別の人になったかのように、ますます理解できなくなってしまった。

ピン──携帯から人気ニュースがポップアップ表示された。「大京市の最優主演男優の新恋愛が露見された!」

拓海は眉をひそめ、そのニュースをクリックして、紗希とある男性の後ろ姿の写真を目にした。彼女はシャンパン色のロングドレスを着ていており、後ろ姿が細く、スカートが軽やかに揺れていた。

彼は指が少し動いた。彼女のスカートが手の甲に触れた時の感触を思い出した。

拓海は喉を動かし、それから水を飲み、数口を飲み込んだ後、裕太を呼び出した。「トップニュースを取り下げろ」

「はい、社長。でも若奥様がどのスタジオに行ったか調べる必要はありますか?」

男は目を少し開けて言った。「「お前、暇なのか?出てけ!」

——

紗希は車で先輩のスタジオに向かった。古い製鉄所を改装したクリエイティブパークで、とてもアート的な雰囲気だった。

彼女がスタジオに入ると、受付嬢が近づいてきた。「応募に来ましたか?」

「まあね。風間先輩はいますか?」

「社長は今外出中だから、あっちで待ってくださいね」

紗希は応接エリアに向かい、そこで彼女を呼び止めた声を聞いた。「紗希?」

自分の名前を呼ばれ、紗希は振り返り、顔を知る人に出会った。それは昨日のコンテストで二位だった奈美だった。

紗希は少し驚いた。「偶然だね」

「確かに偶然だね。でもどうしてここに来たの?」

受付嬢は一杯の水を持ってやってきて、「奈美姉さん、こちらは応募に来たんですよ」と紹介した。

奈美は信じられない表情を浮かべた。「こんな小さなスタジオに応募する必要があるの?大手企業からオファーは受け取らなかったの??」

1位で、しかも亜紗の名声があるのに、こんな小さなスタジオにいるはずがない。

しかも、この女は大京市の最優主演男優とも深い関係をもっていた。

紗希は冷静に答えた。「私は自分の考えがあるから」

奈美は目を凝らして警戒の色を顔に浮かべた。「風間と知り合いなの?」

「うん」

「どういう関係なのか?」

この口調はおかしいな。紗希が答えようとした時、風間が外から戻ってきて、彼女の方に近づいてきた。「紗希、やっと来たんだ」

奈美は疑わしげに口を開いた。「風間、知り合いなの?」

「そう、紗希は私たちの後輩だ
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