第10話

幼稚園の発表会は、賑やかで明るい雰囲気だった。子どもたちはみんな、小さな顔に濃い化粧をしていて、まるでお猿さんみたいだった。でも、コーラちゃんが一番可愛くて愛らしい小猿だと思った。

正木昊瑛と私は並んで立っていて、私は彼にカメラを向けた。コーラちゃんが私に向かって無邪気な笑顔を見せてくれる。

でも、正木昊瑛はずっと黙ったままだった。私は彼に何か話しかけたい気持ちはあったけれど、どうしても言葉が出てこなかった。以前は、どんなくだらないことでも彼に話すのが好きだったのに。

若かった頃は、誰かを自分の思い通りに操るのが、すごいことだと思っていた。でも、今では、それがどれほど空しいことか理解している。

人生で、どれだけ自分のために頭を下げてくれる人と出会えるのだろうか。その尊さは、失って初めて気づく。自分の力ではなく、ただの途方もない幸運だったのだと。

その幸運の代償として、果てしない苦しみと心痛が押し寄せる。それは、どうしようもない現実だった。

「昊瑛」私は彼の名前を呼んだ。

彼は私を見つめ、私が話すのを待っているようだった。

「そんな暗い顔しないで。子どもが見てるんだから、少しくらい取り繕いなよ」

「君が怒ってるのは分かってるよ」彼は突然言った。「あんな風に君を扱うべきじゃなかったし、コーラちゃんが俺の子どもだなんて嘘をつくべきじゃなかった」

私はすぐに話を遮った。

「もういいよ。過ぎたことだし、これで終わりにしよう」

「それは、許してくれたってこと？それとも、もう気にしてないってこと？」彼の声は、楽しげな子どもたちの歌声の中で、妙に浮いて聞こえた。「君が俺を騙したことは許せる。だって、君を気にかけてるから。でも、君はどうなんだ？」

私は一歩後ずさった。

彼の目は少し暗くなり、彼は視線をそらしてもう私を見なかった。

発表会が終わり、コーラが嬉しそうに私の方に走ってきた。正木昊瑛が彼女を抱き上げ、彼女は「みんなで写真撮ろうよ！」とはしゃいだ。

私はスマホを取り出し、正木昊瑛と顔を近づけて写真を撮ろうとした。でも、彼が少し距離を取ったので、私も思わず離れた。

コーラちゃんは私たちを見比べて、小さな顔をしょんぼりさせた。

あぁ、繊細で感受性の強い女の子だ。まるで少し熱を加えただけで、溶けてしまうバニラアイスのように柔らかかった。

仕方なく