共有

第67話

何も知らないということが、最も恐ろしいことだ。

吉田内侍は払子を上げ、首を振って言った。「私にはわかりかねます。ただ勅命に従って行動しているだけです」

「勅命に従って」という一言で、淡嶋親王はそれ以上追及する勇気を失った。天子の威厳の前では、罰も賞と同じなのだ。

吉田内侍が去った後、夫婦は顔を見合わせた。彼らは京都で母妃に仕え、天皇の恩恵で皇太妃も宮を出て淡嶋親王家で共に暮らしている。普段は比較的親密な関係だったはずだ。どうして理由もなく罰せられたのだろうか。

彼らは何もしていない。何もする勇気もなかった。

本当に不思議なことだ。

師走の厳冬、大雪が北條守の大軍の進軍を阻んでいた。

都を出発した時から急いで進んでいたが、予想外の大雪が二日間続き、至る所に積雪があった。寒さは我慢できても、進行速度が大幅に遅れてしまった。

一歩踏み出しては、その足を引き抜くのも一苦労だった。

邪馬台の前線でも雪が降ったが、幸い小雪で済んだ。新兵の訓練はほぼ完了し、新たに募集した兵士は3万人。武器と鎧も塔ノ原城で急ピッチで製作中で、平安京の大軍が到着する前に全て前線に届く見込みだった。

北冥親王がさくらを訪ねてきた。本来なら彼女に都への帰還を厳命するつもりだったが、さくらは既に入隊しており、今都に戻れば脱走兵になると言い張った。上原家から脱走兵は出さない、と。

親王は彼女にどうすることもできず、五人で互いに助け合うよう命じた。一度戦闘が始まれば、武芸を存分に発揮する余地はないだろう。人と人とが入り乱れ、敵味方が入り混じる状況になるのだから。

親王がさくらを訪ねてきた時、あかりは驚いて言った。「この前線の総帥は野人のようだね」

沢村紫乃は淡々と言った。「彼だけじゃないわ。ここの兵士たちはみんな野人みたいよ」

そうだ。邪馬台の戦場で、彼らは三年また三年と過ごしてきた。最初の総帥はさくらの父親で、今は北冥親王の影森玄武だ。

饅頭が言った。「大丈夫だよ。野人は戦いに強いんだ」

陰暦12月23日、小正月の夜、戦争が勃発した。

日向城の門が大きく開かれ、数え切れないほどの羅刹国の兵士たちが殺到してきた。彼らの中には平安京の者もいれば羅刹国の者もいたが、同じ鎧を纏っていて見分けがつかなかった。

初めての戦場で、五人はみな戸惑いを隠せなかった。戦闘は武芸の試合とは全く
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status