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第9話

証拠を示すため、私は多くのデータを提出した。

これらは、私が各種の機械とハッキング技術を使って察佑の知能端末から引き出したものだ。

その中で最も重要な証拠は、察佑には誰も知らない遺伝子の才能があるという事実だった。それは彼が天性の模倣者であり、声や仕草、癖までも完全にコピーできるということだ。人皮マスクを使えば、誰にも気づかれずにその人に成り代わることができるのだ。

翌日、察佑は刑務所に入れられた。彼がどれだけ統治者に対して泣いて忠誠を誓い、命乞いをしても無駄だった。

察佑のスキャンダルが明るみに出ると、統治者の支持を失った傘星グループは、瞬く間に資金繰りが途絶え、危機に瀕した。

メディアは状況に応じて傘星グループの秘密を次々と暴き出した。

かつて七億で売れた絵画も、買い手から返品されてきた。

傘星グループ坊ちゃんが察佑に成り代わられていたことが社会に大波乱を引き起こし、コメント欄の風向きも一変した。

「やっぱり、あの絵、どこかおかしかったんだ。遺伝子が違ったってことか」

「彼を天才とか貴族だとか持ち上げてた奴ら、今どんな気持ちだ?ただの貧乏人だったんだろ」

さらに、この現象に疑問を抱く者も出てきた。

「じゃあ、貧乏人だって才能を発揮できるのか?」

「なんか、社会が言ってたことと違うよな……妙な感じだ。貧乏人は生まれつき金持ちには勝てないって話だったのに、どうしてこの貧乏人は金持ちを模倣できたんだ?」

私は無表情でコメントを流し読みした。

いいだろう。ついに、社会の一部がその異常に気づき始めた。

遺伝子売買は、一気に人気手術ランキングのトップから五十位以下へと転落し、富裕層たちは自分たちが貧乏人に取って代わられるのではないかと恐れ始めた。貧乏人も、これまで社会が提唱してきた「富裕層だけが才能を発揮できる」という理論に、ほころびがあることを認識し始めた。

しかし、まだまだこれでは足りない。
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