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第8話

仲村和人は少し躊躇っていた。

「こっそり流産でもさせるってのはどうだ?」

私は口元に皮肉の笑みを浮かべて言った。

「あなたって本当に……相変わらずのクズ野郎ね」

私は彼に背を向け、涼乃の車に乗り込み、後ろにいる仲村和人を一度も見なかった。

そしてすぐに、大木弁護士が電話をかけてきて私を慰めた。

「離婚協議の第二審で離婚できる確率は7割です。私がどうにかしますから、安心してください」

私はクスリと笑って言った。

「もし一審で離婚成立していれば、仲村和人にとっても良かったんですけどね」

「どういう意味ですか?」

私は何も答えなかった。

もちろん私も反撃の準備をする必要がある。

その日の夜、以前から用意していたPDFファイルを送った。

このファイルの中には、仲村和人が初めて持田芽衣と不倫してから今に至るまでの詳細が記されている。

全部で20ページ。そのほとんどが動かぬ証拠だ!

私はそれをLINEとその他諸々のSNSに公開した。そしてそのPDFファイルは多くのネット民によって拡散され、皆が激烈な議論を展開した。

でも、私もバカではない。私がそれをアップしたのは別にみんなに娯楽を与えるためだけではない。

私がそれをアップする時、わざと一言を添えていた。

「仲村和人の会社と提携関係にある取引先は、今現在私の親友である藤崎涼乃の会社と提携している。私たちは私たちは利益の5パーセントを譲ると宣言する」

涼乃の実家の会社は大企業だ。

利益の5パーセントは前代未聞の事。

たった一時間で、仲村和人と提携関係にあった会社は投資資金を引き揚げて、私に電話をかけてきた。

「神田さん、あなたがSNSにアップした内容は……本当ですか?」

「もちろんです」

この夜、私は提携会社と深夜まで話し合いをした。

寝る前に、涼乃は私の頭をツンツンと指で突っついてきた。

「言っとくけど、今回ばかりは情に流されてはダメよ」

涼乃は他の誰よりもはっきりと分かっていた。仲村和人が二度目に事業を起こしたあの数年、私がどのように彼を支えてきたのかを。

一番一生懸命になっていた時、私は二週間連続で徹夜し、目の周りには濃いクマを作っていた。

そして私が目を覚ました時は病院にいて、看護師から私は三日間も病院で寝ていたと教えられたのだ。

彼女はもっと分かっていた。私とい
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