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第3話

私は五日後の飛行機を予約した。そして、弁護士に子供の親権を必ず取ってくださいとメッセージを送った。

それらを終えると、体を起こして寝室へ行き、ゆっくりと休もうと思った。

仲村和人は私の後ろ姿を見ながら、腹を立てて言った。

「まだ話してるんだぞ、一体どこに行く気だ?」

「寝室に戻って休むだけよ」

私は冷静に彼に向かって目を瞬いた。

寝室に入った瞬間、リビングから物を壊す音が聞こえてきた。

離婚の件は予定通りに進んでいた。

三日後、私が荷物をまとめようとしていた時、突然仲村和人から電話がかかってきた。

「北園のバー、急いで来い」

北園は海沿いで風が強く吹き、産後の体にはあまりよくない。

それを断ろうと思った瞬間、仲村和人からまた何度も何度も来るようにと電話が来た。

私はしっかりと着込んでから、急いで海辺のバーへやってきた時、持田芽衣と仲村和人が親しそうにくっついて座っていた。

彼の悪友たちが私を頭から足の先までじろじろと見つめ、舌打ちをした。

「奥さんは俺達に嘘ついてなかったね。和人の不倫相手ってマジで小太りババアじゃん!」

持田芽衣はワインを一口飲み、私に目線を落とした。

「ごめんなさいね、さっきのトゥルース・オア・デアーは私の負けだわ。彼らに選んでもらった二択、私がバーの歌手なのか、和人が養ってる不倫女を呼び出せるか」

「和人は私が他の男にキスするのは許さないっていうから、あなたを呼び出したの。もう帰っていいわよ」

持田芽衣は見た目では謝っているように見えたが、よくその話を聞いてみれば、その口調からはいくぶんかマウントを取っているのが分かった。

私は眉をひそめて仲村和人を見た。

彼はそわそわした様子で下を向き、一言も話さなかった。

なるほど、彼らには私が世間に顔向けできないような不倫相手に設定されているわけなんだ。

私はあまりの怒りで笑いが込み上げ、口を開こうとした。

持田芽衣は自慢げに顔をあげ、自分の栄光であるかのように、あの高価な金のネックレスを取り出した。

私は数歩前に歩いて行き、手を伸ばしてそのネックレスを掴み、力いっぱい引っ張って引きちぎった。

「このデブ女!なにすんのよ!」

持田芽衣は怒ってネックレスを奪い返そうとした。

私はそのネックレスを鞄の中に入れ、暗い顔をした。

「これは仲村和人が私たち夫婦の共有財産で買ったものよ。だから私が回収して当然でしょ」

私は弁護士に尋ねたのだ。私にはこのアクセサリーセットを受け取る権利があるのだ。

持田芽衣の美しい顔が一瞬にして冷たくなり、陰険な目つきをして言った。

「みんながいる前で堂々と私の物を奪うなんて、警察を呼んでもいいのよ」

「だったら、私が警察に通報してあげようか?」

私は全く怖くなかった。

仲村和人は私が本当にそうするつもりだということを見抜き、私の携帯を奪って眉をひそめた。

「わかったから、もう騒ぐなよ。先に帰ってろ」

私は彼が不安そうにしているのを見て、心が谷底に沈んでいくような感じがした。

仲村和人の悪友たちはどうも様子がおかしいことに気づき、私と持田芽衣の一体どちらが不倫相手なのかと小声で話し合い始めた。

持田芽衣は泣きそうになり、弱々しく可哀想な様子で仲村和人のほうを見た。

「あなた自身が言ったのよ、愛されていないほうが不倫相手だって。早くみんなに言ってよ。神田美咲、この下賤な女こそがあなたの不倫相手なんだって!」

仲村和人は心を痛め、持田芽衣の涙を拭い、私のほうへ顔を向けると冷たい声で私を責めた。

「もういい!神田美咲、毎回お前が出てくると、いっつもこうやって大騒ぎになるんだ!」

彼は持田芽衣の手を取り、周りの人たちのほうを向いた。

「みんな誤解しないでくれ。芽衣が本当の俺の妻なんだ。俺は彼女を心から愛している」

周りの人たちは歓声を上げた。

「和人さん、奥さんにキスしろよ」

仲村和人は全く迷うことなく、持田芽衣の顔に触れ、愛しそうにキスをした。

持田芽衣の美しい顔に恥じらいが浮かんだ。そして、彼女は私のほうに体を向け、挑発するように笑った。

「見たでしょう。あんたのあの結婚証明がなんだっていうの?仲村和人も、彼のお金も、愛も、全てあなたから一つ一つ――奪ってやったのよ」

それを聞き私は容赦なく、持田芽衣の顔に平手打ちをした。

持田芽衣は顔を押さえて、悲しそうに仲村和人のほうを見た。

「あなた、こいつが私をぶったわ」

仲村和人は顔を曇らせ、彼は私のお腹を力いっぱいに蹴った。

帝王切開した時の傷口がそのせいで開き、私は地面に倒れ込んだ。

仲村和人は腰を曲げて私の顎を掴み、冷たい声で言った。

「さっさと起き上がって芽衣に謝罪しろ!」

私は両目を真っ赤にさせて、唇をきつく噛み締めた。

「彼女にそんな資格なんかないわ」

仲村和人は再び私のお腹に蹴りを入れた。蹴りながら私を罵った。

「追い詰められなきゃ言うこときけないってのか?帰れと言っておまえが帰らないのはまだいい。それだけじゃなくここで騒ぎを起こしやがって。今日こそは許さねえぞ!」

ひと蹴り、ひと蹴りごとに私のお腹の傷はどんどん開いていき、私の服は真っ赤な血に染まっていった。

私は激痛に体を縮こませ、顔を真っ青にさせて全身をピクピクさせていた。

私は最後の力を振り絞って顔を上げた。

「和人、私たち離婚しましょう!」

仲村和人のは奇異の眼差しで、薄い唇を少し動かした。

私は彼が何を言ったのか聞こえず、完全に気を失ってしまった。

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