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第5話

仲村和人は彼女を慈しむ目でため息をついて言った。

「先に外に出て待っていてくれ、もう少ししたら家まで送ってあげるから」

持田芽衣はこれでしぶしぶ後ろを向いて外へと出て行った。

「サインして」私は冷たい声で言った。

仲村和人は突然ベッドの上に座り、私の手を握った。

「美咲、許してくれよ。何もなかったことにしてさ、俺たちには子供がいるだろ?子供が成人するまで仲良く過ごしていこうよ」

私はドアから病室の様子を伺っている持田芽衣を見て、唇をきつく合わせた。

「じゃあ、彼女はどうするつもり?彼女を切り捨てることができるというの?」

仲村和人は彼女を捨てるのは惜しく、ためらって歯を食いしばった。

「決めた。これから君は南区で、彼女は北区で生活してもらうことにしよう。南と北ならお互い影響を受けないだろ、これでどうだ?」

バチン!

私はそれを聞いて瞬時に立ち上がり、仲村和人にきつく平手打ちを食らわした!

この一発は本来、こいつが浮気したあの日にその顔に受けるべきものだったのだ。

「南と北だからオッケーだって?崇高な考えですこと!仲村和人、絶対に私と離婚してもらいますからね!」

私はベッド横のナースコールを鳴らした。

そして、看護師が入ってきた。

彼女は私の懇願を受けて、冷ややかな顔で仲村和人を病室から追い出した。

「すみませんが、出て行ってもらえますか。患者さんがゆっくり休めませんので」

翌日退院し、私は迅速に荷物をまとめ、子供を連れて空港へと急いだ。

午後、私は祖母の家に戻ってきた。

祖母はひ孫を見ると、年老いた顔に笑みを浮かべた。

「可愛いお孫ちゃん、ようやくあなたに会えたわね」

私の祖母は元大学教授で、この一生であまりお目にかかれない知識人の一人だ。

この夜、彼女は私に何が起こったのかは聞かず、静かに私を抱きしめて寝かせてくれた。

私はこの家でまる一ヶ月を過ごし、気分もかなり良くなった。

そして突然、仲村和人からの電話を受けた。

「美咲、もう一ヶ月も経ったんだぞ。まだ意地を張ってるのか?」

「芽衣には北区に家を買ってやったし、彼女はもう賛成してくれたよ。君が同意してくれれば、彼女は一生あそこで暮らしていくから、君の目の前には二度と現れないよ。彼女のほうは我慢して折り合いつけてくれたんだ。これでも足りないのか?」

仲村和人の
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