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第2話

何度も娘に言い聞かせてきた。「危険なことがあったら、キッズウォッチで連絡しなさい」

娘が何かあったら、すぐに手元のことを放って、私は娘のところに駆けつける。

だから、凛音のママがみんなの前で何か悪いことをするとは思えなかった。

新学期の初日、私は娘を幼稚園に送ってから出社した。

帰りの時間になっても、なかなか娘の姿が見えない。

心配で仕方がないまま、探していると、滑り台の隅で月香を見つけた。

最初は彼女の様子がおかしいことに気づかなかった。抱き上げようとすると、彼女は私を突き飛ばした。

「触らないで、私はこんな悪いママなんていらない!一緒にいると恥ずかしい。友達たちはみんな私を嫌いになって、遊んでくれない。うわーん……」

娘の異常な態度に頭がクラクラした。まるで雷が落ちたようだった。

しかし、私の娘のことはよく知っている。

彼女の素直な性格が、急に変わることなどありえない。

私は優しく娘をなだめ、家に連れて帰ってシッターに預けた。

それから車で幼稚園に戻った。

先生たちは事務室で夜の高級レストランでの食事について楽しそうに話し合っていた。

目に入ってきたのは、隅に置かれた高価な煙草や酒。

「監視カメラを見たい」

「何だって、幼稚園の監視カメラは勝手に見られるものじゃない!」

彼らの視線が不自然に動いたのを見逃さず、何も言わず監視室に突入し、ドアを内側から鍵で固定した。

時間を朝8時に設定し、私が幼稚園を出た直後の映像を再生した。

月香は元気な様子で教室に向かっていた。

中に踏み入れた途端、体格の良い子供に突然床に押さえつけられ、キッズウォッチを奪われてしまった。

月香は泣きそうになったが、その子供はまた彼女の頭を叩いた。

「何泣いてるの、私は女王様だから、みんなのものは全部私のもの。あなたはケチね!

ケチ、ケチ!」

その子供は大声で叫んだ。

月香は困り果て、ただ自分のウォッチが奪われるのを見守るしかなかった。

先生が入ってくると、月香は助けを求めようとした。

しかし、いつも優しかった小林先生は彼女をちらりと見ただけで、頭をかるく撫でてすぐに立ち去った。

授業中、月香は全く集中できず、目からは涙が溢れていた。

一方、彼女のウォッチを奪った子供は、クラスの前でそれを高く掲げて自慢げに見せびらかしていた。

午前中が終わり、昼食の時間になった。

以前はおばさんが一汁三菜にフルーツを用意してくれていたが、今日は脂っこくて臭い肉類や魚類がたくさんあった。

月香は慣れない食事を、無駄にしないように少しずつ口にしていった。

すると、その子供が再び近づいてきて、月香の頭を食事に押し込んだ。

丸々太った顔で笑いながら、「そんなにゆっくり食べて、何やってるの!

ママが言ってた、ゆっくり食べる子は全部偽善者だよ。

あなたはケチなだけじゃなくて、偽善者だね」

幼稚園の子供たちはまだ善悪の判断ができない年齢で、すぐにその子供の言葉を繰り返した。

「ケチ、偽善者!」

月香の涙が食事と混ざり合い、泣き崩れた。

小さな手で必死に自分の弁解を試みたが、「私は違う、違うの……」

彼女の声は小さすぎて、幼稚園の騒音に飲み込まれてしまった。

小林先生と食堂のおばさんは、何も言わずにその場を去った。

全てを見逃し、何もしなかった。

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