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第220話

 幸樹が言っている子供というのは、もしかして双のことではないか?

 遠く離れているため、彼女は何も聞き取れず、「子供」という言葉に敏感に反応しただけだった。

 幸樹は車のドアの前に立ち、電話の向こうの相手に話し続けた。「人を連れて来い。確認したいんだ」

 彼が子供を産んだ女性を探しているのは、双が泣き止まず、粉ミルクを飲もうとしないからだった。彼はネットで調べたところ、赤ちゃんが粉ミルクを飲まないのは母乳を求めているからだという情報を見つけた。それで、彼は母乳がある出産経験のある女性を探し出し、双に母乳を与えることで、泣き止ませようとしていた。

 実は双が泣いていたのは、粉ミルクを飲みたくなかったからではなく、以前のブランドではなく味が変わってしまい、慣れていなかったから飲まなかっただけだった。元のブランドに戻せば、彼はきっと飲むだろう。

 しかし、幸樹はそれを知らなかった。

 電話の相手が了承すると、彼は電話を切った。車に乗る際、彼は遠くに立っている彩花を一瞥し、深く息を吸った。一言気遣おうと思ったが、彼女に期待を持たせたくなくて、無情にも車に乗り込み、そのまま立ち去った。

 香織は焦った。幸樹が電話で話していた「子供」というのは、彼が今、双に会いに行こうとしているのではないか?

 しかし、彼女の二本の足では、四輪車に追いつくことは不可能だった。

 そこで、彼女は車のナンバープレートを撮影し、その写真を圭介に送った。

 そして、彼にメッセージを送った。「この車を見つけられる?彼が双に会いに行くのではないかと疑っているの」

 天集グループ

 社長オフィス。

 圭介は誠と話をしていたが、突然携帯が鳴った。彼はそれを取り上げ、メッセージを確認した。内容を開くと、眉をひそめて、返信を打ち込んだ。「分かった」

 「どうしましたか?」誠が尋ねた。

 圭介は彼を見つめ、何も言わなかった。

 彼は誠に幸樹一家を常に監視させており、家で使っている家政婦まで監視していた。少しの可能性も見逃さないためだった。

 先ほど、監視している人からの報告で、幸樹が裏に出産経験のある女性を探していると聞いた。

 圭介は幸樹がなぜそんな女性を探しているのか分からなかったが、香織からのメッセージを見て、一気に理解した気がした。

 幸樹が出産経験のある女性を探してい
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