第103話

　香織は舞踊やピアノ、医術が得意であり、今度は絵も描けるというのか。

　圭介は少し信じられなかった。

なぜなら、香織は既に多くのことができ、それぞれが優れていた。

普通、一人が一つか二つの特技を持つだけでも十分に優秀である。

恭平は圭介が自分の意図を理解していないことに気づき、

得意げな顔をした。

自分が知っていることを圭介が知らないというのが気分良かったのだ。

彼は笑い出した。

「聞いたところによると、人は誰かを好きでないとその人の肖像画を描かないと言う、水原さん、俺に絵を描いた人は俺のことが好きだと思うか？」

香織の顔色が悪くなった。「それはあなたが無理やり描かせたんだ。私はあなたのことが好きではない......」

言いかけて彼女は口をつぐんだ。

こんなことを言えば説明していることになる。

今は圭介に嫌われ、離婚してもらいたいのだ。

彼女は話の方向を変え、「確かに無理やりだったけど、実際にはあなたに絵を描きたかったの」

これは彼女が恭平を好きだと認めたことになる。

たとえそれが偽りでも、

聞いた人はそう思うだろう。

恭平は一瞬驚いた後、満足そうな表情を浮かべ、圭介を見て嘲笑した。「水原さん、君は浮気されているんじゃないか？アハハ——」

最初のうちは圭介も我慢していたが、

この言葉には本当に腹が立った。

香織への寛容さも彼女の言葉で怒りに変わった。

彼女が自分に対して腹を立てたり、恨んだりするのは構わないが、

他の男に好意を持つことは絶対に許せなかった。

彼のベースラインは、香織が他の男と曖昧に遊んでいることを受け入れることができないことだ。

あるいは彼女は他の男に好感を持っていること。

表面上は何も気にしていないふりをしていたが、心の中では恭平を許すつもりはなかった。

彼は一再挑発してきたのだ。

何もせずにいるのは、自分が愚かだと思われるだけだ。

彼は香織を連れて外に出た。

「水原さん、もう行くのか？他の絵を見ないのか？」恭平は火に油を注ぎ続けた。

来たときと同じように、圭介は香織を車に乗せ、帰り道は静かで一言も話さなかった。

車内には重苦しい雰囲気が漂っていた。

香織は彼が怒っていることに気づいた。

それもかなり怒っているようだった。

彼女は試しに聞いてみた。「怒ってるの？」

圭介は彼女を見