第4話

思乃が帰宅し、父娘で和やかに夕食を終えたあと、父はソファに座り、ふと今日の電話を思い出したのか、スマホをタイピングした指を止め、顔を上げてこう尋ねた。「思乃、あいつ最近何してる？」

思乃の口元の笑みが一瞬凍りつき、すぐに言った。「お父さん、私にもわからないよ。妹はずっと私のことを嫌ってるから、何をしてるかなんて教えてくれないし。でも、この前、男の子たちと一緒にいるのを見かけたよ......」

ほら、これが私の「素敵な」お姉さんだ。いつも容赦なく私を貶め、悪意のある嘘をついてくる。

父が眉をひそめながら、再びスマホを手に取り、私に電話をかけた。電話が長く鳴り続け、やっと通じた途端、父は声を荒らげて怒鳴りつけた。「思乃、お前はいつまでふざけるつもりだ？今日中に戻らないなら、二度と帰ってくるな！」

その言葉を聞いて、私は微笑んだ。確かに私はもう帰ることができない。なぜなら、今日、私は完全に死んだから。

「景山さん、何度もお伝えしていますが、思乃さんはもう亡くなりました。遺体は江津市第一病院の霊安室にあります。今行けばまだ間に合いますよ」

それを聞いた父は突然取り乱し、電話越しで怒鳴り散らした。「思乃、聞いてるんだろう、さっさと戻ってこい。そんな死んだふりの茶番はもううんざりだ！お前の早く死んだ母親と同じ下劣な真似をして！」

その言葉に胸が痛み、飛びかかって父を殺したいほどだった。でも、私は今や幽霊でしかなく、ただ思乃と父が仲睦まじく演じている「父娘の絆」の茶番劇を眺めるしかなかった。

私は冷ややかに父を見つめ、わずかに口元をつり上げた。

最終的に、私の遺体は叔父と叔母に引き取られた。その日、空は豪雨に見舞われ、二人は私の骨壷を抱きしめ、大雨が容赦なく全身を濡らしていた。いつもは華やかな二人も、この時ばかりはまるで濡れ鼠のようだった。

叔父と叔母の顔には水が流れていたが、それが雨か涙かはわからない。その日は、私の骨壷を長い時間抱いていた。その光景は、かつて母の骨壷を抱きしめていた姿と重なって見えた。

その頃、父は思乃の卒業式に出席していた。盛大な式典で、父の目は優しさに満ち、思乃を見る視線は、まるで故人を懐かしむかのようだった。私は知っていた、彼は母のことを思い出しているのだ。

卒業式が終わって間もなく、父は思乃を景山家の唯一の後継者とすることを発表