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第11話

翌日の昼食時、藤井拓洲が再び病室に現れた。

私が彼のことをよく知っている限り、彼が毎日病院に来るのは、彼の本心ではなく、何かの任務を遂行しているようなものだった。

彼の後ろには秘書の健二がいた。

健二は、温かい料理が入った容器を小さなテーブルの上に丁寧に置き、私は礼儀正しく「ありがとう」と言った。

藤井拓洲はベッドのそばの椅子に座り、足を組みながら、笑みを浮かべて私を見ていた。

私は彼の視線を感じながら、黙々と食事を進めた。

食事が半分ほど進んだところで、彼が突然口を開いた。「この前言ったこと、まだ有効か?」

私は箸を持ったまま、動きを止め、静かに彼を見つめた。

「離婚のこと?」

私は藤井拓洲をじっと見つめ、「本気なの?」と尋ねた。

藤井拓洲は軽蔑的に笑いながら、「もちろんさ」と答えた。

「わかった、離婚しよう……」

私は彼に、なぜ突然考えが変わったのかを聞かなかった。

彼がもう私を必要としていないことは分かっていた。

彼の翼は十分に広がり、私なしでも飛べるようになったのだ。

私たちは役所に行くことなく、病室で結婚証書を離婚証書に取り替えた。

こうして合法的な夫婦関係が解消され、私は退院する準備をしていた。

退院してから七日後、私は一人で別荘に戻り、自分の私物を取りに行った。

運悪く、その日は家が賑わっていた。

別荘では盛大なパーティーが開かれていたのだ。

私は邪魔をするつもりはなかったが、星野晨奈が私を簡単に見逃すはずがなかった。

歩いていると、突然誰かに遮られ、続いて顔にワインがかけられた。

「追い出された計算高い女!」

星野晨奈は得意げで、勝ち誇った顔をしていた。

私は顔を拭い、「ここでも隠しカメラを仕掛けたの?」と尋ねた。

星野晨奈は堂々と、「その通りよ。あの星空ホテルの大統領スイートにカメラを仕掛けたのは私よ。どうするつもり?」と答えた。

私は彼女に何もするつもりはなかった。

星野晨奈は続けて言った。「そうそう、藤井拓洲の本当の『白月光』(純愛の象徴)はあなたなのよ。私は彼の目の前であなたを代わりにしただけ」

私は驚いて、「何ですって?」と聞き返した。

星野晨奈は嘲笑して、「あなたなんかが豪門の千金だなんて、本当にバカね!」と言った。

「あなたが私の代わりを務めたの?」

星野晨奈は当然のように答
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