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第4話

last update Last Updated: 2025-04-03 16:00:42

整った顔に見つめられ、否応なしにドキドキしていると、相楽くんの手が再びこちらへと伸びてきた。

──するっ。

「え!?」

なぜか相楽くんは、私のポニーテールのヘアゴムを外した。

「さっ、相楽くん!?」

ちょっと!どうして外すの!?朝から、せっかく頑張って結んだのに。

「返して!」

私がヘアゴムを取り返そうと手を伸ばすと、ゴムを遠ざけられてしまう。

「これは、俺が預かっとく。小嶋、今日からポニーテールにするの禁止な」

「はい!?」

一方的にそれだけ言うと、相楽くんは席を立ち教室を出ていってしまった。

ヘアゴムを取られた上に、ポニーテールにするの禁止って……。

どうしてそんなことを言うの?どうして意地悪するの?相楽くん、意味分かんないよ。

ほんとに双子?って思ってしまうくらい、陸斗くんとは正反対だ──。

あれから1週間が経ち、校庭の桜の木は花びらが散り、鮮やかな緑色の葉をつけた。

「最近、陸斗くんとはどうなの?」

お昼休み。友達の栗山香澄(くりやまかすみ)ちゃんが、玉子焼きを口にしながら聞いてきた。

私は今、香澄ちゃんと教室で机を向かい合わせにして、お弁当を食べている。

「んー、最近はあまり話せてない……かな」

陸斗くんとは、朝会ったら挨拶を交わすくらいで、それ以上の進展はない。それだけでも私は、十分なんだけど。

「まぁ、今は陸斗くん隣のクラスだもんね」

「うん。でもね、今日の放課後に図書委員会の当番があるから。陸斗くんに会えるんだ」

今年も奇跡的に、陸斗くんと同じ図書委員になれた私。隣のクラスの陸斗くんと一緒の当番になったから、会える!

「希空、嬉しそうな顔してるね。で?海斗くんのほうはどうなの?」

「ぶっ!」

香澄ちゃんに聞かれて、私は口の中にあったウインナーを吹き出しそうになってしまった。

「なっ、な、なんで相楽くんの名前が出てくるの?!」

「あれ?ふたりは、仲良いんじゃなかったの?」

「なっ、仲良くなんかないよ」

チラッと相楽くんのほうに目をやると、彼は教室の窓際でパンを食べている。

「キャー、海斗くーん」

「パンを食べてる姿もかっこいい〜」

食事中でもファンの子にキャーキャー言われていて、ちょっと迷惑そう。

ていうか相楽くんは、出席番号順でたまたま席が私の後ろっていうだけなのに。香澄ちゃん、私たちの一体どこを見て、仲良いなんて思ったの?

そもそも相楽くんが一方的に、私にちょっかいをかけに来てるんだよ。

「希空も、あの人気者の相楽兄弟の弟に気に入られて、良いじゃん」

「良くないよ!ていうか、そもそも私のどこが気に入られてるの?嫌われてるの間違いじゃない?」

この前だって『ポニーテールにするの禁止な』って、訳の分からないことを言われたし。

私は、おろしたままのストレートの髪にそっと手を当てる。

「……なあ。それ、食わねえの?」

「え?」

突然耳元で声がして、肩がピクッと跳ねた。恐る恐る、声がしたほうに目をやると。

「えっ、相楽くん!?」

「それ、食わないならちょうだい」

「あっ、ちょっと……!」

いつの間にかそばに立っていた相楽くんに、私のお弁当の玉子焼きを取られてしまった。

「うん、美味い」

手で掴んで口に入れた玉子焼きを、頬張る相楽くん。

玉子焼きは好物だから、最後に食べようと思って残しておいたのに……!

「なあ。この玉子焼きって、もしかして小嶋が作ったの?」

「いや、お弁当はお母さんが……」

「ぷっ。だよなー」

私を見て、クスクスと笑う相楽くん。

『だよな』って、どういう意味!?しかも、そんなに笑って……どうせ私は、料理ができませんよーだ。

「ああ、美味かった。小嶋のお母さんにも、“玉子焼き美味かった”って伝えておいて?」

それだけ言うと、相楽くんは教室を出て行った。

勝手に玉子焼きを食べられたうえに、笑われて。

ムカつく!って、思ったけど……私も昔から大好きなお母さんの玉子焼きを、相楽くんにも『美味しかった』って思ってもらえたのだと思うと、なぜか悪い気はしなかった。

放課後。私は今、図書室で返却本を書棚に戻す作業をしている。陸斗くんは、まだ来ていない。

図書室には誰かが時折、本のページを捲る音だけが響く。普段は利用客の少ない図書室の、静かな雰囲気が好きだ。

あ。あの本のタイトル……興味あるなあ。

私は、図書室の一番上の棚にある本が目についた。

こうして書棚の整理をしていると、たまに興味深い本と出会えることがある。

作業の途中だけど、ちょっとだけなら良いよね。

そう思った私は、書棚に手をのばす……が。と、届かない。

お目当ての単行本は、私の目線よりもかなり上のところにある。

こういうとき、身長が150cm弱の私はいつも苦労するんだ。

一生懸命背伸びして、手を伸ばすけれど。全然、本にかすりもしない。

面倒くさがってないで、いい加減離れたところにあるステップ台を、取ってこようと思ったとき。

「……どの本が欲しいの?」

えっ、この声は……。

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