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学園にて3

Author: をち。
last update Last Updated: 2025-04-20 18:30:41
入学式をさぼることはできなかった。なぜなら、残念ながら俺は学年総代。入学式で祝辞を読まねばならないからだ。

本来なら王太子がその学年にいる場合は王族が祝辞を読むのが常。しかし、俺は全教科満点の上、王子の次に高位。さらには俺の異常なほどの神童ぶりは知れ渡っていたため、例外的に俺が祝辞を読むこととなったのだ。全く、学園も余計なことをしてくれた。例外になどしてくれる必要はなかったのに。

しかしそうと決まった以上俺にさぼるという選択はない。面倒だが、トップとしての義務ならば果たす。それが俺の矜持だからだ。

「総代、アスカ・ゴールドウィン」

名を呼ばれ壇上に向かう俺に、多くの好奇に満ちた視線が集中する。

俺はほとんど公の場には顔を出さない。パーティーにも最低限しか出ず、それもすぐに引っ込むという徹底ぶりだ。従って、俺の名だけは知っていても顔を見るのは初めてというものが多いのだ。

「まあ!なんて素敵な方なの!」「ほら、伝説の妖精姫の……」などという声が、ため息とともにあちこちから聞こえてくる。

5歳で既に美の片鱗を見せていた俺だが、15歳になった今はまさに「美少年」「端麗」という言葉がふさわしい男に育っていた。

父も母もがっしりしたタイプではないので線は細い。しかし剣術訓練や恵まれた資質により引き締まった筋肉としなやかな身体を持っている。背は年齢にしては少し低めではあるが、それでも女性よりもはるかに大きい。容貌に関しては言わずもがな。あの伝説の「妖精姫」の繊細な美しさと、父から引き継いだ怜悧な美貌の絶妙なミックス。艶やかな漆黒の髪を片側だけ編み込みにすることで、特徴的な黄金色の瞳がより強調されていた。自分で言うのもなんだが、いっそ近寄りがたいほどの美貌なのだ。

親しみやすく見せる必要などない。俺は誰ともなれ合うつもりはないのだから。

集まる羨望のまなざしの中、ひときわ強い熱を感じた。ピリピリと突き刺さるような視線。

その持ち主は……分かっている。最前列のあの眩しい金色……そう、俺の婚約者様だ。

頬に焦げるような熱を感じながら通り過ぎ、壇上へ。

上に立つとさらに顔が良く見える。レオン・オルブライト。

久しぶりに彼を正面から見て驚いた。金髪と黒髪という違いはあれど、レオンが前世で俺をさんざん振り回したアイツにそっくりな顔になっていたからだ。

だが、レオンがアイツではないように、俺
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    そんな折俺にとんでもない話が持ち込まれた。なんと「第一王子の婚約者に」と王家に請われたのである。元々父は王と親しかった。宰相である父は、職場である王城で「自慢の息子の話」をたびたびしていたようで、王が俺に興味を持ってしまったのだ。俺が3歳にもならぬうちから「息子の婚約者に」と言い出していたそうなのである。父は「嫡男ですので」とそれをずっと断っていたようだが、ここにきて俺に弟が生まれてしまい「唯一の息子」ではなくなってしまった。弟というスペアができたことで、王家に請われたにもかかわらず断るほどの理由にはならなくなったのである。俺はその話を聞いて何の理由もなく「嫌だ」と思った。根拠などない。第一王子と聞き「嫌だ」と思い、レオンという名前を聞いて「絶対にダメ」だと思ったのである。「父上、嫌です!俺は筆頭公爵家嫡男。王家の嫁になど言語道断。無理を押し通すような王家などこちらから切ってしまえばいい。王家にこう言ってください。「カイトはゴールドウィン家の後継者です。それを挿げ替えろと?ご無理をおっしゃる。王家に我がゴールドウィン家を敵に回すおつもりがあるのならば、婚約をお受けいたしましょう』と。それでも婚約をと言われたら、王家を討ちましょう。それがいい。父上と私ならできます!」

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    新しい人生は、剣と魔法のある異世界で始まっていた。俺は王家に次ぐ権力を持つ筆頭公爵家、ゴールドウィン家の長男として生を受けたのだ。父は敏腕宰相で現王と幼馴染。黒髪にグレーの瞳というクールで知性的な容貌の美形だ。高位貴族で人物容姿にも優れた将来有望な父には、適齢期になったとたん釣書が殺到した。父はその頃のことを苦い表情でこう語る。「血で血を洗うような戦いが水面下で行われていた」。想像するだけで恐ろしい。そんな父が選んだのは公爵家でもなく、侯爵家ですらなかった。サーズ伯爵家の三女、マーゴット。俺の母だ。母は……こう言っては何だが、貴族社会には珍しい無邪気でおっとりとした女性だ。銀髪に金の瞳という薄い色彩もあり、まるで妖精のように見える。父によれば、母は当時「妖精姫」と呼ばれ、男性からは憧憬を集め女性からは守る対象として慈しみ可愛がられていたという。父はそんな母の浮世離れした様子に一目ぼれをし、姫を守る騎士となることを自らかってでた。誰よりも近くで母を守り、大切に慈しんだ。そうして母の信頼を得るやいなや、あっという間に婚約の了承を貰い、そのまますぐスピード婚に持ち込んだ。家格の差を気にする母に対し父はこう言い放ったのだそうだ。「この私に後ろ盾など必要だとでも?」わが父ながらなかなかのものだ。要するに父は母に惚れこんでいた。こうして貴族には珍しい恋愛結婚の末に生まれたのがこの俺、アスカ・ゴールドウィンだ。髪の色と知性を父から、珍しい金色の瞳と美しい容貌を母から受け継いだ。俺は生まれた時からどこか特別だったそうだ。赤子なら泣くのが仕事だというのに、よく見えぬ目でじいっと周りを観察していたという。そして妖精のように可憐な母の腕を拒絶し、父に向かって腕を伸ばした。父は驚き躊躇いながらもしっかりと俺を抱きしめた。ちなみにこれが父の俺への溺愛が決定した瞬間だ。拒絶された母はといえば、気にすることもなくおっとりとほほ笑んだという。「まあまあ。カイトちゃんはお父様が大好きなのねえ。お母様といっしょねえ」と。さすが妖精姫だ。たまたまかと思われたそれは、物心ついてからも続く。俺はどうしてだか女性が近づくと泣き、拒絶したのである。それでも拒絶してもそれをおっとりと躱し俺に関わり続けた母のことだけは、受け入れて甘えるようになった。赤子としてかなり異質だったと

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