第443話

高村はおしゃべりで、同級生たちと笑い合っていた。

突然、晴香という女の子が言った。「そういえば、高村、晴人が帰国したって聞いた？彼、今日来るみたいよ」

その名前を聞いた由佳は、高村を見た。

晴人は、高村が彼女のライバルとして追っていた男の子だろう。

高村は一瞬言葉を止め、淡々と言った。「そうなの？来るなら来ればいいじゃない」

彼女は前方の地面をぼんやりと見つめ、その内向的で清らかな顔が脳裏に浮かんだ。

どうやら、特定の記憶は時間が経っても薄れず、むしろますます深く刻まれているようだった。

晴香は続けた。「二人は久しぶりに会うんじゃない？あの時、彩花と激しく競ってたから、てっきり晴人と付き合うと思ってたよ。晴人が海外に行ってから、彩花も海外に行ったって聞いた。この集まりも彩花が企画したらしいし、晴人が来るって」

「本当に？」隣の女の子が口を挟んだ。「二人は付き合ってないのかな？」

晴香は高村を一瞥し、「多分ね。二人は何年も海外で一緒に勉強していたし、彩花はずっと独り身だったから、彼を待っていたに違いない！帰国して同窓会を開くなんて、ちょっとお知らせをする意味があるんじゃない？」と言った。

高村は黙って目を転がし、腿に置いた手が無意識に袖を握りしめた。

別の女生徒がほのめかしながら言った。「早く喜んじゃダメみたいね。最後に笑うのは誰だかわからないから！」

高村は顔を曇らせ、眉をひそめ、冷たく笑った。「晴人は私が振った男だよ。だから彩花にはチャンスができたの」

その女生徒は驚いた顔で、まさか高村がそんなにストレートに言うとは思っていなかった。

ちょうどその時、個室のドアが開いた。

ドアの前に立っていたのは若い男性で、25歳前後に見え、身長は180センチ以上だった。タートルネックのニットにスラックス、コートは肘にかけていた。

彼は整った顔立ちで、金縁のメガネをかけて冷静に周囲を見渡し、高村に視線を向け、「君たちは何を話していたの？」と淡々と尋ねた。

高村はその姿を見て、瞳孔が縮んで、全身が固まった。

その瞬間、頭の中が真っ白になり、目には彼だけが映っていた。

由佳は肘で高村をつついた。

彼女は敏感な人で、高村と晴人の間に特別なものがあることを早くから感じ取っていた。

高村は我に返り、悔しそうに視線を逸らした。

思ってもみなかったの