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第201話

由佳は笑みを浮かべ、シートベルトを外して助手席から降りると、後部座席のドアを開けて中に座り、「私が沙織ちゃんと一緒に後ろに座るわ」と言った。

かわいい女の子は、少し大人びた様子で由佳を一瞥し、「私のライバルですね!」と言い放った。

由佳は彼女の真剣な表情を見て、思わず笑みがこぼれる。「ええ、私は沙織ちゃんのライバルだよ」

その時、山口清次の携帯電話が鳴り、彼はイヤホンをつけて電話に出た。「……どういうことだ?」

彼の声が突然低くなり、少し厳しい口調で問い詰めているようだった。

由佳はバックミラー越しに、彼が眉をひそめているのを見た。

電話の相手が何かを言うと、山口清次はすぐに「わかった!言い訳はいいから、まず人を落ち着かせて、俺が戻ったら対処する!」と切り返し、電話を切ると、イヤホンを外して小物入れに投げ入れた。

「何があったの?」と由佳が尋ねると、「ニューヨーク支社の社員がミスをしてしまった。俺が行って対処しないといけない」と山口清次はバックミラー越しに由佳を見た。

「どのくらいかかるの?」

「二日間。どうする?一緒に来るか?」

「休みももう終わるから、私は先に虹崎市に戻るわ」

「はい、着いたら秘書に迎えさせるよ」

「うん」

「虹崎市ってどこ?」と隣の女の子が二人の話を盗み聞きながら尋ねた。

山口清次は微笑んで「沙織ちゃんはもうおじさんを無視するんじゃなかったのか?」と言うと、「ふん」と山口沙織は小さな顎を上げて「私はおじさんに聞いてないもん。おばさんに聞いてるの!」と言い返した。

由佳は彼女の可愛らしい様子を見て、山口清次と目を合わせ、「虹崎市はZ国にあるのよ。おじさんとおばあさんの故郷で、もし機会があれば、おばあさんに連れて行ってもらえるわ」と笑顔で答えた。

小さな女の子は真剣にうなずいて、「もちろんよ」と答えた。

子供の感情の変わりようは早いもので、山口清次を無視すると言っていたのに、道中では彼に学校での楽しい出来事を次々と話し出した。

慣れてくると、この子が実はおしゃべりだということが分かる。

山口清月の家に戻ると、由佳は山口沙織を抱きかかえて下ろし、手を引いて家の中へと入っていった。

歩いている途中、突然、女の子が足を止め、由佳を見上げた。

「どうして止まったの?」

「どうしてそんなに綺麗なの?」と山口沙織は突
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