第 0496 話

海咲は自分が一夏の間消えていたことを全く覚えていない様子で、それが州平を少し迷わせた。

彼女の消えていた夏休みは、単なるものではない可能性があった。

海咲は何も気づかず、前方の交差点を見ながら言った。「もうすぐ家に着くから、ここで停めて」

木村清はブレーキを踏み、交差点でしっかりと停車した。

海咲は車を降り、「じゃあ、私は行くね。早く帰って」と礼儀正しく州平に言った。

州平は、どこで間違ったのか理解できずにいた。

海咲は彼の反応を待たずに、団地に向かって歩き出した。

州平は海咲の背中を見つめていたが、車を降りることなく、自分の中の矛盾した思考に囚われていた。「海咲の資料に漏れはないはずだよな？