第 0321 話

今さらそんな話を持ち出しても、海咲には少し皮肉に感じられた。「私はあくまであなたの秘書です。社長の車庫には山ほどの車があるのに、今さら私に車が必要ですか？」

だが、州平の行動からは、まるでこれで彼女を引き留めたいかのように感じられた。

「いずれにせよ、ずっと俺の車に乗るか、タクシーを使うわけにもいかないだろう？」

州平は後部座席に座っていたが、海咲は前方を見つめながら運転しているため、彼女の表情はうかがえない。しかし、その口調からは、海咲がこの話題に全く関心がないことが明らかだった。

「私は社長の車を仕事で使うだけです。私用で使うなら......数万円の安い車を買えば、周りの人たちは社長の秘書