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第190話

彼女は長い間、声が枯れるまで泣き続け、ようやくソファから体を起こした。

まだ夕子の遺品を整理しなくてはいけない。夕子が黄泉の路を歩むときに、服がないなんてことがあってはならない。

彼女は自分を奮い立たせて、夕子のためにきれいな服を選んであげようと決意した。

白石沙耶香は重たい足取りで、一歩一歩夕子の部屋へと向かった。

そこに、彼女が使っていたものがまだ残っているのを見た瞬間、夕子がもういないという現実に、再び涙が溢れてきた。

彼女は顔を覆ってしばらく泣いた後、顔の涙を拭い、夕子の遺品を整理し始めた。

クローゼットから服を取り出し、シューズラックからは何足かの靴を選び、さらに布団も整理した。

しかし、それ以外の物は手をつけず、全てを燃やすのが惜しくて、思い出として大半を残すことにした。

遺品をまとめ終わり、部屋を出ようとしたとき、白石沙耶香は突然足を止め、振り返って机を見つめた。

まるで何かに引き寄せられるかのように、彼女は机に近づき、自然と手が引き出しを開けた。

中はきれいに片付けられていて、ノートと「遺書」と書かれた封筒が一つ入っているだけだった。

「遺書」という言葉を目にした瞬間、白石沙耶香の目に再び涙が浮かんできた。

夕子はすでにこの世を去る準備をしていたのだ。彼女がそれに気づかなかっただけだった。

もしもっと早く気づいていれば、もっと長く夕子と一緒に過ごすことができただろうし、今のような大きな後悔を抱えることもなかっただろう。

震える手で遺書を取り出し、封を開け、ゆっくりと中の手紙を広げた。

「敬愛する沙耶香姉さんへ

この手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にはいないということですね。

でも、私のことはあまり悲しまないでください。そして、どうか後悔しないで。

人生というものは無常です。変えられないことがあるなら、それを受け入れるしかありません。

私はすでにそれを受け入れました。だから、姉さんもどうか心を軽くしてほしいのです。私のために目を腫らして泣くことなんてしないでください。私は姉さんのことが心配です。

沙耶香姉さん、私はあなたがそばにいてくれたことをとても感謝しています。幼い頃から、誰かにいじめられると、いつも真っ先に守ってくれたのはあなたでした。

12歳のとき、学校の前で不良たちに囲まれた私を、あなたが
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