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第146話

「私が愛したのは、間違った人だった…」

松本若子はぼんやりと手にした戸籍謄本を見つめ、ポケットから取り出した携帯電話で時間を確認しようとしたが、電池が切れて自動的に電源が落ちていた。

遠藤西也はそれに気づき、すぐに「充電器があるから、僕が充電してあげるよ」と言った。

松本若子は軽くうなずき、「ありがとう」と感謝した。

遠藤西也は彼女の携帯電話を充電器に繋ぎ、しばらく充電するためにそのまま置いておいた。

「今、何時?」と松本若子が尋ねた。

遠藤西也は時計を見て、「午後1時だよ。何か予定があるの?」と尋ね返した。

「さっきまで、リゾートで衝動的になって、離婚しないなんて言っちゃったけど、今は後悔してる。早く離婚しちゃった方がいいわ。もう彼の顔なんて見たくない」松本若子は沈んだ声で続けた。

その時、彼女は怒りに任せてあんなことを言ってしまった。彼らに嫌な思いをさせるため、それが唯一の復讐手段のように感じた。しかし、今冷静に考えると、それは彼らだけでなく、自分にも同じように苦しみを与える行為だった。

離婚しないでいることで、自分に何の得があるのだろうか?ただ「藤沢家の妻」という立場を維持し、桜井雅子を表に出させないことだけが目的で、それ以外には何も意味がない。結局、自分も勝者ではないのだ。

携帯が少し充電され、電源を入れると、藤沢修からの着信が何件も入っているのが目に入った。

彼の携帯はようやく電源が入ったが、今度は自分の方が電源が切れていた。彼らはいつもこうしてすれ違う。運命のいたずらだろうか。

松本若子は深く息を吸い込み、藤沢修の番号を押して電話をかけた。すぐに電話は繋がり、向こうが出た。

「若子、お前はどこにいるんだ?」藤沢修が開口一番にそう言った。

「ちょうどあなたに言いたいことがあったの」松本若子は冷たい声で続けた。「午後5時までに民政局の前で会いましょう。今日中に離婚を終わらせるの」

電話の向こうで、しばらく沈黙が続いた。そして、藤沢修が再び尋ねた。「お前は今どこにいるんだ?」

「私がどこにいるかは関係ないでしょ。民政局で会って、離婚しよう。それで私たちはやっと解放されるわ。1時間以内に民政局に来てちょうだい」

また沈黙が続いた後、彼は低く、「わかった」とだけ言った。

電話を切ると、

藤沢修の最後の「わかった」という言葉が、
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