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第17話

著者: 新紅双喜
last update 最終更新日: 2024-11-27 10:15:14
7月3日、私はある出版社に依頼し、かなりの費用をかけて『聖杯と剣』の改変版を緊急印刷させた。

原著の第一章と第二章を「抵抗」と「報復」という内容に書き換え、その中に私の計画の一部を巧妙に織り込んでいた。

7月10日、高橋月子の退院時に、私はその本を彼女に手渡した。

そして7月15日、再び彼女を訪ねると、反逆の種が確実に芽吹いているのを感じ取った。

その時、私は本を密かに持ち去り、その日のうちに処分した。

だからこそ、田中刑事がその本を取り出した時、私は心底驚いた。なぜ彼がこの本に着目したのか。

「団地の防犯カメラからだ。

7月10日以降、高橋は娘と公園を散歩する度にその本を読んでいた。

しかし不思議なことに、7月15日を最後に本を手にする姿は見られなくなった」

「一体この本にどんな不思議な力が宿っているのだろう。

読んだ者の心まで変えてしまうなんて。

私は一冊買ってみた。

特に変わったところは見当たらず、今度は鈴木力也の家まで行ってみた。

しかし、家中を探しても、その本は見つからなかった」

私は彼の言葉を遮った。

「それで私を疑い始め、私の支払い記録から出版社を突き止めたわけですね?」

「ああ」

田中刑事は頷いた。

「病院の監視カメラも確認した。君が高橋月子にその本を渡した後、決済プラットフォームにも協力を仰いで支払い記録を調べ、出版社を特定したんだ。

ただ、不可解なことがある。君のように慎重な人間が、なぜ原稿の削除を見落としたのか。

いや、むしろ意図的に残していたように見える。これはどういうことだ?」
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