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第30話

「ん?」海斗は眉をひそめた。

「私の指紋を登録する勇気はある?」晴香はドアのロックを指さし、泣きそうな顔をして、まるでいじめられた子犬のように悲しげに言った。「何度もドアの前で待っていたのよ。見て、手も、足も、一つ、二つ、三つ……こんなにたくさんの虫刺されがあるの。次もこんなにひどく刺されるのを見ていられるの?」

海斗は言った。「見ていられないよ」

「やった!」晴香は喜んで飛び跳ねた。「実は、わざとそうしたの。指紋を登録してもらって、これから堂々とあなたに会いに来たいからね」

海斗は苦笑した。「まるで子供みたいだな……」

そう言いながら、彼女の指紋を登録した。

彼女が特別に作ってくれたあわ粥や、手足にできた虫刺されの赤い跡を思い出しながら、彼はポケットに手を入れ、カード取り出した。「これ、俺のパートナーカードだ。月の限度額は200万円だから、自分の好きなものを買うといいよ」

晴香は驚いて唇を噛みながら、「いやいや……私、海斗さんのお金を受け取るなんてダメでしょ」と言った。

「女が彼氏のお金を使うのは当たり前のことだろう」

「そうなの……」

「持っておけ。気にしないでいいから」

「じゃあ……ありがとう」晴香は笑顔を浮かべて、目を輝かせながら言った。「じゃあ、明日またあわ粥を作って持ってくるね!」

海斗は手を振りながら、「いや、もういいよ」と答えた。

それは彼が求めている味ではなく、何度食べても満たされないものだった。

……

一日中勉強した後、凛は蒼成と図書館の外で別れた。

蒼成は、大学院の「一次試験と二次試験で両方とも1位」だっただけあり、受験対策にかなり精通しており、彼女にもいくつかの重点を指摘してくれた。

凛は元々彼を食事に誘おうと思っていたが、蒼成は急にルームメイトから電話がかかってきて、翌日も一緒に勉強することを約束して先に帰った。

六月の空気は徐々に暑さを帯びてきていた。

迎え来る熱波を感じながら、凛は家に帰り、エアコンをつけてようやく生き返ったような気分になった。

彼女は冷蔵庫を開け、ブロッコリーのニンニク炒め、アスパラガスと豚肉の炒め、そしてコーンとスペアリブのスープを作ることにした。

ほかの人はともかく、自分自身に対しては手を抜かない。

ほかのことはともかく、食事には妥協しない。

料理が完成したころ、外から
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