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第683話

佐藤家で何が起きているのか、桜乃にはまだわからなかったが、遥輝はすでに佐藤家を自分のものと確信しているようだった。

「井上叔母さん、あなたと父はもう離婚しているんだから、佐藤家の人間じゃないはずだ。佐藤家が今まであなたを養ってきたのも恩情だと思ってね。母が戻ってきた以上、正当な佐藤家の夫人は母なんだ。恥をかきたくなければ、自分から出て行った方がいいんじゃないですか?」

「遥輝、井上叔母さんにそんな口の利き方をするんじゃないよ。お姉さん、すみません、この子は小さい頃から甘やかしてしまって……彼の言うことなんて気にしないでくださいね。ここはあなたの家です。いつまでいても誰もあなたを追い出すことはありません」

椿はこう言って自分の立場を強調していた。彼女がこの家にうまく入り込めば、これからはいくらでもチャンスがあるのだ。翔太の前では、大人しく見せておくことが必要だった。

桜乃は腕を組んで、「母親が母親なら、息子も息子だね。上が悪ければ下も悪い。さあ、あなたたちが何日持つか見てみましょう」と言い捨てて、袖をひらめかせて去って行った。夏希がすぐに追いかけた。

「奥様、こんなに侮辱されているのに、どうしてまだ動かないんですか?」と夏希が焦りながら聞いた。

「老紳士はきっと計画があるわ。峻介に関することに違いない。今は静観して、焦ってはいけない」と桜乃は声を潜めて答えた。

「はい、奥様」夏希は頷いた。

その時、優子が老紳士の部屋から急いで出てくるところを見かけ、桜乃に声をかけた。「お母さん、辛い思いをさせてしまってすみません」

桜乃は気にする様子もなく笑い、「これくらいで辛い思いなんてしないわ。昔、彼がやったことに比べれば、こんなのは何でもない。ところで、何か聞こえてきたの?」

「遥輝が……」と優子が話し始めたその時、彼女の携帯が鳴った。反射的に優子は電話に出た。

見慣れない番号だったが、優子は直感で峻介だと思った。絶対に彼だと。彼女の番号を知っている人は少なく、迷惑電話がかかってくることはほとんどなかったからだ。

「もしもし……」

優子の心臓はドキドキしていた。彼女は再び空喜びするのではないかと怖かった。

すると、電話の向こうから聞こえてきたのは、聞き慣れた声だった。「僕だよ、優子ちゃん」

優子の心はようやく落ち着いた。今までの不安が一気に解消され
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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
ほんとに気持ち悪い母息! はやくざまあしてくれーーー!!!
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