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第618話 彼女について行け!

露間朔也の表情は一瞬引き攣った。

そして気まずそうに鼻先を揉み、「だってあなたが何も返事しないんだもん」と言った。

入江紀美子は笑みを浮かべてジュースを置き、「朔也、服を3セット用意して」と指示した。

朔也は少し驚いた。

「スタイルは?」

「カジュアルウェア2セット、正装1セットで。

正装は赤にして、できるだけ鮮やかなものがいい。

あとヘアメイク師を1人手配して」

「何をするつもり?」

紀美子は時間を見ながら答えた。

「明日、渡辺グループの100年目セレモニーに出る」

「正気か?!100年目セレモニーとかに出る場合じゃないだろ?!奴らに袋叩きにされたらどうする?!」

朔也は紀美子を見つめながら問い詰めた。

紀美子はただ朔也に笑顔を見せ、何も答えなかった。

朔也は急に悟ったかのように、驚いた顔で言った。

「あなた、まさか……」

「そう」

紀美子は朔也の話を中断して言った。

「私達、そろそろどん底を抜け出すわよ!」

……

12月30日。

渡辺グループの100年目セレモニー当日。

殆どの上流階級の人々が、午後5時までに帝都において最も豪華なホテルに集まるように招待を受けた。

ホテルの外、ボディーガード達が2列に並び、沢山の記者達が参加者の写真を撮っていた。

しかし残念なことに、参加者は皆マスクを被っていた。

ホテルの化粧室。

ヘアメイク師は狛村静恵に精細な化粧をしていて、彼女が着ているイブニングドレスはその美しさを一層目立たせていた。

渡辺野碩は、満面の笑で化粧室に入ってきた。

静恵の美しい姿を見て、濁っていた両目は愛情に満ちた。

「うちの静恵ちゃんが今日こんなに美しいとは」

野碩の声が聞こえて、静恵は振り返った。

「外祖父様、それは褒めすぎですわ」

野碩は彼女の手を握り、「静恵ちゃんが美しいのに、褒めちゃいけないのか?」と言った。

静恵は恥ずかし気に野碩の肩に寄り添い、「外祖父様、私を見つけ、更にこんなに素敵な生活をくれたことを感謝していますわ」と言った。

野碩は気分が良くなり、静恵の手を握りながら言った。

「静恵ちゃん、ワシは一番いい物を全部君にあげるから!」

時を同じくして。

Tyc社にて。

紀美子はカジュアルウェアの姿でボディーガードに囲まれて会社を出た。

外で待っていた記者達は、彼女が
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