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第467話 30日以内

 入江紀美子は笑って、「違います。私はただ、2人が知り合いでもないのに、普通の工場でもできるような仕事を何故わざわざこちらに頼んでくるのだろうと思っています」

「知り合いの紹介です」長澤真由はそこまではっきりと言わなかった。

「納期は大体いつぐらいですか?」

「30日以内」

紀美子は暫く考えてから、「30日は問題ありません」と答えた。

「見積はいくらになります?」真由は笑って言った。

「スタイルは貴社にデザインしてもらう必要があるので、デザイン費も入れていいです」

紀美子はリストをテーブルに置いて、「長澤さん、デザイン費は要りません。如何せん貧困国家の子供達への慈善事業ですので。

では、連絡先を教えて頂ければ、後で材料費の見積を送ります。」

真由は目で紀美子をチェックして、「材料費だけでは、貴社のビジネスを妨げることになるではありません?」と聞いた。

「引き受けたくない人だけにとっては、金儲けの妨げだと思われます」紀美子の眼底に優しさが浮かんだ。「私も母親です。

自分の子供と同じくらいの歳の子達が、冬の寒さを体で我慢するのは見苦しいものです。

今回のお仕事を頼んでくるのを感謝しています。できれば、私はお力になりたいです」

「おや?」真由は意外だった。「どうやって私の力になりたいと仰るんですか?」

「まだ考え中ですが、30日もあれば、思いつくと思います」

「期待しておりますわ、入江さん」真由は携帯を出して、「もしよければ、LINEを交換しませんか?」

紀美子は自分のアカウント名を真由に教えて、2人はフレンド登録をした。

ビジネスの話が終わってから、紀美子は真由を会社の玄関まで送った。

帰り際に、真由は優しい声で、「では、契約書を待ってますわ」と言った。

紀美子は誠意をもって、「Tycを選んでいただいて、ありがとうございます」と答えた。

北郊林荘にて。

狛村静恵は森川次郎のリビングで目が覚めた。

彼女は眩暈を堪えながら体を支えて、頭痛で膨らんだこめかみを揉んだ。

原因は分からないが、ここ数日目が覚めたら体全体が疲弊した状態で、心拍もいつもより早くなっていた。

静恵は枕元に背中を預け、脳裏に昨晩次郎とセックスするシーンが浮かんできた。

しかしそれを思い出すと、静恵は思わず深く眉を寄せた。

丸々3回もしていたなんて!

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