山川喬森は浮かんでいた笑顔を収め、視線を戻しながらコップを上げてお茶を一口飲んだ。「森川さん、それは私に自分の弟子に刃を向けさせるということになるわ」喬森は淡々と言ったが、些かな不満が混じっていた。「そうとも言えるな」森川晋太郎は細長い脚を組み、スラっとした背中をソファの背もたれに預けた。「理由を教えてくれる?」「あなた達デザイナーは名声を追いかけて、俺達商人は利益を追う、俺が企業の発展を図るのは、極当たり前のことではないか?」「もしほかの誰かを相手にしろというのであれば、私は一切文句を言わないけど、自分の弟子を相手にってのが、少し酷すぎじゃない?」「何故酷いと思っているんだ?」晋太郎は聞き返した。「そこまで自分の弟子に自信がないのか?」喬森は笑って答えた。「森川さん、ここ数年、私はあなたに関するニュースを沢山見てきた、交渉に関してはあなたに敵わないと分かっているわ。あなたの会社の為に働くのは、別に何の問題もないけど、うちの弟子に手を出したくない、これは私のボトムラインよ」晋太郎優雅にテーブルにおいてある水を飲んで、「これを彼女への試練だと思ってもいいと思うが」「それは要らないわ、Gの実力は既に証明されている」「彼女に自分を超える実力があるかどうか、試したくないか?」喬森は沈黙した。晋太郎も何も言わなかった。話がここまで進と、喬森が同意しなければ、晋太郎もこれ以上言っても無駄だった。暫くしたら、喬森はテーブルの上に置いていたグラスを持ち上げて思い切り飲み干した。そして「ドン」とグラスを置き、「分かった、受けて立つわ!でも条件をつけさせてもらうね!」晋太郎は口元に優雅な笑みを浮かべ、「言ってくれ」と言った。「私にいつでもこの協力を中止させる権利をつけて。それと、勤務場所は私が決める」「最短期限は一年」と晋太郎は自分の条件を言い加えた。彼は喬森の条件をそのまま飲み込むつもりは無く、でないと手間をかけて彼女を見つけ出した努力が無駄になる。喬森は暫く考えてから、「分かった、でもデザイン稿の催促だけは遠慮させてもらうわ」「少なくとも2か月に1回は提出してもらう」「それは問題ないわ」午後。入江紀美子は藤河別荘に戻って、少し片づけてから塚原悟と
塚原悟は入江ゆみの柔らかい髪を撫でて、「ゆみちゃん、悟お父さんに会いたかった?」と聞いた。ゆみは二本の小さな足を振りながら、答えた。「会いたかったよ!とっても会いたかったの!」入江佑樹は眉を上げながら、笑って言った。「そのわりには悟お父さんの話を全くしなかったけど?」ゆみは素早く兄の方に振り向いて、怒った顔で聞き返した。「お兄ちゃん、心の中で会いたく思うっていうの知らないの?」ゆみは心の中で兄の文句を言った。悟は2人の子供に笑わせられて、「後で学校についたら緊張する?」と聞いた。佑樹はシートの背もたれに体を預けながら、自信満々に言った。「僕は大丈夫だけど、ゆみはきっと緊張する」ゆみは「フン」と鼻を鳴らし、「ゆみはそんな臆病者じゃない!」「分からないよ?」佑樹は眼底に笑みを浮かべて言った。入江紀美子は子供達の喧嘩を聞いて、ここ数日の憂鬱も一掃された。彼女は視線を戻し、携帯を取り出して高橋校長にメッセージを送った。「高橋校長先生、今学校にいますか?今から子供達を連れて学校に行きますが、会えますでしょうか?」すぐに高橋校長から返事があった。「入江さんはいつ到着しますか?」紀美子は時間を確認して、「20分後に着きます」と返信した。「分かりました、では学校の入り口で待っています」約20分後。車はメドリン学校の前で止まった。車を降りて、ゆみはきれいな瞳の中の驚きを隠せなかった。「わ~、お母さん!この学校、凄くきれいだわ!幼稚園より随分大きいね」紀美子は笑ってとんでもない立地面積のメドリン学校を眺めて、ここのヨーロッパ風の建築スタイルは、子供達は皆好きだろうと思った。紀美子はゆみの小さな手を繋ぎ、「ゆみは気に入った?」と聞いた。「気に入った!」ゆみは頷き、「ゆみはここが好き!」とはしゃいだ。妹と比べて、佑樹は随分と落ち着いて見えた。彼は母の後ろについていて、無言で学校の立派な看板を眺めた。母が念江といつでも会えるように、彼は頑張ってこの学校に入らなければならないと思った。すぐに、高橋校長の姿が紀美子の目に入った。高橋校長は紀美子そして子供達と一緒にきた悟を見て、「こちらは?」と尋ねた。紀美子が答える前に、ゆみが先に口を開いた。「こ
入江紀美子は単刀直入に言った。「高橋校長、私が今日来たのはこの件の為です」高橋文彦は少し意外だった。「そうですか?コンピューターが得意なのは男の子の方ですか?それとも2人とも?」「佑樹です。もう1人は既に入学していて、名前は森川念江です」高橋校長は少し驚いた。森川社長の息子の母親は入江社長だった?彼は塚原悟を見て、わけありだと分かったので、それ以上何も聞かなかった。「入江さん、安心して子供達を当校に通わせてください。当校としては必ず全力で育成する所存であります。それと、前日貴社からのスクールユニフォームのデザイン稿をいただきましたが、うちの父は大変気に入っています。」紀美子は笑って答えた。「弊社のデザインを認めてくださり、ありがとうございます……」30分程雑談をしていると、2人の先生は子供達を連れ戻してきた。先生達は高橋校長に嬉しく伝えた。「校長先生、この2人は自発的にうちの入学試験を受けてくれました。成績も出ています。十分うちの入学条件を満たしています!」高橋校長は嬉しくて立ち上がって言った。「よかった!入江さん、もし良ければこのまま転校手続きを進めてください!」紀美子も驚いて、まさか子供達が自発的に試験を受けて、しかも見事に合格したなんて思わなかった。子供達3人とも賢いのは、森川晋太郎の遺伝子が強すぎたというべきだろうか……「紀美ちゃん?」悟は呆然としていた紀美子に呼びかけた。我に返った紀美子の顔には少し気まずさが浮かび、「ごめん、子供達が試験に合格したのはちょっと意外すぎて、つい……高橋校長、すぐにでも転校と入学手続きを進めますので、子供達のこと、宜しくお願いしますね」と頼んだ。「ご遠慮なさらず、我々としても必ずこの子達を立派に育成します」この件が落ち着いてから、紀美子は杉浦佳世子と露間朔也に報告の連絡を入れた。佳世子はそのまま紀美子と朔也とのグループチャットを立ち上げた。「紀美子、おめでとう!今夜はお祝いのパーティをしよう!」「俺も賛成!2人の子供にとって人生初めてのマイルストーンだし、夜は俺がでっかいお祝いのパーティを手配するから!」紀美子は「???」と戸惑った。傍にいる子供たちの嬉しい姿、そしてグループチャットでの佳世子と朔也によ
入江紀美子は笑って答えた。「お兄ちゃん、私はそこまでか弱くないから。お兄ちゃんが全然来ないから電話をしようとしたところだよ」渡辺翔太は甘やかした顔で、「迷子になったとでも心配してるのか?」と聞いた。「分からないよ?」紀美子は冗談を言った。「妹がこんなに賢いから、兄もバカでいられないぞ。さぁ、上がろう」「うん!」その時、道路の向こう側にて。紀美子と翔太の挙動は、車の中に座っていた森川晋太郎の目に入った。彼は太ももに置いていた細長い指を次第に握り緊め、俊美な顔が段々と冷たくなった。隣にいた田中晴は彼の反応を見て、慌てて森川念江を覗いた。「念江くん、行こうか?レストランに着いたよ」念江は元気がなさそうに首を垂らしていた。晴の話を聞いて、彼はゆっくりと頭を上げ、ワンテンポ遅れて返事した。「……うん」晴は晋太郎の顔を覗いて、眉間に興奮が浮かんだ。これはこれは、今夜はまた晋太郎のやきもちが見れるぞ!晴は念江を連れて車を降りて、晋太郎がついてきていないのを見て、わざと見ぬふりをして口を開いた。「晋太郎、何してるの、置いていくよ?」晋太郎はレストランの方へ投げていた視線を引き戻し、ドアを開けて車を降りた。そして何も言わずにチャイルドレストランへ歩き出した。晴は必死に口元の笑みを堪えて、念江の手を繋いでついていった。念江は晴の歩幅の大きさについて行けなくて、「晴おじさん、ちょっと歩くのが速すぎ……」と文句を言った。晴は足を止め、念江を見て気まずそうに笑った。「ごめん、おじさんは自分の脚の長さを忘れていた」「……」念江は足が痛くて歩けなかったのであって、追いつかないわけではなかった。チャイルドレストランに入って、晋太郎の視線はそれとなく紀美子の姿を探していた。しかし一周見渡っても、彼女の姿はなかった。パーティルームからゆみのはしゃぎ声が聞こえてくるまでーー晋太郎はパーティルームの方を眺めて、中にいた人達が見えた瞬間、彼の瞳は急に引き締まった。晴は晋太郎の視線を辿って見ると、紀美子達の姿が見えた。紀美子と関係の深い男が三人も揃っていたのを見て、晴の瞳が震えた。おまけに杉浦佳世子もいた!しかし佳世子がいれば、晴がすぐに絡まる口実ができた。
田中晴はまるでその言葉を待っていたかのように、素早く森川念江を入江紀美子に預けて、「ならお言葉に甘えて」と言った。そう言って、晴は杉浦佳世子に話かけに行った。紀美子は念江を抱えて、よそよそしく森川晋太郎を見て、「もしよければ、座って」と言った。晋太郎はまわりにいた紀美子と多少関わりのある3人の男達を見回った。彼は冷たく皮肉を言った。「俺はどこに座るべきだと思う?」紀美子は少し眉を寄せて、「どういう意味?」と聞いた。「俺は君の現任者の渡辺翔太の隣に座るべきか、それとも君と曖昧な関係を持つ露間朔也の隣に座るべきか?或いは、君の子供達に「お父さん」と呼ばれ、君と謎の関係を持つ塚原悟の隣?」紀美子の顔が曇り、「晋太郎、あなたは……」彼女は話を途中で打ち切り、言い出さなかった「おかしい」という言葉を無理やりに飲み込んだ。念江が傍にいるので、彼女はあんな酷い言葉を口にしたくなかった。朔也は不満をこぼした。「森川社長が参加したくなかったら、無理せずに帰ればいいじゃない?」晋太郎は冷たく朔也を睨んだ。彼はあまり気にせずに、隣の椅子を引っ張ってきてテーブルの傍に座った。念江は小さな冷たい手を紀美子の手の上に置き、「お母さんが疲れるから、僕を抱えてないで下ろしていいよ。お母さんの怪我はきっとまだ治っていないし、これ以上お母さんを痛くしたくない」と言った。紀美子は頷き、念江を下ろして、「念江、最近はちゃんとご飯食べてないの?」と聞いた。念江は無理やり笑顔を作り出して、「そんなことないよ、ちょっと寝不足なだけ、お母さんは心配しないで」と元気のない声で答えた。紀美子はまだ念江が心配だったが、彼の傍にいて世話をすることができないので、それ以上聞くのをやめた。3人の子供達が遊び出したので、紀美子は改めて翔太の隣に座った。朔也も近づいて来て、紀美子の左側に座った。そうして、紀美子は翔太と朔也の真ん中に挟まれることになった。3人が肩を並べて座ったのを見て、晋太郎の顔は酷く曇った。彼は心の中の怒りを堪えながら、「随分と中がいいんだな」と冷やかした。「森川社長はやきもちしてるのか?」朔也は怖いもの知らずに軽く呟いた。「仕方ないね、俺達の関係は、あな
「違うわ」入江紀美子は説明した。「子供達が幼稚園から小学校へ飛び級したお祝い会よ」「佑樹くんとゆみちゃんも飛び級した?」田中晴は驚いた。「念江くんも飛び級したんだよ!」杉浦佳世子は白い目で、「あなたと何の関係があるの?」とツッコんだ。「もちろんあるさ、子供達がこんなに賢いのは、紀美子さんと晋太郎の遺伝子が強すぎた証拠だ!俺もこの2人から経験を教わって、将来俺達の子供もこんなに優秀に育てる!」佳世子は顔が赤く染まって、「恥ずかしくないの?!」と聞いた。「全然恥ずかしくない!」晴は答えた。「俺は将来の計画を立てているんだ。」そう言って、晴は渡辺翔太に、「翔太さん、どう思う?」と聞いた。翔太は怒りを抑えて晴に、「佑樹とゆみは俺の子だ」隣にいた露間朔也はその話を聞いて、思わず目を大きく開いた。自分はとんでもない噂を聞き損ねた?!まさかGが自分の兄と手を組んで晋太郎の前で演技を?!鋭い目を持つ晴が朔也の表情を捉えて、眼底に一抹の戸惑いが浮かんだ。朔也はそのことを知らなかった?そんなはずはないが……朔也は紀美子のパートナーで、そして友達でもあるのに、子供達と翔太の関係を知らないわけがない。晴は朔也を見て、「朔也さん、下戸なのにまだ酒を飲んでるのか?前回の失態にはまだ懲りてない?」と聞いた。朔也は晴を見つめて、「何だと?」と反発した。晴は何も無かったのように改めて言った。「あなたは酒が弱いといってるんだよ!」「ふざけんな!」朔也は勝負欲を掻きたてられ、「俺が酒弱いと言ったのは、お前が初めてだな!何が前回の失態だ!文句あるなら酒でタイマンだ!」晴の眼底に一抹の鋭さが浮かんだ。今夜必ず朔也から何らかの情報を聞き出してみる!「いいさ!地獄まで付き合ってやる!」朔也は怒りを帯びて酒を注文し、晴と勝負することにした。森川晋太郎と翔太との喧嘩が打ち切られたので、紀美子は慌てて翔太の方を見た。「子供達を見てきて」翔太も今日と言う日に晋太郎と喧嘩を繰り広げるつもりがなかった。彼は立ち上がり、子供達の遊びを見守りに行った。佳世子はその隙を掴んで、ワインを持って紀美子に、「紀美子、一緒に飲もう」と勧め
森川次郎は落ち着いて言った。「俺に手を出す前に、まずは入江さんの意見を聞くべきじゃないか?」「俺が貴様をやっつけるのに、紀美子の意見を聞く必要はない!」「上等だ!待ってる!」言い終わって、次郎は電話を切った。森川晋太郎は携帯を握りしめ、帯びていた低い気圧が全身を覆った。今の彼が入江紀美子に不満を抱いていたとしても、絶対に指一本でも次郎に彼女を触れさせない。パーティルームにて。紀美子は立ち上がってトイレに行こうとした。ドアをでたばかりで、レストランの従業員にトイレはどこかと聞こうとした途端、腕を掴まれた。彼女が反応する前に、一つの個室に引っ張りこまれた。ドアが締められ、彼女は驚いて見上げると、晋太郎の怒りを帯びた顔が目に映った。紀美子は慌てて手を抜き、眉を寄せながら問い詰めた。「晋太郎、あなたは少しでも紳士になれないの?」「お前は次郎と何があったのか教えろ!」晋太郎の凍てついた目線は人を殺せそうだった。紀美子は極めて冷静に聞き返した。「私と次郎との間に何があったか、あなたに教える必要はないわ」「紀美子、あいつはお前が想像している千倍も危険だ!」晋太郎は怒りを抑えながら言った。紀美子は笑って、「私にそれを教えてどうするの?私が次郎になにかされるとでも心配してるの?」と聞いた。晋太郎の目線が固まり、「俺はただあいつがどれだけ危険かを注意しているだけ……」と言った。「あなたからの注意なんか要らないわ!」紀美子は晋太郎の話を打ち切った。「晋太郎、あなたは私の生死はあなたと関係ないと言った以上、もう私とよその人とのことを邪魔しないで!」「どうしてもあいつと接触したいのか?」「そうよ!」紀美子はきっぱりと言った。「だから、もうこれ以上聞かないで!」晋太郎は怒りの中に不思議な感情が混じっていた。彼は紀美子の毅然とした顔を見つめて、急に怒りを収めた。彼は口を開いて、「まさかたった数日で、もうあいつに恋をしたのか?」と皮肉を言った。紀美子は眉を寄せ、「あなたから見れば、男と女の間には、単純な友情はもう存在しないと思ってるの?」晋太郎の目線が急に冷たくなり、「あいつのような人間と友達になるなんて、お前は一人目だ」「そこま
露間朔也は心の中で「フン」と鼻を鳴らし、彼は酔ったのは確かだが、脳はまだしっかりしていた!これまで受けてきた酒の試練は伊達ではなかった!田中晴が自分の話を誘いだそうとしているなら、ちょっと変わった話をしてやろうじゃないか!晴が返事していないうちに、朔也は続けて言った。「翔太さんが紀美子に少し甘えすぎていると思わないか?」「紀美子を?」晴はクスッと笑って、「翔太はまだ紀美子と一緒に住んでいなくて、彼女の世話もしていないのに、何が甘えすぎだ?」「甘えるにも色んな種類があるさ!尊重も甘えの一つだよ!あなたは本当に物分かりが悪いね」朔也は晴に白い眼を向けた。「……」それを言うなら確かにそうだった。自由や信頼を与えるのも愛し方の一つかもしれない。晴は目で朔也をチェックして、彼が確かに酔っぱらっているのを見て、疑いを打ち消した。晴は暫く考えてから、また口を開いた。「紀美子が既に家庭持ちなのに、お前は何故人の家に住んでるんだ?」朔也は「俺が住んじゃいけないのか?」と聞き返した。「翔太さんでさえ何の文句も言っていないし、お前に聞かれる筋合いはどこにある?」「俺はてっきりお前は紀美子のことが好きで、彼女と一緒になりたいから彼女の家に住み込んだと思ってた」「俺が好きな人は、他にいるさ」朔也の眼底に一抹の寂しさが浮かび、「残念なことに、相手は既に結婚した」「その人って?男?女?」「死ね、俺は真っ直ぐだぞ!!」朔也は晴を見て、「俺が紀美子の家に住み着いたのは、晋太郎に彼女に近づける考えを絶たせるためだった!」「翔太がいる以上、お前はそんなことをして意味があるのか?」「翔太さんがいない時、俺が紀美子の盾になる!」晴は笑って、「つまり紀美子はお前の中ではただの仲の良い友達か」「ただ仲がいいでは済まないぞ、彼女がいなかったら、今の俺がいない」朔也は、自分が紀美子の家に住み着いた本当の原因を隠すのを止めた。渡辺翔太も乗り出して子供達が自分のものだと言っていたのに、自分もこれ以上芝居を続ける必要がなくなった。森川晋太郎に虎視眈々とされるのも相当疲れた。晴は眉を挙げて、どうやら意外な収穫があったようっだ。二人はまだ話の途中だったが、入江紀美子は晋太郎と前後に