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第33話 音信不通になった

 入江紀美子はあざ笑った。「なら彼女をちゃんと管理してね。何かあってすぐ私の所に暴れに来られたら困ります!」

言い終わると、紀美子は事務所を飛び出した。

残された森川晋太郎は一人で眉を寄せてその場で立ち尽くした。

暫くして、晋太郎は杉本肇に電話をかけた。「調べた結果は?」

肇「若様、副院長が亡くなった経緯は調べられませんでしたが、当時の狛村さんの先生が見つかりましたその先生は、狛村さんは学生時代にいじめを受け、心理的な傷が残りましたが、病院にもみ消されたと言っています。」

晋太郎は考え込んだ。

「あともう一件」肇は続けて言った。

「言え」

「院長の話によると、当時耳たぶにホクロがある子は『綾子』という名前で、『狛村』は引き取られた後に改名したもののはずです」

「彼女の養父母と連絡を取れたか?」晋太郎は眉をきつく寄せた。

肇「この前連絡を入れておきましたが、うちに人間がそちらに行ったら、既に引っ越していて音信不通になりました」

「調べ続けろ!」

トントンーー

晋太郎の話が終わったところで、ドアの方からノックの音がした。

「社長!早く服装部にお越しください!狛村副部長が急に倒れました!」

……

退勤の時間になり、紀美子は事務所に誰もいないのを見て、一人で会社を出た。

変わったのは、今日は肇も会社の入り口で待機していなかったことだ。

紀美子はちょっと嬉しくて、路肩でタクシーをとめて母の見舞いに行こうとした。

十分くらい待ってもタクシーは来なかったが、一台のランボルギーニが彼女の前で止まった。

窓ガラスが降ろされ、爽やかで少し見覚えのあるハンサムな顔が目に映った。「入江さん?」

紀美子は少し驚いて、脳内で素早くその顔の持ち主を検索した。

「渡辺さん?」

渡辺翔太は笑顔で優しそうな声で「どこかに行こうとしてる?送ってあげるよ」

「あ、大丈夫です、自分でタクシーを拾っていきますから」紀美子は軽く断った。

翔太「ここからタクシーで行ったら1時間以上はかかるよ。なにせ今は退勤時間のピークだから」

紀美子「……」

早く病院に着く為に、紀美子は翔太の車に乗ることにした。

シートベルトを締めてから、翔太は微笑んで「どこに行く?」と聞かれた。

紀美子「ありがとうございます、渡辺さん。帝都私立病院でお願いします。」

「礼はいらないよ
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