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第298話 あなたと一緒にいますよ

白芷は全身を震わせていた。紀美子は彼女を抱きしめ、驚きながらレストランの入り口の方を見た。

白芷は先ほど男性を見た途端にこうなってしまったようだ。

だが、その男性はすでに姿を消していた。

紀美子は深く考え込むことはしなかった。白芷が他の男性を見ても発病することがあったからだ。

一方、近くの車の中で。

次郎は冷たい目で地面にしゃがみ込んでいる白芷を見つめていた。

白芷の隣にいる女性については知っていた、晋太郎が以前愛人として抱いていた女性だ。

次郎は冷笑を浮かべてメガネを外し、ゆっくりとレンズクリーナーでレンズを拭いた。

彼は全く予想していなかった、彼女がまだ生きているなんて……

数分後、次郎は再びメガネをかけ、横にある携帯電話が鳴るのを冷たく一瞥した。

電話は静恵からのものだったため、ゆっくりと手を伸ばして受話した。

通話が繋がると、静恵の優しい声が聞こえてきた。「森川さん、今夜は時間がありますか?一杯飲みませんか?」

次郎は口元を歪めて答えた。「もちろんだ、場所を教えてくれ。今から行くよ」

……

午後七時半。

次郎は約束通り、静恵とバーで会った。

次郎は優雅な笑みを浮かべて静恵の前に歩み寄り、「待たせてしまったな」と言った。

静恵は次郎を見て微笑み、「いいえ、私もちょうど来たばかりです」と言った。

次郎はコートを脱いで椅子に座り、「狛村さん、楽しそうだね。でも残念ながら私はアルコールが弱くて、あなたの楽しみを邪魔してしまうかもしれないよ」と言った。

静恵の目が一瞬喜びで輝いた。アルコールが苦手というのは彼女の意囲にぴったりではないか!

彼女の目的は二つあった。

一つ目は、前回次郎が晋太郎の名前を出すと困った顔をする理由を突き止めること。二つ目は、その機会を利用して事実上の関係を作ることだった。

渡辺家が最近彼女をいつも責めるので、自分で進めるしかなかったのだ!

静恵は理解ある態度を示した。「森川さん、そんなに遠慮しなくてもいいですよ。私が森川さんの好みを事前に聞いていなかったのが悪いんです」

次郎は笑ってテーブルの上のワインボトルを持ち上げて静恵に注ぎ、「狛村さん、女性なんだから男性の意見を気にすることはないよ。狛村さんが私を嫌がらなければそれでいい」

言ってから、次郎はワイングラスを静恵に差し出し、自分もグラスを
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