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第567話

Penulis: リンフェイ
「これこそ私があなたを気に入っているところなの。人によっては相手が結婚しているかどうか無視して好きになったら真実の愛だとかなんとか言って、人の結婚をめちゃくちゃにしようとする人間もいるでしょう。ああいう人って、私本当に嫌いなのよね」

彼女が言ったことは心から出て来た言葉だった。

義妹である姫華の人となりがかなり良いからこそ、彼女は夫側の家族たちと同じように、まるで血の繋がりがあるかのように義妹に接しているのだ。

それがもしクズのような人間であれば、彼女はこのような人間の相手などしたくない。

「お義姉さん、私はもう大丈夫だから、もう一度寝てちょうだい。お兄ちゃんにも、私のことは心配しないでって伝えて。私だって別に結婚できないような女じゃないんだからね」

「わかったわ、じゃあ私は部屋に戻るわね。あなたももう一度寝直したら?」

「私は寝なくていいや。後で唯花を誘って遊んでくる。そうだわ、昨日うちのパティシエが作ったあのお菓子とても美味しかったわね。残ってるかどうかわからないけど、唯花と明凛の分を包んで持っていってあげようっと。あの子たちは二人とも甘いものが大好物だから」

それは彼女の義姉と同じだった。

神崎家には本来パティシエは雇っておらず、ずっとシェフがお菓子作りも担当していた。しかし、理紗が結婚して神崎家にやってきてから、彼女の兄が特別に理紗のために腕の良いパティシエを雇ってきたのだ。理紗のために様々なお菓子を作る専属パティシエだ。

理紗は笑って言った。「私も食べてみたけど、とっても美味しかったわ。パティシエにはまた新しく今日デザートをお願いしていたの。下におりてみて、きっとできているはずよ。多めに唯花さんたちに持って行ってあげて。もし彼女が好きなら、毎日届けさせてもいいわよ」

内海唯花がもしかすると夫の従兄妹かもしれないので、直接はまだ会ったことはないが、唯花に対して好感を抱いているのだ。

「彼女はきっと好きよ」

唯花と明凛の話題になり、姫華は話す時に笑顔を浮かべていた。あの二人はどちらも食いしん坊だから、確かに親友になるのは自然のことだろう。

性格もだいたい似ている。

話題が逸れた後、姫華は理仁が結婚していることはさほど気にしなくなったので、理紗は安心して自分の部屋に戻っていった。

玲凰は部屋で妻が戻って来るのを待っていた。

「姫華
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川端良子
毎日声を出して笑って居ます、面白い!姫華ちゃんが悪役令嬢じゃ無くて嬉しい
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    明凛は姫華に激しく揺さぶられ、目が回りそうになった。彼女は姫華の手を押しながら慌てて言った。「姫華、私は九条さんとはただ一度お見合いをしただけよ。それ以外何もないの。私が聞いてもきっと教えてくれないわよ」「明凛、あの九条悟とお見合いしたの?」姫華は驚きのあまり、声を上げた。「九条悟と言ったら、星城で最もハイスペックな独身男性の一人よ」明凛が悟とお見合いできる資格があるかどうかについては、姫華は疑わなかった。なぜなら、明凛は星城にある富豪家の娘で、そのおばが金城家の奥様だからだ。上流社会のパーティーに、そのおばはよく明凛を連れて行っていた。しかし、明凛が大塚夫人の誕生日パーティーで床に寝転がるという大胆な行動に出てからというもの、おばはもう彼女を連れてパーティーへ行かなくなった。「唯花の旦那さんが紹介してくれたのよ」唯花は笑って、大人しく白状した。「うちの旦那は九条さんを完全に味方につけたようね。九条さんが仕事が忙しすぎて、まだ独身なことを知って、明凛ならちょうどふさわしいと思ったのよ。それで、勇気を出してその赤い糸を引こうとしてみたの」「唯花、旦那さんもなかなかすごい人だわ。九条さんを味方につけられるなんてね。どうりで結城グループでも、うまくやっていけるわけね。九条さんは結城社長の最も信頼する人物なの。結城グループで結城家の他の坊ちゃんたちよりも高い地位についているのよ。同じ会社の同僚だけでなく、私たちのような人間でも彼に贔屓されたいと思っているわ。残念だけど、彼は結城社長の親友で、結城社長が私のことが好きじゃないから、九条さんも私を見るたびに、すぐ避けてしまうの。だからこちら側についてもらうことなんかできやしないわ」明凛と唯花は言葉を失った。九条悟ってそんなにすごい人なのか。姫華のようなお嬢様でも彼を味方につけたいと思うとは。九条悟でもこんな感じだったら、結城社長を味方につけてしまえば……この世にできないことなどなくなるじゃないか!唯花は思わず、誰かが結城社長に贔屓されたら、星城で無敵になるだろうと思った。「明凛、九条さんって人、どうだった?」姫華は今すぐにでも悟を通じて結城家の若奥様の正体を知りたかった。たとえ負けたとしても、どんな人物に負けたのかをはっきりと知りたいのだ。明凛は手を広げて見せた。「

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第570話

    姫華はお茶を一杯飲んだ後、つらそうに口を開いて言った。「唯花、結城社長、本当に結婚していたのよ」唯花はそれを聞いて目をパチパチさせた。「この間、彼は結婚指輪をはめていたって言ってなかったっけ?」それなのにどうしてまた結城社長が結婚しているなどと今日も言ってきたのだろうか。姫華は少し黙ってから言った。「彼が結婚指輪をしているのは見たけど、心の中では少しそうじゃないって期待もしていたの。彼がわざと指輪をつけているのを見せて私を諦めさせようとしているんじゃないかって」明凛は彼女に尋ねた。「もう確定したの?結城社長が本当に既婚者だって」姫華は頷いてそれに答えた。「結城社長がインスタで自分は結婚しているっていうのを公表したのよ。これは今星城の上流社会でかなりの衝撃を与えているわ。多くの人が結城社長の奥さんは誰なのか知りたがっているの。今も芸能記者たちが結城グループと結城社長の邸宅を見張って、一番最初にビッグニュースを手に入れようと争っているわよ。だけど、ここに来る前にどんな報道もされていないから、きっと何も情報が得られてないんでしょうね」唯花は驚いて一瞬言葉が出せなかった。「メディアはそんなに彼の結婚に注目してるわけ?」明凛と姫華は同時に唯花のほうを見た。唯花は気まずくなってハハハと笑った。「私、ずっと結城社長なんて全然知らなかったし、私からはかなり遠い存在だって思ってるし、一生関わりを持つような相手ではないでしょう。だから私がこんなことに注目するはずないじゃない。そんな時間があったら、招き猫でも作ってお金を稼いでいたほうがマシよ。明凛が彼の噂をするのが好きで、よく私に話していたから、彼のことを知ってるだけよ」姫華「……星城一のトップ富豪である結城御曹司で、かつ結城グループのトップに立つ人よ。高貴な身分だし、おまけにかなりのイケメンでしょ、ずっと独身を貫いていて、恋愛話すらも聞いたことがなかったのに、突然『結婚しました』だなんて宣言したんだから、そのひとことで世間はかなり大騒ぎなのよ。だから記者たちはどこの令嬢が結城社長の妻になるっていう、そんな幸運の持ち主なのか知りたくて知りたくてたまらないの。芸能記者たちだけじゃなく、私たちだって知りたいのよ。だけど、お兄ちゃんでも調べることができなかったわ。一体結城家の若奥様になったのはど

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第569話

    姫華はただ自分の見間違いだと思った。理仁はいつもあのロールスロイスに乗っているのだ。それにいつも黒い何台かのボディーガードの車もしっかりと後についている。また、理仁がこんなところに現れるわけもない。彼の家族で、星城高校に通っている人もいない。それで、姫華はさっきのことを記憶に留めなかった。唯花の本屋の前に着くと、彼女は車を止めた。すると、唯花が陽を抱っこして店から出てきた。「唯花、私が来たってわかったの?」姫華は車を降りながら笑って言った。「しかもわざわざ陽ちゃんと一緒に出迎えに来てくれるなんてね」「そうじゃないのよ。これから陽ちゃんを連れてスーパーに行こうと思って」姫華はやって来て、陽を抱っこしようと手を伸ばしたが、陽のほうはぷいっとそっぽを向いてしまって唯花の首にしっかりと抱きつき「おばたんがいい」と言った。それで唯花はどういうことか説明した。「陽ちゃんは今だいぶ良くなったんだけど、いつもよく一緒にいる人とじゃないとまだ嫌がるのよ」「あの佐々木一家のクズ共のせいね!」姫華は可愛い陽を抱っこすることができず、思わずまた佐々木家を罵った。そして、尋ねた。「お姉さんはあのクズと離婚できた?」「したわ。昨日離婚したの。財産分与した分もちゃんと口座に入金されたわ。住んでいた家の内装費だってしっかりといただいたしね」唯花は陽を抱っこしたまま店に戻った。姫華が来たので、彼女はひとまずスーパーに行くのはやめることにしたのだ。「こんなに朝早く来るなんて、鑑定結果が出たの?」姫華一人だけで、神崎夫人の姿は見えなかった。恐らく、結果が出て彼女と神崎夫人には血縁関係がなかったのだろう。「結果はまだ出てないの。お母さんが明日の昼に出かけて取りに行くって。私今日あんまり気分が良くなくて、あなたの所に来たってわけ。あなたとおしゃべりしたら気分も良くなるからね。お母さんも一緒に来たがっていたんだけど、来ないでって言ったの。だって、私がこの鬱憤をスッキリ晴らしたいんだもん」姫華は理仁に長年恋焦がれていたので、短い時間で彼への気持を整理しろと言われても、それはなかなか難しい問題なのだ。彼女は辛く、心に傷を負っていたが、家族の前では泣きたくないのだった。それは家族に心配をかけたくないからだ。唯花は彼女の気持ちを理解してくれる

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第568話

    玲凰はため息をついた。そうだ、人生には後悔はつきものなのだ。……唯花は姉が借りているマンションへと向かった。そして、清水と陽を連れて、理仁と一緒に店に出勤した。彼女は理仁の車に座ってはいなかったが、彼が車で彼女の車の後に続いて送ると言ってきかないので、それをおとなしく受け入れるしかなかった。陽は母親と一緒にいたことで、だいぶ落ち着きを取り戻していた。それに清水に遊んでもらうこともまた慣れたので、唯月はようやく働き始めることができたのだ。試用期間はまだ終わっていないので、ずっと休みを申請するわけにもいかなかった。店に到着してすぐ、理仁は唯花に催促した。「エタニティリングを早く」唯花「……つけるわ、今すぐつけるから。今後はずっとこの手につけ続けるって約束するから」そして、彼女はレジの前に行き、鍵で引き出しを開けた。あの相当に価値のあるエタニティリングはその引き出しの奥の方におとなしく眠っていた。それを見た理仁の顔色が闇夜の如く暗くなっていた。彼女はなんと適当なのだろうか。唯花はその指輪を取り出すと、再び薬指にはめ直した。昨夜、とりあえず応急措置でつけていたあのゴールドの指輪は、この日家を出る前にすでに外してあった。「ほら、確認した?」唯花はわざとらしく自分の手を彼に見せびらかした。理仁はこれでようやく満足してくれた。「ほらほら、早く会社に向かって。送れちゃうわよ」理仁「……」いつもいつも、早く早くと彼を追い出そうとするよな!彼女はちっとも彼のことを恋しいと思ってくれないのか。「陽ちゃん」明凛が店の奥から出てきて、陽が来たのを見ると、笑顔で向かってきて清水のもとから陽を抱き上げた。そして、理仁に挨拶代わりに少し会釈をした。本来は妻からキスの一つでももらってから出勤するつもりだったが、明凛が出てきたので、この淡い期待は悲しくも消し去るしかなかった。理仁は淡々と「どうも」と明凛に返事し、挨拶を済ませてから、すでに自分の近くからは去っていたあの人にもう一回意味深な目線をやり、背中を向けて店を去っていった。数歩進んで、また足を止め、振り返って唯花のほうを見た。明凛が唯花がつけているあのダイヤの指輪を見てきたので、唯花は手をまっすぐと伸ばして親友にそれをじっくりと見せていた。理仁

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