第4話

この言葉が出るやいなや、会場はしんと静まり返り、やがてざわざわと囁き声が漏れ出し、周囲の視線が変わったのを感じた。

清水西子の顔から血の気が引き、蒼白になった。彼女は素早く手首のブレスレットを奪い返し、怒りを込めて叫んだ。「何を馬鹿なことを言ってるの！これは明らかにラクダの骨よ！一体誰に言わされたの、佐藤希の仕業か！」

鑑定士は無実の顔で言った。「私は専門家ですよ、濡れ衣を着せないでください。最初からこのブレスレットには違和感を覚えていたんです。私はチベットに長く滞在してたから、ラクダの骨と人の骨くらいは見分けがつきますよ」

「これ以上誹謗するなら告訴するわ！」

清水西子は尖った声で喚いた。「何が鑑定士よ、詐欺師なんだよ！今度はこんな場所まで騙しに来るなんて！」

「私はただ自分の見解を言います。あなたは自分の言葉に責任を持ってください」

鑑定士は胸につけたカメラを指差し、毅然とした態度でいった。「この場面、全部撮影してますからね。評判を落とすようなことはしません。信じないなら専門家に鑑定を頼むといいです！」

「誰か！今すぐこいつを連れ出せ！」

清水西子は見境なく怒鳴り散らした。「そのカメラも取り上げろ！」

警備員が彼に近づこうとした時、平田船男は茫然から我に返り、震えた声で制止した。「これは本当に人骨なのか、もう一度確認してくれ」

「間違いなく人の骨です！絶対にそうです！」

鑑定士はもがきながら叫んだ。「平田社長、人の骨は違法です。一般人にはわからないでしょうが、あなたは騙されてます！これは悪意に満ちた仕業で、なんとも酷い話です！」

再び会場にざわめきが広がり、平田船男は呆然とブレスレットを見つめ、震えた声で清水西子に問いかけた。「これ、誰の骨なんだ？」

「船男、彼の言葉なんて聞かないで。これはラクダの骨に決まってるわ。私たちが違法なことをするわけないじゃない！この人はネットで注目を集めるためのインチキ鑑定士だよ。こんな話を信じられるの？」

清水西子は血の気が引いた顔で人混みを探し、目が伊賀彼雄に留まると、叫んだ。「彼雄、早く来て。手首のブレスレットは一緒に作ったじゃない。この人の中傷を許せる？」

伊賀彼雄はようやくゆっくりと近づき、冷ややかな目で鑑定士を一瞥した。「お前が人の骨だと言ったら俺が信じると思うのか？証拠でもあるのか？」

「信じないなら専門家に鑑定してもらえばいいです！」

「何を企んでるのかわからないが、証拠もなしに妄言を吐くなんて大胆な奴だ」

伊賀彼雄はじっと鑑定士を睨んだ。「これは佐藤希の仕業か？

まずあの狂女を呼んで騒ぎを起こさせ、それからこんな手を使うなんて、何を企んでる？西子と船男の婚約を壊したいのか？船男がまだ彼女に騙されるとでも思っているのか？」

伊賀彼雄は声を低めて続けた。「船男をこんな目に遭わせた上で、まだ彼を苦しめようとしてるのか？彼を破滅させることが目的なのか？

そして、お前だ。お前の動画を見たことがある。話題性で視聴者を集めて、どんな仕事でも引き受けてるくせに、金のために良心を捨てるとはな」

鑑定士は不満げに弁解しようとしたが、すぐに警備員に引きずられ、周囲の客が困惑する中で姿を消した。

平田船男は何も感じないかのように、三年間身に着けてきたそのブレスレットをただじっと見つめ、震えた手を抑えきれなかった。

伊賀彼雄が彼の肩を叩き、笑顔で言った。「何だ、こんな言葉を信じてるんじゃないだろう？

佐藤希はお前の婚約の話を聞いて戻ってきたに違いない。そしてこんな方法でお前と西子の婚約を妨害しようとしてる。三年間母親を放置しておきながら、今度は彼女を利用するなんて、本当に恩知らずだな。

安心して西子と結婚しろよ。俺が佐藤希を連れてきて、叔母さんの墓前で彼女に謝らせてやるさ」

あの時、私の痕跡はすべて消し去られ、唯一残ったものは私の大腿骨から作られた十二の珠だけだった。

この世にもう私の存在はなく、唯一の写真さえも引き裂かれた。

彼が私を見つけに来るなら、地獄まで堕ちるしかないんだ。

婚約パーティーは中断され、平田船男は興味を失い、電話を受けると急いで立ち去った。去る時も手の中にはまだあのブレスレットが握られていた。

運転手が行き先を尋ねると、彼はブレスレットをじっと見つめ、かすかに震えた声で答えた。「骨董の鑑定機関に行ってくれ」

鑑定の結果、それは確かに人の骨だと判明した。

さらに、それが私の骨であることも。