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13. 決意

ผู้เขียน: Mr.Z
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-03 21:29:46

 イヤな雰囲気が画面先から漂う。

『本日2度目の会見となりますが、ここではこの度発表した"経済対策の詳細"についてお話したいと思います。もう気付かれた方々もいると思いますが、これは"ただの経済政策"ではありません』

 これ以上"この会見"を見るのを、どこか拒否しようとする自分がいた。次の言葉を聞くと、たぶんもう戻れない、今までの生活に。そんな気がした。

『これは"あなた方自身に経済になってもらう新政策"となっております』

 2030年9月17日火曜日。きっと"この日"を忘れる事は無い。予想をはるかに超えた速さで"ブラック・シンギュラリティ"が起きた事を。

 "ブラック・シンギュラリティ"は、最近シンギュラリティの暗い側面をそう呼ぶようになった。これが起きるとしても、"5%~10%の確率だろう"と予測されていたが、その確率を遥かに凌駕していた。

「私たち自身が⋯⋯」

 ユキの握る力がより強まっていく。俺は黙って、手を握り返す事しかできなかった。シンヤは小さな声で「やっぱり終わってんなコイツ」と。

 数秒の間の後、総理は突然"ある場所のカメラ映像"を流し始めた。その中の1か所に、見覚えがある場所があった。

「おい、これ!!」

 真っ先にシンヤが叫ぶ。ここにいる3人がついさっきまでいた場所だった。

『これは"赤い発令"が行われている施設内の一部となります。先ほど私は"もう気付かれた方々もいる"と発言しましたが、これらの存在をその場で実際に見たり、ネット上で見た人もいることでしょう』

 総理がそう言うと、"今日何度も俺たちを襲ったアレ"がカメラ映像内でうろついていた。"赤いヤツ"も数か所で映り、そのうち1体は"陸田先輩の姿をしたアレ"だった。

「陸田⋯⋯先輩」

 言葉にならない怒りが上がってくるのを感じた。唇を強く噛み締める。その思いを踏みにじる様に、総理は次々と話していく。

『名前は"Next time Living the Things"、意味は"次を生きるモノたち"、私はそれらを"ネルト(NeLT)"と呼んでいます。ネルトはAI同士で創造された新たな存在であり、人間の皆様自身を媒体として、これからの次世代を寿命やお金に縛られる事無く、代わりに生きてくれるのです』

 さっきからコイツ⋯⋯何を言ってる? これは本当に現実? 俺はまだ寝ているんじゃ⋯⋯

 ネルトとか人間を
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  • フォールン・イノベーション -2030-   25. 契約

     俺は食いながらさっきの事が気になっていた。"すぐ僕のところに来るようになる"って、どういう意味だったんだ⋯⋯? それともう一つ。"契約が取れた"とか言っていた。あれも何のことだ? 分からないままに、ユエさんと話を続けた。今後の事や、他の国家研究員の事など。連絡を取れない人ばかりらしい。これは今はどうしようも無い。とりあえず、国会議事堂に近付く方法を考えるしかなかった。 あの輝星竜に近付くには、ズノウを幾ら使おうと、まだ届かない距離らしい。これについて、"裏部さん"という研究員が詳しいそうだ。輝星竜の対処法を何か知っているはず、とユエさんは言う。 ⋯⋯総理に近付くためのカギを握る人物。だが、やっぱり裏部さんも音信不通らしい。そのために、昨日は裏部さんと関係が深かった国家研究員たちと、ユエさんは会おうとしてたってわけだ。まぁ、その肝心な人たちは"もう人では無かった"んだけど⋯⋯。 「どんな事をしてでも探し出してやる」と、ユエさんはさっき車の方へと行ってしまい、確かな情報が一旦集まるまで待機となった。どれだけAIが発達しても、こればかりはすぐには分からない。SNSでいろいろ見ているが、これといって良い情報は見当たらない。あるのは、ヤツらの簡易的な情報やUnRuleについてがほとんどで、ヤツらの位置情報を報告してくれてる人もいる。中には、赤い発令がされているスカイツリーや都庁へ勇気を出して見に行ってる人も。 今や東京のほとんどの人がUnRuleを入れているようで、それについてよくやり取りされているが、ズノウについての情報はまだ少ししかない。たぶん後で広がっていくとは思うが、分かっている事については俺も情報発信していく事にした。中でも"ELに選ばれた100人"は、今や神のような待遇を受けている場所もあるようで、とんでもない事になっていた。それだけ今を生きる希望だと期待されている。 まぁ気持ちは分かる。いつ殺されるかなんて分からない今、俺だってその立場ならそうなるかもしれない。だが逆を言えば、この立場を悪用するヤツだってもしかしたら今後出てくるかもしれない。SNSの情報やリアルの情報には、常にアンテナを張っておかないと。 ちなみに、ここで俺が「ELの一人です」と言ったらどうなるんだろう? ここではまだELを知らない人が多そうではあるが⋯⋯。なんて考えは無い。

  • フォールン・イノベーション -2030-   24. 不審

    「君たち、どうかしたのか?」 突然の20億に慌てていると、一人が話しかけてきた。ヒゲを生やし、日本人っぽくない顔をした中年男性だった。「あ、いえ、すみません、なんでもないです」「そうか、何か困ったことがあったら言ってくれたまえ。ん? 君は昨日の」 男はユキを見た。「えっと、ありがとうございました。こんな良い場所を教えて下さって」 この人か、ユキが言ってたのは。「あぁいやいや、たまたま空いてたからな。とはいっても、お金は取られるんだが、足りるかね?」「はい、大丈夫です」 代わりに俺が返事をする。「ここは最低でも30万はするぞ。君らが泊まった場所は70万くらいだったか? 高校生か大学生くらいだろうに、本当に大丈夫かね?」「はい。お金はあるみたいなので」「おぉ、それは凄いな。私が呼んだ責任もあるから、初回分は代わりに持とうかと思ったんだが」「大丈夫ですよ、わざわざありがとうございます」 すると男は少し険しい表情になり、「それならあまり言う必要はないかもしれないが、一応念のためだ。もし今後払えないとなれば、すぐに警察が来て連れていかれるそうだ。その先で射殺されたと聞いている。エントランスに表記されているから、確認しておくといい」 ⋯⋯は? 連れていかれて射殺? そんなの聞いた事が無い。 あの時見たアレを思い出した。東京外へ出ようとした人が、次々に警察に射殺されてる映像。結局どこにいても安心できないのか。今後注意しておくに越したことは無い。 会話が終わるタイミングで、入れ替わるように男3人組が乱入してきた。そのうちの"太った眼鏡の男性"が口を開いた。「飯原さん、昨日の契約いけましたよ!」「おぉ、さすがだな、小柴君は」「まぁ僕は天才ですからねぇ~!」 小柴という男は突如こっちへと向く。その目は明らかにユキを見ていた。「昨日困ってそうだったから、彼らにはここを使ってもらってるんだ」 飯原さんの後、俺は軽く挨拶をする。そしたら「約束があるからまた後で」と、飯原さんは下へと降りて行ってしまった。小柴はユキへと寄る。「へぇ~、芸能人やアイドルより可愛くね? なんか動画とか配信とかやってる?」「え⋯⋯特にはやってないです」「もったいな。んじゃ彼氏はいる? まさかコイツらのどっちかが彼氏とか?」 なんだこいつは、急にナンパか? ま

  • フォールン・イノベーション -2030-   23. 大金

     41階に降りてみると、30人くらいだろうか? 結構な人数が食べながら談笑していた。この階はレストランが並んでおり、人がゆったりする場所、いわゆるメインダイニングって場所のようだ。下の40階まで行くと、このホテルのロビーがあるらしい。 思い出したぞ。確か前までここは、"ブルガリホテル東京"っていうホテルじゃなかったか? とんでもなくクソ高いホテルだったはずだ。中はかなり改装された跡があり、名前も"ネビュラスホテル東京"に変わっている。黒と紫と青を基調とした、いかにも高級感漂うって感じだが、どこか人間っぽくない無機質さも感じる。 辺りを見回すと、ソファに座ってコーヒーを飲む"一人の白衣の女性"を発見した。あの髪型、顔、服装、どっからどう見ても"あの人"だった。「ユエさん!」「あ、起きたのね」「よかったです! さっき"4206"行ったら返事無くて、心配しました」「わざわざ来たの? そっかごめんね」「それであの⋯⋯その」 俺が言葉に詰まって俯いていると、「な~に俯いてるよ。アオ君の事、分かってるから」「え?」 ユエさんは飲む手を止め、外の景色を眺める。「どっちみち私たちは死ぬ覚悟だったんだから。運よく私が生きちゃっただけ」 その表情はどこか、気丈にふるまってるようにも見えた。大事な人を失うなんて、そうそうに耐えられるものじゃない。「ほら、まだ食べてないんでしょ? 私はいいから、しっかり食べておきなさいな。私が全部出してあげるから」「え!? いや、そんな」「いいの! 若いんだから遠慮しない! ほら、取ってき!」 ユエさんは変わらない様子で対応をしてくれた。この人の精神面の強さに、ただただ尊敬しかない。ここで俺が暗いままでいたら、逆に失礼になる。料理を取りに行く前に俺は、「あのー、ここで一緒に食べていいですか」「ここ? 別に構わないけど、私だったら本当に気にしなくていいのよ」「はい。ただ、ユエさんと話がしたくて」 俺の意見にユキとシンヤも同意した。「⋯⋯そっか。物好きな人ね」 コーヒーを飲みながら、ユエさんはそう言った。少し嬉しそうに見えたのは、俺の気のせいだろうか。 料理を取りに行くと、一つ一つ名産ばかりが使われていた。さすが高級ホテル、どれも高い。おにぎり1つ1000円って、いやどんな物使ってんだよ。 オープンキッチン

  • フォールン・イノベーション -2030-   22. 休息

    「ん~⋯⋯あ、起きた?」「起きた? じゃねぇッ! なんでそんな格好!?」「ここがホテルだから?」「え、ホテル⋯⋯?」「ここは東京ミッドタウン八重洲の中のホテルよ。どこで休もうか悩んでたら、声掛けられたの。ここは今安全だから泊まれるぞって」「へぇ。男の人か?」「うん、なんか優しそうな感じの40代?くらいのおじさん。他にも何人かいたよ」「ふーん⋯⋯ってか、なに乳揉み始めてんだよ」 ユキは突然自分の両方の胸を揉み始めた。急に何やってんだコイツ。「なんかまた大きくなったかなって、ちょっと揉んでみて?」「いや揉まねえし! 横乳見せんな!!」「えへへ、えい!」 笑いながら、今度はピンクの下着姿のまま俺に飛び込んできた。「おい! なにやって」「今日くらいはゆっくりしとこ。今は安全そうだから」 上に乗っかったまま離れようとしない。いろいろヤバいところが当たってるって⋯わざとやってんのか!?「ちょっ! ってかシンヤとユエさんは!?」「他の部屋で休んでる」「なら二人のとこ行くぞ! 一応大丈夫か、確かめないと」「え~、いいでしょ今は」「まぁ後でもゆっくり出来るって! な?」 どうにかくっつき虫を説得し、やっと服を着始める。あのままだと、お互い危ねえって⋯⋯。 時間を見ると、なんと朝の8時半だった。どうやら俺はめちゃくちゃ寝てしまったらしい。ベッドから起き上がって紫の派手な冷蔵庫の中を見ると、大量のジュースと酒と水、冷凍庫には普段買わない高い冷凍食品が入っていた。これは当分暮らすには困らない場所だろうな。 他にも暇しないような娯楽も置かれており、こうなる前に泊まれたらどれだけ楽しめただろうと感じた。何も無かった日に来たかった。 広いバルコニーに出てみる。この部屋はたぶんスイートルームってやつだろう、よくこんないいとこ貸してくれたな。下を眺めてみると人の気配は無く、ヤツらも見当たらなかった。近辺のビルやマンションを見ても、意外と静かなまま。もっと大変な事になってるかと思ったんだけど⋯⋯。「周りに誰か、いる?」 着替え終わったユキが話しかけてくる。「いや、誰も。もっとアイツらに襲われてたり、あるかと思ったんだけどな」「私もそれ思った」 嵐の前の静けさ、とかじゃないといいんだが⋯⋯。「そういや身体の方はどう?」「あぁ、意外ともうなん

  • フォールン・イノベーション -2030-   21. 戒壇

     銃剣は狂ったように、突然グリッチし始めた。さっき選択した≪壊滅虹一波(アークデストラクション・ワン)≫とはまた違う姿へと変わっていく。銃剣上部が開き、"階段のような不思議な点滅光"が幾つも現れ、反射した。その光とグリッチによって全体像が壊れ、どういった状態なのかはもう認識できないほどになっていた。分かる事は、この引き金をアイツに向けて引く、たったそれだけ。必死に態勢を整えようと下がるヤツに、この最後の認識できない一撃を。 この時ズノウの付与効果か、ロックオンされた三翼の天魔神は異常なほど動きが遅くなっていた。そんなヤツの顔面目掛けて放つと、一気に30個ほどの何かが一瞬でヤツへと飛んでいき、同時に幾つもの七色蝶の羽根が舞う。 その飛んでいった何かは、"グリッチ状の長細い光"という表現が正しいかもしれない。その光はヤツの体内へ侵入すると、容赦無く全身を切り刻んでいった。背中の翼も、白い少女も、黒い悪魔も、何もかも。次第に跡形もなくなるほど切られると、ヤツは霧状に消えていった。 選択したズノウの≪七色の戒壇特異点(セブンズ・ステアシンギュラリティ)≫も消えていくと、腹部に急激な痛みが走り、大の字に倒れた。すると、二人の駆け寄る足音が近付いてくるのが分かった。「おいッ!! 大丈夫かッ!? 一人でやっちまったのか!?」 なぜか視界が狭いが、微かにシンヤの顔が見える。たぶんユキが俺の頭を膝に乗せた、伝わる感覚でなんとなく分かる。「ちょっと疲れただけだ。そっちも終わったのか」「飯塚さんの言ってた、ズノウってのに助けられてね」 ここでユキの顔が視界に入った。「上手く⋯⋯使えたんだな」「おうよ! あんなクソ共に負けてなんていられねぇからな! ってかしんどそうだな、この後動けんのか?」「わりぃ⋯⋯今は動けそうにない」「プロトロアに車まで運んでもらいましょうか」「そうだなぁ。今の状態じゃ、次が来たら危ねぇだろうしよ」 横たわる俺の視線の先を二人も見てしまった。「おれの⋯⋯せいで⋯⋯アオさんが⋯⋯!」 何度見ても血の気が冷める。あの時、ヤツの攻撃先に気付けていれば⋯⋯後悔だけが頭を巡る。「こんな極限状態だったもの⋯⋯全員生きるのは⋯⋯無理だったのよ⋯⋯」「だけど⋯⋯ッ! あの時気付いていれば⋯⋯ッ!!」 悔しさのあまり唇を噛み締めると、血が溢れた。

  • フォールン・イノベーション -2030-   20. 犠牲

     耳鳴りがするほどの轟音が響き、その溜まった一撃が俺に放たれた事から始まった。「ちッ⋯⋯! アイツは一旦俺がやるッ! 二人はあっちをッ!!」 ズノウで張っていた≪虹女神の七断層≫のうち、二層が破裂し、身体に戦慄が走る。背中を伝う死だけが、ただ俺を突き動かした。 間髪をいれず、また轟音が鳴り響き、ヤツの銃に禍々しいモノが溜まっていく。次は一気に周囲の空気が熱くなり、強烈な熱線のようなのが来る気配があった。 この少しの猶予を見逃さなかった俺は、即座に脳内でズノウを一つ選ぶと、俺の身体は勝手に動き始めた。長く伸びた形状に変形した銃剣は、まるで大砲のようになり、両手で持つ必要がでてきた。 大きく丸み帯びた銃口。そこにいろんな色の光が瞬時に溜まると、ヤツに向かって一気に放たれた。≪壊滅虹一波(アークデストラクション・ワン)≫は下から二番目にあったため、相当威力は高いはず。 これが一発でヤツを貫通し、タキシード風の黒い悪魔の方の腕を吹き飛ばした。一丁の巨大銃とともに、一瞬で霧のように消えていく。俺はその威力を見て、アオさんの言葉がフラッシュバックした。『それは本来、この"UnRuleの一番最後の敵"に装備されるはずだったもの。君が選ばれたのは偶然なんかじゃない。UnRule配布アンドロイド内に、眼を検知するようにしていたからね。勝手で悪いけど、僕たちは全て賭けてるんだ、なぁユエ』 これならやれる、こんなヤツで終われる訳がない。アイツは銃撃戦を不利と感じたのか、途端に巨大剣へと切り替えてきた。この時、ヤツは大きな空振りをした。これが"違和感のある空振り"だとは思った。今の攻撃はなんだったんだ? 俺の身体に何も無い。というか、もしかして俺に対してじゃなかった⋯⋯? 刹那、後ろを向く。ヤツの視線上にいるのは、俺とアオさんのはずだ。「アオさんッ! 大丈夫で」 自分が何を見ているのか分からなかった。誰かがバラバラにされており、体の破片が幾つも飛び散っていた。鮮血に染まっていく東京駅。俺は誰を見ている? 見てはいけないものを見ているのだけは感じた、第六感がそう発する。あの"散らばった破片の正体"。転がった頭がこっちを向いた瞬間、それは判明した。 「⋯⋯アオ⋯⋯さん⋯⋯?」「⋯⋯さ⋯⋯き⋯⋯へ」 そんな訳がない。さっきまで話していたんだ。ギリギリまで後ろにも下

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