頼んだは定番のつがる、ジョナゴールド、そして気になっていた紅玉、王林、シナノスイートを頼むことにした。 リンゴが届くまでに一週間はかかるとのことだったので、とりあえずパイ生地組と合わせて一週間後にリンゴが届き次第ミーティングを再開することにした。「天野川さん、この後時間ある?」「え、わたしですか?」「ええ。お腹空かない? 何か食べに行かない?」 片山さんの小野寺さんから食事に誘われたわたしは「じゃあ、ご一緒させてください」と言って、食事に出かけることにした。「ここよ、ここ!」 案内されて向かった先には、雰囲気のいいカフェがあった。「うわ、すごい。可愛いですね」「実はここ、
どれだけ忙しくても、大翔さんは家に帰ったらわたしのことを抱きしめてくれるし。ちゃんとわたしの作ったご飯を食べてくれる。「愛されてるね、天野川さん」「……はい。ですね」 どんな形であれ、わたしは大翔さんに愛されていると実感する。 あんなに独占欲を露にされたら、わたしは抗えないのだ。 「いいなぁ。わたしも幸せになりたい」「副社長と結婚した天野川さんは、めちゃめちゃ幸せ者だもんね。羨ましい」「ありがとうございます。 わたし、今本当に幸せです」 と微笑みながら、左手の結婚指輪をチラリと見せてみた。 確かに、私は今幸せなのだと思う。✱ ✱ ✱「ただいま」「あ、おかえりなさい。大翔さ
「それは楽しみだな」「美味しく作れたらいいんですけど」「由紀乃なら作れるさ。こんなに美味い料理を作ってるんだから」 そう言われたわたしは「ありがとうございます、大翔さん」とお礼をした。「由紀乃の料理は世界一だからな」「ありがとう、嬉しい」 そんなことを言われたら、幸せすぎてしまう気がした。「由紀乃……今日は由紀乃を抱きたい」 大翔さんからのストレートな言葉に私は照れながらも「うん……私も、したい」と返事をした。 お風呂から上がってすぐ、私たちはベッドの上に倒れ込んだ。「由紀乃」「大翔さん……ん、ん……」 大翔さんから熱いキスを受け、私の身体の熱は徐々に上がっていく。
「ジョナゴールド美味しいですね。甘いです」「次はなんだっけ?」「これはシナノスイートです」 ジョナゴールドの次は、シナノスイート。「頂きましょうか」「はい」 シナノスイートをわたしも一口、食べてみた。「甘い……! 美味しいっ!」「本当だ。甘いわね」 シナノスイートの特徴は、甘くてシャキシャキとした食感らしい。食べた時のジューシーさと濃厚な甘味は、ジュースやお菓子にも使いやすい。 だけどシナノスイートは、そのままで食べるのが一番、美味しいような気もする。「この甘さは、シナノスイートだからこそですかねぇ」「そうですね。やっぱりジョナゴールドよりも、シナノスイートは甘さの
【次のステップへ向けて】「じゃあみんな、これに試食したリンゴで美味しかったもの、そしてアップルパイにしてみたい品種を選んで丸をしてください」 「分かりました」 全部のリンゴの試食を終えたわたしたちは、まず第一段階でどのリンゴをアップルパイにしたらいいか、というアンケートを取った。 投票の結果だけで言うと、やはり圧倒的に人気が高かったのはジョナゴールドとシナノスイートの二つであったため、今度はその二つをアップルパイとして試作することにしたのだった。「今度の試作では、砂糖の量とハミチツは同じままにしましょうか。 リンゴのシャキシャキ感を少し残したいから、リンゴを煮詰める時間を少し短くして
そう言ってくれた大翔さんに、わたしは「……はい」と答えた。 大翔さんもこんなに楽しみにしてくれているんだ。 早く完成させたいな、お母さんのアップルパイ。 そしてお母さんにも、食べてもらいたい。……お母さん、どんな顔してくれるかな。「さ、食べよう」「はい」 お互いに【いただきます】と手を合わせて、二人で夕食を食べ始める。「ん、美味い」 「本当? 良かった。少し味濃いかなって思ったんだけど」 と言うと、大翔さんは「そんなことない。ちょうどいいよ」と言ってくれた。「良かった」 美味しいと言ってもらえることが、何よりも嬉しい。 仕事で疲れて帰ってきた大翔さんのために一生懸命料理を
そっか、小野さんは好き嫌いがないんだね。「そっか。 あ、そろそろ火を止めようか」「はい」 リンゴが煮詰まりすぎない程度に時間を調整しながら煮詰めて火を止めた後、濡れ布巾の上で鍋を少し冷ましていく。「天野川さん、小野さん、生地焼けたよ」「分かりました。すぐ行きます」 焼けたばかりの生地を確認していくと、バターの香りがふわっと香ってきた。「いいニオイ〜!」「バターの香りだ!」 バターの量を増やしたせいなのか、生地からいつもよりもバターの香りがふわっと香ってくる。「これだけで充分美味しそうですね」「今回はバターを多くしただけだけど、このバターの香り、たまらないわね」「ですね。
「すごいですね、これ!すごく美味しそうに見える!」「そうね!」 わたしは色んな角度で何枚か写真を撮って、インスタに上げてみた。「こんな感じでどうですか?」「いいじゃない!」 うん、イイ感じだ……!「あ、早速いいねが付きました」 これは嬉しい。みんな反応早いな。「さ、冷めないうちに食べてみましょうか」「はい」 わたしたちは早速、出来たてのアップルパイを試食することにした。「いただきます」「めっちゃいいニオイ……」 これは食欲そそられる香りだね。 食べたら絶対に美味しいヤツに決まっている。「ん、美味しいっ……!」 今までのアップルパイも美味しかったけど、このアップル
大翔さんがいなきゃ、わたしはスイーツを作ろうと思えなかったかもしれない。 単純にスイーツを食べることが大好きってだけで、ここまで来ることは思ってなかった。「わたしは、スイーツが大好きだよ。食べることも、作ることも大好き。……だけど、わたしは大翔さんと一緒にいる時間が、一番大好きなんだよ。大翔さんがいないと、わたしは生きていけないもん」「由紀乃……」 だってわたしは、天野川由紀乃。スリーデイズの副社長である天野川大翔の妻だ。 大翔さんのことを誰よりも尊敬しているし、誰よりも愛おしいと思ってる。 大翔さんは誰よりも頼れる存在で、わたしにはもう大翔さんと過ごすこの時間がかけがえのない大切な
【〜最高の幸せは家族三人で〜】 「ただいま」 「大翔さん、おかえり。 今日もお仕事、お疲れ様でした」 「ありがとう、由紀乃」 わたしは大翔さんに「先にご飯食べる?」と聞くと、大翔さんは「ああ、そうするよ」と答える。 「今日の夕食、大翔さんのリクエストのチキン南蛮にしたよ。後豚汁とピリ辛キュウリ」 「お、チキン南蛮は嬉しいな」 「すぐ用意するね」 あれから気が付けば、半年が過ぎた。 半年間色々とあったけれど、無事にオンラインショップでのスイーツ販売にもこぎつけることに成功した。 そしてスリーデイズのオンラインショップでも自慢のアップルパイをハーフとホールでの販売も開始したところ、これがまた大反響なのだ。 大人気のためオンラインショップがサーバーダウンしてしまうことがあり、お客様には迷惑をかけてしまったが、無事にサイトも復旧しまた販売が出来るようになった。 思わぬサーバーダウンにわたしたちもてんやわんやでバタバタしてしまったが、サーバーに強いスタッフがいるおかげで割とすぐにサーバーは復旧することが出来たのも良かったと思う。 「お、チキン南蛮美味そうだな」 「ふふふ。正直、自信作」 「そうか。 よし、食べよう」 二人で「いただきます」と手を合わせると、大翔さんは早速出来たてのチキン南蛮に手を伸ばす。 パリパリというチキンの音が、口にした瞬間にいい音を奏でている。 「うん、美味いっ」 「でしょ? 自信作だからね」 「本当に美味いよ。最高だわ」 「ふふふ。良かった」 大翔さんがこうやっていつも美味しそうにご飯を食べてくれるから、わたしも作って良かったと思える。 一人で食べるより、やっぱり二人で食べる方が何倍もご飯は美味しい。 「豚汁も最高に美味い」 「良かった」 わたしが作る豚汁は出汁に特にこだわっている豚汁で、味噌は白味噌を使っているのだけど、出汁が美味しいから豚汁がもっと美味しくなっている。 「いつも美味しく食べてくれるから、わたしも嬉しいよ」 「本当に由紀乃の料理は美味い。疲れた身体を染み渡る」 「良かった」 大翔さんと色々と切磋琢磨しながらこうして美味しいスイーツ作りをしてきたけど、美味しいスイーツでみんなが喜んでくれるのはやっぱり嬉しいし、作ってて良かったと実感する。 「そうそう。ネットでのアップルパイの注
片山さんがそう伝えると、新メンバーの人たちは驚いているようで、「えっ! あ、天野川副社長の奥様……ですか!?」とわたしを見ている。「はい。わたしは副社長の妻です。……片山さん、伝えてなかったんですか?」「言ってたつもりだったんだけどね」「すみません。聞いてなかったのでビックリしました」 そう言われたけど、「わたしのことは普通にリーダーでいいですよ。 副社長の奥様だとか、気を張ることないですからね」と念の為伝えておいた。「お、恐れ多いです……」 と言われたけど、「わたしだって普通の一般人ですよ?元はスイーツ大好きな一般人です。 なので、気負わず話しかけてくれたら嬉しいです」と笑顔を見
わたしたちは頷きながら「はいっ!」と返事をした。「求人募集についての補足になるが、募集開始後の面接は俺と片山、二人で行うことになった。 片山、宜しく頼むよ」「えっ!わたしですか……!?」 片山さんは驚いたような表情をしている。 大翔さんは片山さんに「片山は俺がスイーツ部門を立ち上げた時からの初期メンバーだからな。片山が一番適任だと俺は思ってるんだが……どうだ?」と聞いている。「わたしも、片山さんが適任だと思います」 わたしがそう伝えると、片山さんは「そこまで言われたら、断れないじゃないですか」と言っているものの、「わかりました。面接担当、引き受けます」と受けてくれた。「ありがとう
無理だけは絶対にさせられない。「なんとか人手を増やせない、ですかね」「人手が増やせれば、なんとか回せるんだけどね……」 今の人数でやれることがギリギリになり、仕事を増やしてしまうと負担を掛けてしまう。 そうなると、なかなかお取り寄せにまでは辿り着くのは難しいかもしれない。「片山さん。副社長に、求人募集の依頼をかけてもらいませんか?」「求人募集?」「はい。社員でなくても、例えば短時間でも働けるスタッフとか、土日だけ働きたいみたいな人たちを募集してみませんか?」 派遣みたいなスタイルにしてもいいし、その人が働きやすい環境で働いてもらえるように、募集をかけていくしかもうない。「パ
ワンホールでの販売すれば、家族みんな分け合って食べられるし、自分なりにアイスを乗せたりしてアレンジも効くから、そっちの方がいい気もする。「そうだな、店舗では4/1カットが基本だもんな。……なあ、お取り寄せにするなら、ワンホールとハーフカットが選べるってのはどうだ?」 「ハーフカットとワンホールを選べるようにするってこと?」「そうだ。少人数だとワンホールは多いだろうし、ハーフカットを選べたら少人数でも食べやすいと思わないか?」 ああ、確かに……!「そのアイデア、素敵だね」「カップルや友人で少人数で食べるなら、ハーフカットくらいがちょうどいいだろ? ワンホールじゃ多くて食べきれなくなる
【スリーデイズの進化の時】 「副社長、後百個の追加、OK出ましたよ」「本当か? 良かったな」「うん」 後日の話し合いの結果、アップルパイの百個の追加注文を受けられることになった。 思ったより反響があったおかげで、製造数を増やすことが出来て、わたしたち自身も嬉しく思う。「ところで、大翔さん」「ん?」「この前言ってた冷凍スイーツの件、なんだけど……」 わたしたちみんなで話し合った結果、アップルパイを冷凍スイーツとして売り出すのであれば【お取り寄せ】として販売するのはどうか、という話が出てきたため、わたしはそれを大翔さんに相談することにしたのだ。「アップルパイを冷凍として
「うん。パフェの人気が思ったよりすごかったから、冷凍スイーツみたいな感じで販売出来たらいいなって思って」 わたしがそう話したら、大翔さんは「冷凍スイーツか。それはいいアイデアだな」と言ってくれた。「今冷凍スイーツが結構流行ってるじゃない? 今結構多いのが、無人販売スイーツみたいなのなんだけど、二十四時間買えるところもあって。 冷凍スイーツにして販売したら、いいかなって思ったの」「それがスリーデイズの第二のスタート、って所かもな」「第二の、スタート……」 確かにアップルパイが大成功したし、そしてイベントも大成功した。 次のステップは、冷凍スイーツにシフトしていったほうがいいのかもし
「大翔さん、ありがとう。大翔さんのおかげだよ」「それは由紀乃が頑張ったからだろ?」「……わたし、なんか泣きそう」 大翔さんはわたしの頭をそっと撫でてくれる。「泣いてもいいぞ」「……でも、ここでは泣かない」 家に帰ってから思う存分泣くことにする。「家で思いきり泣くことにするね」 「そうか。じゃあその時は俺の胸を貸してやるよ」「ありがとう」 こういう時に助けてくれるのが大翔さんだから、いいんだよね。「パフェが全部完売なんて、実はちょっとビックリしてるんだ」「そうなのか?」 わたしは「うん」と頷いた。「正直、完売は無理かなって思ってたし」「でも完売したな」 「うん